NVDA日本語化プロジェクト(nvdajp)はオープンソースのWindows用スクリーンリーダであるNVDAを日本語化するプロジェクトです。視覚障害者がパソコンを音声や点字で利用するときに使用します。Webアクセシビリティに配慮したアプリケーションやコンテンツを作成したい人にも有益なツールです。インストールなしでUSBメモリなどから実行可能です。
このたび音声合成エンジンJTalkの話速の調整や新しい話者などの機能を追加したスナップショット jpdev110205 を公開しました(リリースノート)。これは開発版であり、翻訳が完了していない箇所があります。また予期せぬ動作が含まれている可能性があります。
NVDA の評価やバグレポートにご協力いただける方、ドキュメントの不足や不備があってもいろいろ試してみたい方、不具合があってもご自身で回避できる方に向けたものです。この点をご理解いただければ幸いです。
この公開の背景をご説明したいと思います。私の個人的な意見が混じっていますが、ご了承ください。
私はこの2ヶ月くらい、本家の英語の開発者メーリングリストやソースコードの更新履歴をずっと追っています。
日本語版の開発に影響がありそうな情報を早く把握するためです。
本家 NVDA プロジェクトからは、次期リリースである 2011.1 に向けて、先週からベータ1,ベータ2と新たなパッケージが公開されました。
jpdev110205 は本家がリリースしたばかりのベータ2をベースにしており、ドキュメントやメッセージの翻訳ができていない箇所があります。
また、本家のベータ版に不具合が含まれている可能性もあります。
本家の 2011.1 は3月上旬に正式公開される見込みです。その後、日本語化プロジェクトは 2011.1 の日本語版をリリースする予定です。
基本的に NVDA は本家のリリースが各国語に対応したバージョンとなっており、音声読み上げや点字ディスプレイ対応も各国で利用可能です。
日本以外ではもう「ベータ版まつり」が始まっています。この改変が日本の利用者にどのように受け入れられるのか興味深いところです。あえてこのタイミングで開発版をお試しいただく背景は、可能な限り世界と日本のタイムラグを縮めたいという気持ちです。
もう一つ、改良された JTalk をお試しいただきたいという理由もあります。話速変換は 2010.2j に向けて実装が進んでいたのですが、安定せず間に合わなかった機能です。スピード100で22モーラ/秒くらいを実現しています。また、MMDAgent という音声対話ツールキットから拝借した新しい女性の声 (mei) を搭載しています。こちらは音質がよいのですが高性能のPCでないと反応が悪いと思います。動作の軽い別の話者は今後の課題とさせてください。
地味な改良ですが、単漢字や英単語の読みについて、テキスト解析の辞書を強化しています。読み付与については不備・不足がまだまだありますので、今後とも努力したいと思っています。
ちょうど一週間前に技術者向けのイベント #pyconjp で NVDA の紹介をした際に、日本語化プロジェクトの公式リリースである 2010.2j ではなく、私が作業している開発版を使ってデモをしました。その結果、新しいバージョンへの問い合わせをいただくようになり、またNVDA日本語版の音声エンジンを使って「音声読み上げTwitterクライアント」を作ってくださる方もお見かけするようになりました。
(追記 2011-02-07 Notepad++でPythonのソースコードを閲覧したときにインデントの深さを「タブ・タブ」のように読み上げるデモをしましたが、これも以前のバージョンでは挙動が異なっています)
昨年12月に本家の音声ドライバ関連の実装が変更され、2010.2j 向けの JTalk と最新開発版向けの JTalk を並行して維持することが困難になってきました。このことも、今回あえて本家ベータ2をベースにスナップショットを作った理由の一つです。
なお昨年配布が開始された音声合成エンジンであるMicrosoft Speech Platform のドライバは今回の開発スナップショットに入れました。
これについては過去のMLの議論を私のサイトにまとめました。
Microsoft からエンジンをダウンロードしてインストールする際に、配布されている license.rtf の内容をご了承いただいた上でご利用ください。
日本語版の点字ディスプレイドライバは開発中ですが、今回のスナップショットには含まれていません。
本家のリリースノートなどのドキュメントは可能な限り翻訳して、変更点を皆様にお伝えできればと思っておりますが、あと1ヶ月あまりで本家の正式版がリリースされる見込みなので、ドキュメントの翻訳は正式版までお待ちいただく可能性もあります。
将来的には日本語独自の拡張を本家にマージしていただいて、世界同時リリースに日本語版が加わっていくのが理想ではないかと、私自身は思っています。
本家 NVDA を開発している非営利組織 NV Access は募金の呼びかけをしています。
日本語化プロジェクトは現在のところ、本家とは独立した組織ですので、この呼びかけは「日本語化プロジェクトへの支援」ではなく、あくまでも「本家NVDAへの支援」だとご理解いただければ幸いです。
NV Access は Twitter 公式アカウントを作ったり、Facebook のページを作ったり、新しいロゴマークを発表したり、いろいろ積極的に動いているようです。
日本語化プロジェクトでも sourceforge.jp の活動と連携する Twitter アカウント @nvdajp を開設しました。
引き続き、翻訳、テキスト音声合成、点字ディスプレイ、形態素解析、IME、バージョン管理、Pythonなどに興味をお持ちの方のご参加をお待ちしております。
Comments
“nvdajpスナップショット” への1件のコメント
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