NVDA日本語チームの10年とこれから

はじめに

2022年7月に NVDA 日本語チームの代表が西本から辻 勝利さんに交代しました。

このような発表をしたためか、ご無沙汰していた方からご連絡をいただいたり、お世話になっている方にご報告したり、ということを繰り返しました。その結果、ここにちゃんと書いておこう、という気持ちになりました。

7月21日に terapyon channnel podcast #62 に出演して2時間くらい喋らせていただきました。お時間があればどうぞ。

2022年3月のオンラインイベントでも NVDA 日本語チームを作ったころの話をしました。こちらは新代表の辻さんと一緒に喋っています。

NVDA日本語チーム・ラジオも毎月配信しており、次回は8月11日夜の予定です。

以下では、これらのポッドキャストや録画の内容と重複しますが、私の立場で補足したいと思います。

次のバージョンのNVDA

現在は私がいままでどおり本家版 2022.3 の翻訳作業をしています。

NVDA 2022.3jp については、まずは開発者ドキュメントの翻訳をしながらソースコードを調査して、それから日本語ベータ版に取りかかるつもりです(本家版は 2022.3beta1 が公開されました)。

2022年10月に変わること

西本がNVDA日本語チーム役員会に残るのは2022年9月までという提案が承認されました。2022年10月からは私が意志決定の場から外れて、またすこし新しいNVDA日本語チームが始まります。

西本が10年間に抱えこんだ作業、作ったアカウント、運用しているサービスなどは、引き継ぎを前提に、いま整理をしています。重要なことから順番に進めます。

作業を引き受ける気持ちはあるので、新しいNVDA日本語チームに「西本にこれをやってもらいたい」という内容を決めてもらって、やれることをやります。

新しいNVDA日本語チームが「もっといろいろな人に協力してもらおう」と取り組むことも大事だと思います。

なぜ交代したのか

以下の理由です:

  • 自分が10年続けたことは、みんなに変化を受け入れてもらう理由になると考えた
  • NVDA日本語版の開発と普及は順調に行えており、交代してくれる人がいらっしゃるので、体制を変えるのは今がチャンスだと考えた
  • 自分が疎かにしてきたことをちゃんとやる時間を取り戻したい

達成できたこと

  • 2012年ごろ、NVDAの東アジア言語対応が始まったときに、グローバルなNVDAのコミュニティと日本のユーザーの交流を開始した
  • 2013年ごろから現在まで、実用的な品質と機能を持つNVDA日本語版を、ほとんど遅れることなく、リリースしてきた
  • 2021年のJBICTの調査によると、日本の視覚障害者の56パーセントが「NVDAを使うことがある」と回答し、また14パーセントが「主にNVDAを使う」と回答している。シェアがまったくなかった状態から、10年でこの状況を実現できた
  • 日本でWebアクセシビリティに関わる人が NVDA を検証ツールとして使用してくださる状況となった
  • NVDA日本語チームに多くの個人や団体から寄付をいただける状況となった

分析

2014年以降、現在まで、NVDA日本語版の更新サーバーのアクセス数の推移を見てきました。1週間ごとの値を7で割って1日平均のユーザー数としてグラフ化しています。

2020年以降、700を超えることはあるが、800を超えることがないまま、横ばい、あるいは減少に向かいつつあります。

NVDAのユーザー数を増やしたい、という目標は、現状のままでは達成は難しいと思われます。

このグラフには、Windows バージョンごとのユーザー数の変化も重ねて描かれています。

2015年後半以降、Windows 10 ユーザーの増加はすべての NVDA ユーザーの増加と非常に似た形のカーブになっており、Windows 10 と NVDA がセットで普及してきたと推測しています。

Windows 7 のユーザー数を Windows 10 が超えたのが2017年前半でした。Windows 8 (8.1) のユーザー数は Windows 7 を超えることがないまま現在に至っています。2021年からは、ほとんどのユーザーが Windows 10 または 11 で NVDA を使っています。

これから

NVDAではなく私の「これから」をすこし書きます。

株式会社シュアルタは NVDA に関連する開発や技術支援などを行っています。しばらく、この分野でやり残したことをやっていきます。

これからも NVDA にこだわらずに、書いたり作ったり集ったりしていくつもりです。やらなければという緊張感があります。

ポッドキャストで寺田さんから「お仕事募集中ですか?」と聞かれて「アウトプット模索中です」という返事をしました。わかりにくかったですね。。

インプットは始めています。

最近、情報セキュリティマネジメント試験を受験して、先日の発表で合格を確認したところです。

セキュリティに配慮した情報システム運用を目指している組織でスクリーンリーダー利用者がどのような問題に直面するだろうか、どうすればいいだろうか、と思いを巡らせていました。

先日のブログ記事で紹介した行動療法やデータ分析やペットの話も、近いうちに続きを書きます。