昨日、日本音響学会東海支部 技術講習会 視覚・聴覚障害のための支援技術の現状と展望 にて「オープンソースのスクリーンリーダーNVDAとその日本語化」という講演をしました。
スライドは ja.nishimotz.com/screen_reader として私のサイトで公開中です。右上の画像をクリックするとブラウザ内でスライドショウになります。
参加してくださった皆様、企画や運営にかかわられた皆様に御礼を申し上げます。
講演の合間に開発中のバージョンを使って実演を行いました。JTalk による早口音声、かな漢字変換のフォネティック読みや詳細読み、Windows エクスプローラーを例にMSAAのオブジェクト情報とNVDAでの音声化の比較などをお見せしました。点字ディスプレイは機材を持参できなかったので、動画でご紹介しました。
Web閲覧の実演をする時間が取れませんでしたが、NVDA の日本語化を例に、「日本におけるスクリーンリーダーの歴史と現状」をご紹介できたのではないかと思います。
アクセシビリティにおけるGUIの影響についてご質問をいただきました。
一般的にはGUIは「画面表示から文字情報を取り出しにくくなった」「キーボードだけで操作できないアプリケーションが増えた」ということで、アクセシビリティが悪くなった原因と考えられています。
しかし私が10年前に「視覚障害者のための電子メール環境における操作性の検討」で触れた考察ですが、「階層化メニューなどの操作が標準化された」というメリットも無視できないと思います。
操作性の変化の問題よりも大きいのは、時代とともに変化するアプリケーションやサービスの環境に取り残されたくない、という意識でしょう。MS-DOSの時代はパソコン通信の時代でした。Windows の時代は電子メールとWebの時代であり、そして近年のスマートフォンの時代はソーシャルメディアの時代でもあります。
アクセシビリティのためにはメカニカルなスイッチの存在は重要で、タッチインタフェースでアクセシブルなデバイスを作ることは難しい、と考えられてきました。
しかし、Apple の VoiceOver など工夫されたインタフェースの登場は、この常識を変えて、視覚障害をお持ちの方に受け入れられつつあります。Windows 8 の Metro UI は構成要素がシンプルであり、工夫次第では従来の Windows アプリケーションよりもアクセシブルにできるかも知れません。
最後に、最近 iPhone 4S の新機能として話題になった音声認識・音声対話は、そろそろスクリーンリーダーの入力手段として再評価されると考えています。
NVDA 日本語化プロジェクトは、まもなく本家が最終版をリリースする 2011.3 の日本語版に向けて、作業を進めています。先日リリースした jpdev11114 では日本語IMEサポートの改良が完全ではないので、あと数回の開発版スナップショットの公開と検証が必要です。
オラビー・ジャパンの活動としては今後、NVDA 技術を基盤にインタフェースのイノベーションにも取り組んでいく予定です。