こぎん刺しと宮島

11月3日にNHK Eテレ「すてきにハンドメイド」で「津軽こぎん刺しのバッグ」が取り上げられた。
和の伝統を楽しむ、という3回シリーズの第1弾として登場し、テレビテキスト11月号の表紙を飾った。

番組の中で製作されたバッグは、こぎん刺しを知っている人から見ればオーソドックスな色とデザインだったが、「東北の手仕事」として歴史や背景も掘り下げて紹介された。藍染めの麻布に白い糸で刺された菱形の幾何学模様が、綿花の栽培が困難で華美を禁じられた江戸時代の苦肉の選択であったことが説明された。そして、厳しい寒さと貧しさの中で、美しい模様を生み出した津軽の女性の心の豊かさを感じて欲しい、と番組は語っていた。
100年以上前のボロボロの労働着にほどこされた幾何学模様の「刺し子」はテキストにも大きな写真で紹介されている。
東北新幹線の新青森駅開業といったイベントに合わせて、東京エリアでも青森の文化が紹介されるようになったが、それでも全国レベルでのこぎん刺しの知名度は低い。
柳宗悦が民藝運動として評価したことによって価値が見直されたこぎん刺しは、今年春の日本民藝館(目黒区駒場)の「開館75周年記念名品展」で1点だけ展示されたとのことだ。
一方で、青森で生まれ育った人にとって、こぎん刺しは「あまりにも身近にありすぎた民芸品」だ。学校の授業やクラブで作ったことがある、という人も多い。「根気のいる作業」であることも知られているので「こぎん刺しをやっている」といえば一目置かれるのだという。
しかし、およそ若者が興味を持たない色や柄だったこぎん刺しを、変えようとする動きも、目新しいものではない。
色鮮やかな刺繍糸を使うカラフルな作品という試みは、世界から注目された。

はじめてのこぎん刺し
はじめてのこぎん刺し

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ここ数年、トートバッグや洋裁で活躍しているグループによって「こぎん刺し」は再発見され始めている。伝統的なこぎん刺しの技法を生かしつつ、バランス、センス、配色など、現代の生活に合わせた作風が登場した。そして「大人になってこぎん刺しの模様の良さを再認識した」という人も増えた。

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こぎん刺しは決して難しいものではない。手芸に興味を持つ人が増えたこともあり、手芸用品メーカーや通信販売会社のキットで「こぎん刺し」は身近になっている。規則正しく1列ずつ針を動かしていくと、次第に大きな模様が出来上がっていく、そんな面白さがある。
だが、続けていくのは難しい。キットを買ってはみたものの完成できない人も多いようだ。
続けていくうちに「型」が身につく。その「型」が「オリジナル」を生み出す土台になるのだという。
2010年10月に kikurako.com での活動を始めたこぎん刺し作家 kikurako は「作りたいものを作る。いま作品展に向けて作っているのは、ふだん使えそうなバッグや小物雑貨。年齢や性別は意識していない。欲しい、使いたいと思う人の手に渡れば嬉しい」と言いつつ、制作作業の最後の追い込みを続けている。

kikurako 作品展
は今月24日から27日までの4日間。入場は無料。作品は展示販売される。
場所は世界遺産の厳島(宮島)。この夏に宮島水族館がリニューアルされ、来年のNHK大河ドラマ「平清盛」の舞台として注目されている。だが、修学旅行や観光旅行で何度も宮島を訪れた方でも、賑やかな土産物屋の並ぶ表参道商店街から一本奥に入った「町家通り」に足を運んだことのない方は多いのではなかろうか?
「ぎゃらりぃ宮郷」があり、先日は「第一回宮島ブックトレイル」が開催されるなど、古民家を活用した個性的な町おこしに積極的なエリアだ。
会場の北之町 厳妹屋さんは、明治後期頃に建てられ、数年前までは華道と茶道の先生が生活しておられたという宮島の伝統的な町家。
会期中は紅葉の一番の見頃と予想される。ぜひ足をお運びいただきたい。
期間:2011年11月24日(木)〜27日(日)
11:30〜17:00(初日12:00より)
会場:宮島 北之町 厳妹屋(いつもや)
〒739-0588 広島県廿日市市宮島町580
宮島桟橋から徒歩2分(町家通り)
(広島駅から宮島口駅までJRで約30分、宮島口から宮島までフェリーで約5分)
kikurako こぎん刺し 作品展 2011


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