リスボン: Vocalizer for NVDA のふるさと

shuaruta blog でも書いていますがヘルシンキとリスボンに行きました。
ペット事業の調査もしたのですが、ポルトガルに行くなら Rui Fontes さんに会ってみたいと思い、連絡を取って、時間を作っていただきました。
スクリーンリーダー NVDA のコミュニティで 2013 年ごろに発売された Vocalizer for NVDA という有償の音声合成エンジンがあるのですが、この製品の発売元 Tiflotecnia 社の代表が Rui Fontes さんです。
日本からも購入してユーザーになっている人もいらっしゃいます。
私も発売当時に製品やウェブサイトの翻訳を手伝ったのですが、メールでのやりとりしかしたことがありませんでした。
お会いしたのは6月21日の午後、観光客でにぎわうベレンという町のカフェでした。盲導犬のドゥピィくんを連れて Rui さんはいらっしゃいました。
写真 西本と Rui Fontes さんのツーショット
服装は水色のポロシャツとジーパン、シルバーの髪、たっぷりと髭を蓄えた芸術家のような顔立ち。
グラスをクルクル回しながら、穏やかにお話をしていただきました。
失明される前は会社員、コンピューターも使ったことがあった、失明して退職して起業。ずっと夫婦2人で会社をやっている。
もうひとりの Rui こと、ポルトガル在住のエンジニア Rui Batista さんが NVDA 事業のパートナー。
スクリーンリーダーが登場したころはポルトガル語のよい音声エンジンがなくて苦労した。Dorphin とか ZoomText とか WindowsEyes とかスクリーンリーダーはいろいろ使った。
現在は視覚障害者が使うスクリーンリーダーとしては NVDA がいちばん普及している。メーリングリストなどで教えあうことが多い。障害者協会のICT普及活動は少ない。支援機器の展示会はポルトという町で行われているけど、出展料が高いから出さない。
人口1000万人のポルトガルで、NVDAユーザーが400人くらいだ。(日本は人口がその10倍で、NVDAユーザーは1.5倍ですね。。)
NVDA は無料なのだからと言われて、サポートにお金を払ってくれる人は少ない。
視覚障害者の職業で多いのはテレフォンオペレーターだ。マッサージをする人は昔はいたが、今はいなくなった。
Microsoft Office は使われている。Excel でみんなが高度なことをしてるわけではないので、JAWS が必要な人は少ない。NVDA の機能で十分だ。ナレーターはまだ Office を使うには足りないだろう。
パソコンが普及したかわりに DAISY など録音図書が普及していない。
スマートフォンは Apple が普及しているが自分は Android にこだわっている。Samsung と Huawei が多いが、後者は貿易摩擦の影響が懸念される。
ポルトガルは障害者差別禁止法制の整備は早かった。法律はよいのだが、あまりちゃんと機能していない。クレームをつけない、受け身の当事者が多いのは、国民性かも知れない。。
移民が増えて、民族や文化は多様化している。ポルトガル語を喋る国はアフリカにも南米にもあるから。。
(市内のラクガキがひどいのもその影響?)そうかもしれないね。。
リスボンからちょっと離れた場所が自宅兼会社だが、ここは住みやすいよ。
そんな会話が、カフェの閉店時間まで、まったりと続いた午後でした。ドゥピィくんは2時間半の会話の間、ご主人の横でじっと座って待っていました。
カフェを出ると目の前はジェロニモス修道院と真っ青な空。

写真 ジェロニモス修道院

Tiflotecnia の人とご挨拶ができたので、これからは Vocalizer for NVDA を日本で使っておられる人、購入を検討されている人にも、なにかお役に立てることがあると思います。
NVDA の Python 3 移行に対応する予定もちゃんとあるそうなので、ご安心ください。
 
追記(2019年7月8日) NVDA 日本語チームの GitHub Wiki 「NVDA用音声エンジンの紹介」で Vocalizer for NVDA の購入方法を解説しています。