オノ・ヨーコ展と比治山・段原

広島市現代美術館で「第8回ヒロシマ賞受賞記念 オノ・ヨーコ展 希望の路 YOKO ONO 2011」を見た。

ヒロシマ賞の説明はこちら
広島市現代美術館は広島の中心から外れた比治山という小さな山の上にある。
私の母方の祖父は公務員で、疎開させた公文書と共にこの比治山で被爆したと聞いた。私はその祖父のことは伝聞でしか知らないのだが、一度だけ、母の代理で、8月5日に開催される市役所の戦没者慰霊式に出席したことがある。
私の幼い頃住んだ家は、この比治山の影になって原爆の被害を逃れた段原という町にあった。細い迷路のような路地は、子供用の自転車で走りまわる格好の遊び場だった。広島駅と宇品港を結ぶ国鉄の貨物列車が走っていて、深夜や早朝、かすかに汽車の音が聞こえたことを覚えている。
私が広島を離れていた20年の間に、この比治山から見下ろすことができた古い町並みは、区画整理されて、大きな道路が東西南北を貫いた。早々と完成した新しい街には高層マンションが立ち並んだ。そして広島カープの試合がある夜には、猿猴川を挟んですぐ近くにあるマツダスタジアムの照明が、段原の空を照らしている。
いまも残された工区の再開発が進んでいる。先日通りかかったら、新築一戸建ての売家の看板、そして売地の看板が並んでいた。カッパ祭りとかレンコン祭りとか、聞いたことのないイベントの看板があった。
「公立では全国初の現代美術を専門に扱う美術館」の歩みは、かつて骨董品の街と言われた場所の「歴史の喪失」と、二人三脚であったに違いない。それを目撃できなかったことが、今となっては残念に思える。
オノ・ヨーコ展は美術展としては珍しく、一定の条件で撮影が許可され、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで使用許諾されている(関連記事)。なので私も下記に写真を掲載します。


作家:オノ・ヨーコ
CC: BY-NC-ND 2.1 日本

作家:オノ・ヨーコ
CC: BY-NC-ND 2.1 日本

作家:オノ・ヨーコ
CC: BY-NC-ND 2.1 日本

作家:オノ・ヨーコ
CC: BY-NC-ND 2.1 日本