8月3日および4日に第37回福祉情報工学研究会が開催されました。
8月4日のお昼には専門委員会が開催され、私は幹事として参加しました。
8月4日の午後には情報処理学会福祉情報システムフォーラムによる特別企画:“いま,そこにある”コンテンツのユニバーサルデザインが開催されました。
80人くらいの参加者にお越しいただき、視覚障害や聴覚障害をお持ちの方も多く参加されました。
シネマ・アクセス・パートナーズ(CAP)の平塚さんは、映画の音声ガイドを作る作業の実情について詳しくお話をされました。
日本点字図書館の天野さんは、視覚障害者用DVDプライベートホームシアターサービスの概要についてお話をされました。あとでお聞きしたら、音声ガイドのMP3ファイルとDVDの映像を同期して再生をするソフトウェアを開発するために、Vector でオンラインソフトを開発している人にメールを書いてコンタクトを取り、プログラマーを見つけたのだそうです。
キュー・テックの川野さんは「ウェブ・シェイク」という仕組みでDVDコンテンツの字幕を第三者の立場から提供されています。しかしその背景にあるのは「きちんと字幕をアーカイブすればどんなメディアにでも再利用できる」という考え方とのことでした。
聴力障害者情報福祉センターの森本さんは、放送済みのテレビ番組に字幕をつけたビデオやDVDを制作し、全国の聴覚障害者に無料で貸し出しをする事業について説明されました。
映画のバリアフリー化について最近もこんなことがありました。
- アメリカ映画「バベル」の日本ロケでは聾学校の生徒など多くの聴覚障害者がエキストラ参加したにもかかわらず、試写会で上映された日本版には日本語の会話に日本語字幕がついていなかった。署名運動の結果、映画配給会社が日本語部分に字幕をつけた。
- 映画「武士の一分」は視覚障害を扱っているから、という理由でDVD化にあたって視覚障害者向けの字幕を付与した。
でも、当事者の方々が本当に見たいのは福祉や障害をテーマに扱った作品ではなく、普通の作品なのだそうです。
多くの人が、ラジオや新聞ではなく、テレビやDVDなど「音声と映像の複合メディア」から情報を得るようになってきました。そのことが、視覚障害や聴覚障害をお持ちの方にとって新たなバリアを生んでいると思われます。
静岡大学の秡川先生からは情報保障の考え方について新しい視点を提供していただきました。
- 情報保障が必要になるのは「省略」するからである
- 字幕と音声ガイドの制作は同時に行えば作業を効率化できる
- 近年の高品質な音声合成技術は音声ガイドに使えるレベルに到達している
- 一般の人が参加できるために「先送り」と「ネットワーク化」が必要
最後に毎日新聞の岩下さんから、総務省の研究会などに参加された立場を踏まえての御発言がありました。
- インタビュー映像などでよく使われるボイスチェンジャーは、内容を聞き取りにくい(要約された字幕を読めればいい、という番組制作者の意図?)
- クイズ番組で「正解はこちら!」「ワー!」という場面で情報を共有できない。ちょっと読み上げてくれるだけで一緒に楽しめるのに。。
- ワンセグをみんなが使うようになり、聴覚障害者だけでなくみんなが字幕ユーザになりつつある。