9月21日と22日の2日間、PyCon JP 2016 に参加しました。2日目に「スクリーンリーダー NVDA の開発とコミュニティ活動」というポスター発表をしました。多くの人に見ていただけたようです。長い時間をかけてこちらの話に付き合ってくださったかたも多かったです。
23日には開発スプリントのリーダーとして、NVDA 日本語版の開発の具体的な作業を紹介、そして Python でアドオンを開発するチュートリアルなどを行いました。メンバー4人で楽しくハッカソン的な時間を過ごしました。
NVDA日本語チームは2013年からユーザーを対象にしたイベントを行ってきましたが、今年、方針を変更してこういう技術者向けイベントに参加しました。結果として、より多くの人にNVDAを知ってもらったり、コミュニティのメンバーを広げたりする手段になったと感じています。
特に今年の PyCon JP は「多様性」がキーノートや講演でも取り上げられました。そのような中で、アクセシビリティの話が、多様性についての視野を広げるお役に立てていたらうれしいです。
PyCon JP の参加を通じて得た知識、気づいたことなどは、また改めて書いたり喋ったりしたいと思います。
11月12日開催の PyCon mini Hiroshima 2016 も「視覚や聴覚に障害をお持ちのかたを含めて、 誰にでも参加して楽しんでいただけるイベント」を目指しています。発表のプロポーザルを9月30日まで募集しています。
それから10月2日に広島での勉強会で Python と機械学習をテーマにLTをしようと思っています。こちらもよろしくお願いします。
投稿者: nishimotz
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PyCon JP 2016 ポスター発表: NVDA の開発とコミュニティ活動
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PyCon mini Hiroshima 2016「広島とPython」 #pyconhiro #pyconjp
プログラミング言語 Python (パイソン)が気になりはじめた広島の皆様、広島のことが気になっていた全国の Python ファンの皆様のために、今年も PyCon mini Hiroshima を開催します。
開催日は2016年11月12日(土曜)、会場は広島市立大学サテライトキャンパス(広島市役所のすぐ前)です。
これから connpass サイトでの参加募集(および講演の申込受付)を開始します。
2015年11月22日、第1回 PyCon mini Hiroshima の基調講演は石本敦夫さん「Pythonの肩にのる」でした。
一人前のプログラマになるための勉強は果てしなく続く。でも焦ることはない。なにかひとつの技術やプロダクトに深く関わることが重要。
深く学ぶほど大きく広がる Python の世界はその理想的な入口のひとつ。
そんなことをご自身の20年の経験を踏まえて語っていただきました。
たまたま NVDA という Python プロダクトの活動(NVDA日本語チーム)をきっかけに Python を深く学ぶことになり、日本の Python の技術者やコミュニティの素晴らしいパワーに触れる機会を得てきた私には、自分の気持ちととても重なった内容でした。
半年以上が過ぎたいま、Python やその関連プロダクトは、広島の技術者の勉強や仕事に役立ち始めているでしょうか?
広島での PyCon mini の第2回となる今年は「広島から発信しよう」を目指しています。
県外から著名人をお招きしてお話を伺うことよりも「広島で Python がどう使われているのか」「広島で Python 技術者にどんなチャンスがあり得るのか」といった話題を持ち寄って、なにかを生み出したいと思います。
まず「広島で暮らす人々」「広島に観光で訪れる人々」をターゲットに「人間の言葉を理解するコンピュータ」の研究に取り組んでいる広島市立大学「言語音声メディア工学研究室」の関係者にご協力をお願いして、「広島とPython」の接点を探ります。
また IoT (Internet of Things) に適した言語としての Python という側面(例えばハードウェアの制御も Web APIの利用も Python から簡単にできたりします)を掘り下げていくために、今年立ち上がったフレッシュなコミュニティ IoTLT 広島と LT セッションを共同開催します。
スペシャルトークの火村智彦さんには「私はいま広島で○○というプログラミング言語を使っているけど、Python も勉強した方がいいのかな?」と思っている人に刺激を与えるようなお話をお願いしています。どんな内容になるのか、私もまだわかりませんが楽しみにしています。
今年、日本の Python コミュニティでは、初学者向けの勉強会(BootCamp)など新しい取り組みが各地で始まっています。
また Python を基盤にしたビッグデータ、機械学習、インフラ管理など、いろいろなツールのコミュニティも広がりつつあります。
この第2回 PyCon mini Hiroshima を、広島での継続的な Python コミュニティ活動のきっかけにと願いつつ、まずはご参加のご案内をさせていただきます。
講演テーマ募集は9月30日を締切とさせていただく予定です。
参加申込とあわせて、お気軽にご提案いただければ幸いです。 -
Firefox 43 と WebVisum のこれから
NVDA ユーザーが画像認証 (CAPTCHA) の壁を克服する手段として広く知られている WebVisum という Firefox アドオンがあります。
ミツエーリンクス まほろば などで紹介されています。
最近の Firefox と WebVisum について私が知っていることの整理と、問題提起をしておきます。
最近リリースされた Firefox バージョン 43 から、Firefox の開発元が認証をしたアドオンだけがインストール、実行できるようになりました。
WebVisum はまだ Firefox 開発元の認証を受けたバージョンを公開していないようです。
未認証のアドオンの実行を禁止するようになったのは、システムを不安定にしたり不正アクセスの原因になったりするアドオンが広まることを防ぐ目的のようです。
回避策はいくつかあり、後述しますが、どれも根本的ではありません。
根本的には WebVisum が最新の Firefox に対応するように、ちゃんと開発、システム運営を続けてもらう必要があります。
英語でしか書かれていませんが、WebVisum に寄付をしたり運営に協力したりしてください、みたいなことはサイトに書かれてはいます。
いままでそういう支援を検討しておられたのなら、この機会に WebVisum の運営元に対して、今後もちゃんと開発されていくのか、確認をしてみられるのがよいと思います。
たしか今年の夏ぐらいに WebVisum のサーバーが止まって、一時的に WebVisum が使えなくなったことがあったはずです。
海外のメーリングリストでは WebVisum の代わりになるものがないか、という質問がときどき出るようになりました。
Firefox のアドオンは今後も大きな仕様変更が予定されているはずです。
もし WebVisum の開発が止まっているなら、将来の Firefox のバージョンアップに追従できなくなり、WebVisum は使えなくなってしまうと思います。
以下、暫定的に WebVisum を使えるようにするいくつかの方法です。
(1)
自己責任で Firefox の設定を書き換えて、未認証のアドオンを有効化する。
例えば「窓の杜」の以下の記事に書かれています。
「Firefox 43」では未署名のアドオンが利用不可能に
“about:config”でオプションを無効化すれば、次期バージョンまでは継続利用が可能
Firefox 44 ではこの方法は使えなくなるそうです。
なのでいまから約6週間しか有効ではありません。
(2)
Firefox 38 延長サポート版 (ESR) に乗り換える。
Firefox ESR 38 という、仕様としてはバージョン38のまま、セキュリティ修正だけは2016年5月まで行われる特別な Firefox があります。
下記ページの下の方に日本語 Windows 版のダウンロードリンクがあります。
Firefox/Thunderbird 法人向け延長サポート版
この ESR 38 で WebVisum のサイトからアドオン ( WebVisum 0.9.1 ) をダウンロードしてインストールできることは確認しました。
(未認証のアドオンは自己責任で使ってください、というメッセージは出ます)
この方法も2016年5月までしか有効でなく、次にメジャーバージョンアップされる ESR ではいまの WebVisum は使えないはずです。
(3)
Firefox のバージョンを戻す、バージョンアップを止める。
おそらく皆様最初に思いつくことと思いますが、セキュリティ上の不具合があると分かっていて使い続けることになるため、良くない方法です。
けっきょくは WebVisum というサービスが本当に必要なのか、もし必要なのだとしたら、どうやって WebVisum の開発者や運営者を支援するのか、といったことが問われていると思います。
まあ NVDA もそうなんですけどね。。
CAPTCHA のために WebVisum が使われ続けることは、スクリーンリーダー利用者に対してアクセシブルな操作手段を提供しないサービス運営者を容認することに繋がっているとも考えられます。
以前は日本で広く普及しているスクリーンリーダーが Firefox に対応していなかったため、画像認証をクリアしたい、Firefox を使いたい、じゃあ NVDA を覚えよう、という順番で NVDA に注目された時期もありました。
しかし私は NVDA 開発者たちの思想を尊重して、WebVisum にしがみつかないことも、模索したい、してもらいたい気持ちになっています。
以上、議論の材料になれば幸いです。
追記(2016年8月22日):
WebVisum のサイトに掲載されているバージョンは 0.9.1 のままですが、Mozilla のサイトでは2016年7月18日にリリースされた WebVisum 0.9.5 が紹介されており、認証済みのアドオンとして利用できるようになりました。 -
スクリーンリーダー NVDA 日本語版の現状
この記事は、Web Accessibility Advent Calendar 2015、4日目の記事です。
Web Accessibility Advent Calendar に参加するのは初めてなので、自己紹介をします。
広島出身、東京と京都を経て、現在また広島在住。
2012年4月から NVDA 日本語チーム の代表としてオープンソースの Windows 用スクリーンリーダー NVDA の翻訳と日本語版開発を担当しております。
今年の夏 AccSell ポッドキャスト 第75回に出演して喋ったので、よろしければ聞いてみてください。
非営利法人 ATDO(支援技術開発機構)主任研究員として電子書籍のアクセシビリティ(EPUBやDAISY)に従事することもあります。
Web アクセシビリティに関することでは、今年から WAIC WG2(ウェブアクセシビリティ基盤委員会 実装ワーキンググループ)に参加しています。
NVDA の開発に Python が使われているというつながりで、広島で Python のイベント PyCon mini Hiroshima の実行委員長をやりました。
その他の仕事としては、某ステルスモードのスタートアップでソフトウェア開発に従事しています。
この記事では今年ポッドキャストやイベントで喋り足りなかった NVDA の実情をまとめてみたいと思います。
まず、ユーザー数や市場占有率について。
日本でよく参照されている「視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・ パソコン利用状況調査 2013」(新潟大学)によると、スクリーンリーダー利用者全体における NVDA 利用者の割合は6パーセントとされています。
このことから「NVDA でしかちゃんと動かないWeb標準を実装しても、大半の視覚障害ユーザーには届かない」と判断されがちです。
私は、話はそれほど単純ではないだろうと考えています。
理由のひとつは、この調査が実施された2013年秋から現在までに、NVDA 日本語版のユーザーはおそらく2倍以上に増えているであろうこと。
もうひとつは、同じくこの2年のあいだに「視覚障害者の Windows 離れ」が進んだと思われること、です。
まずは NVDA 日本語版の普及状況から。
NVDA には「更新の自動チェック」機能があり、24時間ごとにサーバーと通信をしています。
サーバー側で「自動チェック」のアクセス数を数えることで、1日ごとのユーザー数を把握しています。
ちなみに NVDA 本家版のユーザー数調査結果によると、1日あたり平均23775人が一番新しい数字になっています。
(1週間のアクセス数を1日平均に直しているのは、曜日によってユーザー数が異なるからでしょう。詳しくは後述)
NVDA 日本語版は2013年12月15日にリリースした 2013.3jp から、更新チェックを独自に運用していて、NVDA 日本語チームのサーバーでアクセスを数えています。
2014年1月5日ごろの1日あたりの平均ユーザー数は64人ですが、これは 2013.3jp よりも古いバージョンを把握できていないので、すこし控えめな数字になっているはずです。
その後、2014年3月20日に 2014.1jp を、6月2日に 2014.2jp をリリースしました。
大半のユーザーが 2013.3jp 以降を使っていると考えられる2014年5月上旬で、NVDA 日本語版の1日平均ユーザー数は176人でした。
そして2015年12月上旬、現在の1日平均ユーザー数は424人になっています。
単純に伸び率を掛けると、6パーセントだったシェアは少なくとも15パーセントにはなっているでしょう。
一方で、パソコンを利用する視覚障害者、つまりこのシェア計算の母数は、この2年でどうなっているでしょうか。
はっきりとは分かりませんが、私は「期待したほど NVDA 日本語版のユーザー数が増えていない」ことと、視覚障害者コミュニティの「空気の変化」から判断して、「日常的なコミュニケーションや情報アクセスは iPhone の VoiceOver でやってしまう」というライフスタイルが急速に広まりつつあると感じています。
ひとつの根拠は、NVDA 日本語版のユーザー数が2014年年末から2015年年始にかけての1週間に大きく落ち込んだ、というデータです。
また、今回この記事を書くために、この3週間くらいの曜日ごとのユーザー数を調べてみたのですが、やはり土曜日と日曜日のユーザー数が少ない、という結果になりました。
視点を変えると、日本における NVDA は「日常生活を支援する道具」の座をスマートフォンに明け渡しつつあるかわりに、平日に職場で使われる「視覚障害者の就労支援ツール」になりつつある、という可能性を感じています。
就労における NVDA というテーマでは、今年9月のイベントでも IT 技術者として働いている NVDA ユーザーによる発表がありました。
また技術者ではない人からも、マッサージの仕事の予定管理にイントラネットが使われていて、そのWebサイトにアクセスするときに NVDA を使う、といった話を聞いたことがあります。
日本盲人職能開発センター(東京都新宿区)ではNVDAの講習会が定期的に開催されているようです。
(私は2014年の秋にこの施設で最初のNVDA講習会をお手伝いしました)
何度か書いたり喋ったりしたことですが、NVDA は「スクリーンリーダーの本来果たすべき役割分担」に忠実な、初心者には取っつきにくい、不親切なスクリーンリーダーです。
しかしそれはベンダーや開発者に「Web標準への準拠」「アクセシビリティAPIへの準拠」を促すための NVDA の戦略によるものです。
また一方で、たった2人のコア開発者が膨大な開発を効率よく行うための、プロジェクト生き残りの手段であるとも言えます。
NVDA の強みを手短に語ってほしい、NVDA でなければできない作業をアピールしてほしい、と言われるたびに複雑な気持ちになります。
正しく迅速に「標準」に準拠するスクリーンリーダーよりも、「特定のコンテンツやアプリケーションに特化したスクリーンリーダー」のほうが、どうしても「すごいソフトウェア」「お金を払うに値する製品」に見えてしまうのです。
開発中のアプリやコンテンツが NVDA でちゃんと動くようにするにはどうしたらいいか、という質問も、似たような状況です。
「特定のスクリーンリーダーに特化したコンテンツやアプリケーション」の開発を促したくない、ということも NVDA のポリシーだからです。
NVDA 本家の開発は最近、GitHub に移行しました。
この GitHub Issues では WAI-ARIA をどう解釈して NVDA でどう実装しているのか、といったやりとりも 頻繁に 交わされています。
NVDA に関わる前から「アクセシビリティ」にこだわっていた私にとって、アクセシビリティとは「物事の本質」であり「コンテンツの品質」であり「イノベーションの源泉」です。
日本では Web アクセシビリティのコミュニティにとっても、スクリーンユーザーのコミュニティにとっても NVDA はまだまだメジャーな存在ではありません。
Web アクセシビリティは「情報産業というエコシステムの傍流」かも知れませんが、しかし「技術ロードマップのど真ん中」だと信じています。
開発者とユーザーがお互いに「Web標準を考慮して頑張っても、相手が使いこなせないから無駄」と思うのではなく、双方が「互いに歩み寄れる妥協点」を見つけてほしいと思っています。
日本のユーザーに NVDA をリアルタイムに届けることで、まもなく始まるであろう「合理的配慮」をめぐる当事者たちと事業者たちの「戦い」を支えたいと考えています。
告知:
2016年1月9日(土曜)に大阪で開催される LibreOffice mini Conference 2016 Japan に参加します。
それから1月16日(土曜)に東京で(久しぶりの) NVDA ミートアップを開催します。
NVDA について質問したい人、一緒に NVDA コミュニティを盛り上げたい人のご参加をお待ちしております。 -
OSC広島, DB勉強会
9月19日 オープンソースカンファレンス 2015 Hiroshima にNVDAユーザ会広島として出展しました。
オープンソースカンファレンス2015 Hiroshima #nvdajp #osc15hi
Posted by Masataka Shinke on 2015年9月19日
今年はセミナーの時間を作らず、出展だけにしました。
そのかわりに NVDA日本語版 のサイトに 開発者のためのNVDA というページを作りました。
アクセシビリティのチェックのために NVDA を使ってみたい、というかたに向けて、9月13日に東京で開催した講習会「Web制作者のためのNVDA入門」の資料をまとめて、最低限知っていただきたいインストールのコツなどを書いています。
聞きに行ったセッションではOSC広島特別企画「IT企業で働くということ」と題して行われたパネルディスカッションが盛り上がっていました。
学生時代に広島の勉強会コミュニティで活躍してくださり、社会人になった若手の人たちが登壇。OSC広島地元企画の若手社会人によるパネルディスカッションです。満員御礼ですね。 #osc15hi pic.twitter.com/bqaRYKNxIa
— OSC【公式】 (@OSC_official) 2015, 9月 19
ライトニングトーク&閉会式で、PyCon mini Hiroshima (11月22日)の告知をしました。
この日はサイトしか紹介できませんでしたが、本日 connpass での参加者・発表者の募集も開始しました。
翌日の9月20日は同じ場所で第11回中国地方DB勉強会に参加。
自分はデータベースに関しては「自分の技術レベルを自覚する」ために勉強会に来ているという感じでしょうか。。
技術的な話、技術者が意識するべきビジネスの話、勉強会コミュニティを通じて人脈や仕事を得たり成長したりする話、など、幅広く盛りだくさんでした。
懇親会の「町家風古民家で穴子料理」がなかなか良い雰囲気でした。 -
NVDA 2015.3jp と NVDA ワールド 2015 東京 (9月12日)
NVDA 日本語チームから NVDA 2015.3jp のリリース、そして NVDA ワールド 2015 東京 (9月12日) の最新情報です。
無料(オープンソース)の Windows 用スクリーンリーダー NVDA (NonVisual Desktop Access) の日本における開発コミュニティである NVDA 日本語チームは、2015年8月25日に NVDA 2015.3jp をリリースしました。
ダウンロード
http://i.nvda.jp/
NVDA日本語版 ダウンロードと説明
https://www.nvda.jp/
Windows 10, 8.1, 8, 7, Vista, XP(SP3) の32ビット版および64ビット版に対応しています。
Windows 8 以降ではタッチ操作が利用できます。
NVDA 日本語版のライセンスは GPL v2 です。
NVDA は多くのアプリケーションに対応し、インストール不要で利用できるポータブル版、アドオンによる機能拡張など、さまざまな特長を備えています。
NVDA 日本語チームがリリースする NVDA 日本語版は、オーストラリアの非営利法人 NV Access がリリースする NVDA 本家版に日本語の音声エンジンと点訳エンジンを追加するなど、日本語 Windows 環境のための改良を行っています。
NVDA 本家版 2015.3 の主な改良点は、Windows 10 への暫定的な対応、ブラウズモードで1文字ナビゲーションを無効にできる機能(NVDA+Shift+スペース)、および不具合の修正です。
NVDA最新情報(本家版のバージョンごとの変更点)
https://www.nvda.jp/nvda2015.3jp/ja/changes.html
NVDA日本語版 2015.3jp の変更点
https://www.nvda.jp/nvda2015.3jp/ja/readmejp.html#toc65
Windows 10 の多くの機能について、NVDA は 7 や 8.1 と同等に機能しますが、現時点では一般的な NVDA ユーザーには Windows 10 の利用を推奨しません。
NVDA の Windows 10 対応に関する NV Access からの告知の日本語訳
https://d.nishimotz.com/archives/1833
最後に、開催日が近づいてきた「NVDAワールド」の最新のご案内です。
(ご案内 ここから)
NVDAワールド 2015 東京
2015年9月12日(土曜)
無料で使えるパソコン用スクリーンリーダーの導入から最新情報まで
NVDA (NonVisual Desktop Access)とは、無料で使えるオープンソースのWindows用スクリーンリーダーです。
合成音声や点字によるフィードバックを通して、視覚障害者が特別な出費をしなくてもWindowsパソコンを使えます。
NVDAは、世界中の各地域の個人・団体などの援助によりNV Access(視覚障害者であるMichael Curran氏を中心に作られた非営利組織)が開発しています。
NVDA日本語チームはこれまで、グローバルなNVDA開発コミュニティにおける日本語対応を担当しつつ、日本のユーザーに必要な機能を追加したNVDA日本語版の開発、日本国内におけるNVDAの普及啓発活動を行ってきました。
2015年7月に Windows 10 がリリースされ、無料アップグレードの提供が始まりました。
めまぐるしく変化するコンピューターとインターネットの世界、その中で挑戦を続ける NVDA の世界を、より多くの人にお知らせするために、昨年に引き続き「NVDA ワールド」を開催します。
今年の NVDA ワールドでは、最新の NVDA 日本語版 2015.3jp を使って、Windows や Web アプリなどの NVDA の操作の基本、NVDA にいろいろな機能を付け加えるアドオンの最新情報、職場における NVDA の活用方法を紹介します。
特別講演では、無料で利用できるオープンソースのオフィス統合環境 LibreOffice をご紹介します。
LibreOffice はワープロ、表計算、プレゼンテーションなどの機能を備え、Microsoft Office との相互運用性が高く、世界中からボランティアが参加するコミュニティによって活発な開発が行われています。
開発スタイルが NVDA と似ているだけでなく、LibreOffice の主要な機能はNVDA から使うことができます。
今回は LibreOffice の概要、 LibreOffice のアクセシビリティ、日本の翻訳チームの状況などについて、デスクトップ環境、印刷環境、国際化、翻訳を含むオープンソースソフトウェアの
幅広い分野で活動、著述、講演をしておられる、LibreOffice 日本語チームの おがさわら なるひこ 様にご講演いただきます。
NV Access に支援をしておられる日本財団様に、今年は日本のコミュニティのイベントにもご協力いただけることになりました。
NVDAにご興味・関心のある個人・団体・企業の皆様、ふるってご参加いただきますよう、ご案内申し上げます。
■ NVDAワールド 2015 東京 の概要
主催:NVDA日本語チーム
協力:日本財団 / 神奈川県ライトセンター視覚障害援助赤十字奉仕団 / 特定非営利活動法人 神奈川県視覚障害者情報雇用福祉ネットワーク
日時:2015年9月12日(土曜) 10時から17時
問合せ先: nvdajp@nvda.jp
会場:日本財団ビル (東京都港区赤坂1-2-2)
参加費:無料
定員:100人(予定)
参加方法:会場準備のため事前にお申し込みをお願いします。
後述の「募集」をご参照ください。
参加申込者が多数になった場合は受付を終了する場合があります。
開始時の誘導:9時30分から10時30分まで、東京メトロ 溜池山王駅 溜池交差点方面改札(銀座線の出口)からの誘導を行います。
終了時の誘導:イベント終了時に会場から東京メトロ 溜池山王駅への誘導を行います。(16時30分ごろと17時00分ごろの予定)
主催者から昼食の提供はありません。
■ 参加申し込み受付と募集
参加申し込みの受付および以下の募集を行っております。
NVDA日本語チームの connpass
http://nvdajp.connpass.com/event/18105/
または nvdajp@nvda.jp 宛のメールにてご連絡ください。
・一般参加者(誘導のご希望の有無をお知らせください)
・ライトニングトーク登壇者(一般参加者としてお申し込みください)
・当日の運営をお手伝いいただけるボランティアスタッフ
・ブース出展者(非営利活動グループ)
・ブース出展を伴う企業等のスポンサー(詳細は下記をご参照ください)
https://www.nvda.jp/2015/nvda-world-2015-tokyo-sponsors.html
■ プログラム
1. NVDA 日本語版 2015.3jp と Windows 操作の基本
講演:西本 卓也(NVDA 日本語チーム)
概要:NVDA 日本語版の最近の改良点と、Windows での文字の読み書きなど基本操作を紹介します。
時間:10時15分から11時00分
2. 就労における NVDA の活用
講演:村松 謙(ブラインドパソコンサポート)
概要:業務利用での NVDA のメリットや活用方法を紹介します。
時間:11時00分から11時30分
お知らせ
時間:11時30分から11時45分
昼休み
時間:11時45分から13時00分
主催者から昼食の提供はありません。近隣のお店をご利用頂くかご持参下さい。
3. NVDA による Web アプリの操作
講演:西本 卓也(NVDA 日本語チーム)
概要:Gmail などの Web アプリの操作を最新の NVDA を使って説明します。
時間:13時00分から13時45分
4. 特別講演:LibreOffice のアクセシビリティとコミュニティ
講演:おがさわら なるひこ(LibreOffice 日本語チーム)
概要:オープンソースのオフィス統合環境 LibreOffice の概要、アクセシビリティ、日本の翻訳チームの状況などについてご紹介します。
時間:14時00分から14時45分
5. NVDA アドオンの紹介
講演:野々垣美名子(NVDA 日本語チーム)
概要:インターネットを介して他のパソコンを遠隔操作できる「リモート」など、NVDA にいろいろな機能を付け加えるアドオンの最新情報です。
時間:15時00分から15時30分
6. 質疑応答
概要:NVDA日本語チームがNVDAについてのご質問にお答えします。
時間:15時45分から16時15分
7. ライトニングトーク
概要:5分程度の短い講演を4件程度募集します。登壇者は当日決定します。
時間:16時15分から16時45分
■ インターネット配信
インターネット配信を実施する予定です。
詳細はウェブサイト等でご案内します。
NVDA ワールド 2015 東京 の最新情報は下記でご確認ください。
https://www.nvda.jp/2015/nvda-world-2015-tokyo.html
■ 関連するイベント
このイベントの翌日の9月13日 (日曜)には AccSell Meetup 010 『Web制作者のためのNVDA入門』(主催:AccSell) が開催される予定です。
Web制作者の立場からNVDAに興味があるという方は、こちらのイベントもぜひご検討ください。
http://accsell.net/info/accsell-meetup010.html
(ご案内 ここまで) -
デザイニング Web アクセシビリティ
2015年7月に出版された「デザイニング Web アクセシビリティ」を紹介します。
私が開発・翻訳に関わっているオープンソースのスクリーンリーダー NVDA は、アクセシビリティに関わる開発者・制作者のためのツールになってほしい、そして日本でもこういう「Web アクセシビリティの定番教科書」(になるはずです、この本は)が取り上げるソフトウェアにならなくてはいけない、という思いを私は持ち続けてきました。
手元に届くまで、もし NVDA の N さえ出てこなかったらどうしよう、とドキドキしていたのですが、心配無用。
冒頭の「スクリーンリーダー」の説明:
「日本国内では PC-Talker, JAWS, NVDA などがよく使われています」
なんと「日本国内でよく使われているスクリーンリーダー」とまで言っていただきました。
たいへん光栄です。
まだまだ「よく使われている」かどうかは私自身が疑問ですが、日本国内で「よくインストールされている」スクリーンリーダーであることは間違いないでしょう。なんせ無料だし、3ヶ月に1回バージョンアップしてますからね。。
一方で、この「よく書かれた教科書」は、スクリーンリーダーの解説書でもなければ、スクリーンリーダーでのユーザー体験がすべてであると書かれているわけでもありません。
支援技術への対応やその検証は、本書で解説される「サイト製作プロセス」の後のほうの一要素でしかありません。
それどころか本書は全体を通じて、HTML や CSS フレームワーク、JavaScript ライブラリなどの具体的な記述など、実装の話は少ししか出てきません。
WCAG 2.0 や JIS X 8341-3 と同じく「特定の技術や実装に依存しない記述」になっていると言えます。
(そのかわり関連書籍「コーディング Web アクセシビリティ」が WAI-ARIA を扱っています)
ですが、ユーザー体験というレベルでは、アクセシビリティがどのように損なわれるのか、という問題が非常に具体的に扱われていて、その問題ごとに適切な解決アプローチが紹介されています。
なので本書は WCAG 2.0 や JIS X 8341-3 のよい解説書、アクセシビリティガイドラインに対応するための実践書になっています。
(「WCAG 2.0 と本書内容の対照表」が巻末についています)
私はWebサイト制作者としてのスキルやキャリアが足りないので、本書を読みながら、世の中のWeb製作の現場、社内や顧客とのやりとりなどを想像するのが面白いです。
さすがに2015年の現在、アクセシビリティというものに対する世の中の認知は、多少は高まってきたのだと信じています。
おそらく「単なる悪意や無理解でアクセシビリティが悪い」ということは、多少は減ってきたのだと思います。
しかし「つい他のことに気を取られてアクセシブルでなくなってしまっている」というケースはむしろ多くなっているのではないか、ということを、本書を読んで感じています。
その最たる例が「いわゆるセキュリティ面の要求に応えていたらアクセシブルではなくなった」というケースでしょう。
ロボットを排除するための画像認証(CAPTCHA)、コンテンツのコピー防止のための右クリック対策、不正アクセスを防止するための「戻るボタン」抑止やセッション時間制限、フォーム入力の過剰なエラー処理、など、おそらくは「悪意からこうなった」というよりも「セキュリティの要求に(アクセシビリティの視点抜きに)対応してしまった」というケースが増えているのだと思います。
本書が「本気」で書かれているのはまさにこの部分で、こういう課題をどう考えれば正しいのか、筋がよいのか、といったことが議論されています。
CMSの問題、ポップアップメニューの操作、といった問題も「運用コスト」「開発効率」「リッチな体験」「モバイルデバイスの画面設計」などなど、「つい他のことに気を取られて失敗」というパターンに分類できそうです。
「正しいことを正しくやる」ことがずっと変わらないとしても、それを学ぶために必要な教科書は「こういうことに気をとらわれるとこういう失敗がおきる」ということを、時代に合った内容で伝えていく必要があるんでしょうね。。
アクセシビリティ、あるいはマシンリーダブルであることの重要性をいくら説いても「ついそこから逸脱させてしまう他の要因」は手を変え品を変え、次から次へと登場してくるのでしょう。
なので、こういう内容の本にご興味があるなら、早めに手にとって実践されることをお勧めします。
ひさしぶりに書籍の紹介をした理由ですが、実は自分用に1冊購入して、その後で AccSell メールマガジンの読者プレゼントでもう1冊いただきました。2冊目は人に配るために使わせていただきます。
そして AccSell のポッドキャスト 8月19日ごろ配信の第75回には、私が出演して NVDA の話をします。
NVDA 関連の告知を(前の記事の繰り返しですが)もう2つ:
NVDA ワールド 2015 東京(9月12日)のプログラムがほぼ確定しました。
特別講演として LibreOffice 日本語チームの おがさわら なるひこ さんをお招きします。
NVDA でも利用できる無料のオフィススイート LibreOffice の魅力、アクセシビリティ対応とコミュニティ運営について伺う予定です。
とても楽しみです。
翌日の9月13日は AccSell Meetup 010 『Web制作者のためのNVDA入門』 を担当します。
「デザイニング Web アクセシビリティ」で書かれていること、実際に試してみましょう。
どちらもよろしくお願いします。 -
PyCon mini Hiroshima など
地域 PyCon mini を広島で という話を2月14日にしゃべってから、いろいろな方にご相談して、ご協力いただいています。
日程と場所が確定したので、今日の LT 駆動開発17 で紹介しました。
PyCon mini Hiroshima 2015
主催:PyCon mini Hiroshima 2015 実行委員会
開催日:2015年11月22日(日曜)
会場:サテライトキャンパスひろしま
私は実行委員長を務めることになりました。このイベントについての詳細はいずれまたお知らせします。
今日のLTでは、PyCon JP 行動規範に始まり、整備されたマニュアルやツールなど、イベントの運営についていろいろ学ぶことがある、という話をしました。
以下はLT駆動でしゃべらなかったですが、9月の東京でのイベントのお知らせの続報。
9月12日(土曜)「NVDAワールド 2015 東京」の参加申し込みの受付を開始しています。
翌日も東京ですが、9月13日(日曜)『Web制作者のためのNVDA入門』というイベントで講師を担当します。 -
NVDA の Windows 10 対応
NV Access から NVDA の Windows 10 対応について下記の告知が出ています。
http://www.nvaccess.org/win10/
2015年8月24日に更新された情報のおおまかな日本語訳です:
(ここから)
Windows 10 の多くの機能について、NVDA は 7 や 8.1 と同等に機能しますが、熟練ユーザーでない人は Windows 10 へのアップグレードや Windows 10 プリインストールのマシンの購入について、次のお知らせをするまで、しばらくお待ちください。
熟練ユーザーで NVDA の Windows 10 対応をテストしたい場合は、実験用の環境をご用意ください。そして以下をご確認ください。
* 常に最新の NVDA をご利用ください。最新は NVDA 2015.3 です。
(訳注:本家 2015.3 に対応する 日本語版 2015.3jp を2015年8月25日に公開しました)
* Microsoft Edge ブラウザへの実験的な対応は 2015.3 で導入されました。しかし、致命的な問題が残っており、日常の利用に耐える状況ではありません。
原因は Edge 側の実装にあり、 NV Access は Microsoft がこの問題を将来の Windows Update で修正できるように協力をしています。
* Edge が既定のWebブラウザとなっている場合は、既定のブラウザを Firefox や Internet Explorer に変更してください。
* Edge が既定のPDFビューワーになっている場合は、既定のPDFビューワーを Adobe Reader に変更してください。
* コルタナや Windows ストアなど Windows 10 用に開発されたアプリは、内部で Edge ブラウザのエンジンを使用しており、操作が適切に行えない可能性があります。
* Windows 10 標準のメールアプリは現在のバージョンではアクセシブルではありません。他の電子メールアプリをご利用ください。
* NVDA を Windows 10 で使用すると、以前のバージョンの Windows に比べて応答が遅くなる場合があります。例えばファイル エクスプローラーの読み上げがもたつく、Outlook 2013 のメッセージリストで反応が非常に遅い、といった状況です。NVDA の将来のバージョンではこの問題への対策を行う予定ですが、一部の問題については Microsoft のソフトウェアの修正が必要です。
* Windows 10 へのアップグレードが開始されると、アップグレードの最後の段階を終了させる場面では NVDA を実行することができません。
ただしこの段階で Windows+Enter を押してナレーターを起動し、アップグレードを終了させることができます。
アップグレードが完了したら NVDA は通常どおり利用できます。
(訳注:アップグレード中のナレーター利用について日本語での動作は確認していませんが、Windows 10 には 8 や 8.1 と同様に日本語音声合成が搭載されていることを確認しています)
(ここまで)
追記:Windows 10 のナレーターについてMLでご教示いただいたところでは、アップデート中にナレーターで容易に操作が可能とのことです。
追記(8月1日):本家 master に Edge ブラウザ対応がマージされました。この本家 master に基づいて NVDA 日本語チームは日本語公開ベータ版 2015.3jp-beta-150731 を公開しました。www.nvda.jp をご参照ください。ただし現時点での Edge の使い勝手は上記のアナウンスのとおりであるとご理解ください。
追記(8月25日)本家の記事の更新に対応して本記事を更新しました。