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  • NVDA 講習会でやったこと

    6月の VIC ステップアップ講習会で NVDA 日本語版の紹介をしました。
    やった内容を紹介します。
    (1)導入から入力ヘルプまで
    NVDA 日本語版の最新バージョンは http://i.nvda.jp でダウンロードしてください。
    NVDA のインストーラーを起動して、3種類の使い方があることを説明。
    Tabで移動、スペースで「同意する」のチェックボックスの操作、スペースでボタンを押す操作。
    NVDA の起動。ようこそ画面に書いてある「NVDAキー」の説明。ノートパソコンでは「無変換」を使うのが便利。
    NVDA+N で NVDA メニューを開いて、ヘルプ(サブメニュー)からもう一度「ようこそ画面」を開いてみるなど。
    ダイアログはEnterキーで閉じられる。メニューはEscキーで閉じられる。
    NVDA メニューを開いていないときも NVDA はずっと動いている。
    NVDA+1 を押して「入力ヘルプモード」を体験する。押したキーの説明。NVDA+N を押すとわかるように「NVDAコマンドの説明」にもなっている。
    入力ヘルプモードで NVDA+1 を押すと入力ヘルプモードの解除。
    (2)NVDA の設定
    NVDA メニューで「キーボード設定」を確認する。今回は「ラップトップ」配列でやっていただいた。
    アクセラレーターキーで項目の移動やチェック状態の変更ができるが、慣れるまでは使わなくてよい。
    項目は Tab で移動。そろそろ Shift+Tab で逆方向移動も。
    読み上げの中止は Ctrl で、中断(再開)は Shift で。
    音声設定で「速さの変更」と「記号読み上げレベル」だけ試していただく。
    記号読み上げレベル「読まない」にしたら、比較のためにもう一度「ようこそ画面」を開いてもらう。
    この記号読み上げレベルは NVDA+P でも変更できる。
    (3)ユーザーガイドで「一文字ナビゲーション」を体験
    NVDA メニューの「ヘルプ」から「ユーザーガイド」を開いてもらう。
    目次はリンクになっているので、Tab で移動して、スペースでリンク実行(ジャンプ)できる。
    覚えるコマンド(ラップトップ配列):
    NVDA+A (すべて読み上げ)
    H と Shift+H (見出しジャンプ)
    1, 2, 3, 4 (Shiftで逆方向、レベルを指定して見出しジャンプ)
    左矢印と右矢印(1文字ずつ確認)
    上矢印と下矢印(NVDA内部で文として扱われている単位での移動)
    NVDA+L (現在の行の読み上げ)
    NVDA+T (タイトルの読み上げ)
    ユーザーガイドはアプリケーションなので Alt+F4 で終了。
    (4)オブジェクトナビゲーションに挑戦
    オブジェクトとは? Windows の画面に表示されるあらゆるもの。
    Windows 7 の例を見せながら「電卓」で1ケタの足し算に挑戦。
    スタートメニューから電卓を起動。
    Alt+Tab (アプリケーションの切り替え)で、デスクトップと電卓が切り替わる。
    電卓を起動すると「結果を表示しているオブジェクト」が現在位置で、「0」と出ている。
    電卓がどんな画面なのかは、簡単にあらかじめ説明しておく。
    Alt キーを押すとメニューに移動できて、上下に移動できることも確認。
    Esc を押してメニューを閉じ、さらに Esc を押して元の場所に戻る。
    まず NVDA+Shift+下矢印 で「内側のオブジェクト」があるかどうか確認する。
    そして NVDA+Shift+左(右)矢印で前後に「オブジェクトがありません」と言われるまで移動してみる。
    これで3方向を確認したことになる。
    NVDA メニューと違ってオブジェクトは「上下が階層の移動」「左右が階層の中での移動」なので注意。
    いよいよ上に移動する。行き過ぎると「デスクトップ」まで行ってしまって、戻るのが大変になるので注意。
    Windows 7 の場合は、結果を表示するダイアログと、もう一つ名前のない「ダイアログ」がある。
    名前なしダイアログに30個くらいボタンがある。NVDA+Enterでボタンを押せる。
    「1」「加算」「3」「等号」と押せば、結果表示ダイアログに戻ってきたときに「4」と出ている。
    Tab 移動で操作できないアプリケーションでも、NVDAのオブジェクトナビゲーションはこのように活用できる。
    続きはぜひユーザーガイドを読みながら練習してみてください。
    こんな感じで2時間の講習でした。
    この内容は NVDA-KR の英語ポッドキャスト の第1回から第3回の前半までの内容を、ちょっと削ってコンパクトにしたものになっています。
    最後の内容はまほろばさんの記事を参考にしました。
    いずれ私もポッドキャストを作ったほうがいいなあと思っています。
    実演には開発中の「フォーカスハイライト」アドオンを使いました。
    ダウンロードは下記からどうぞ:
    focusHighlight-0.0.5.nvda-addon
    広島では7月から8月にかけて、何度か NVDA の講習会を行う予定です。詳しいことが決まったら、このブログなどでご案内します。
    追記(7月28日):focusHighlight のリンクを更新しました。
    講習会の告知は広島市広報誌の7月15日版に掲載されました。ご報告が遅くなって済みませんでした:
    視覚障害者向けパソコン音声ガイドソフト講習会

  • 広島Git勉強会に参加しました

    広島Git勉強会に参加しました。
    BzrからGitに乗り換えたときの話、と言いつつ NVDA のブランチ(チケット駆動開発)の話をしました。
    NVDA が分散型バージョン管理システム Bazaar に移行してから、NVDA 日本語版は「ブランチとマージ」を活用してソースコードを管理することを心掛けてきました。
    今回は NVDA 本家の機能ブランチとリリースブランチの運用方法を紹介して、さらに、NVDA日本語チームがどうやってリリースごとに日本語版のブランチを運用しているのか、ローカルとリモートのリポジトリをどのように使っているのか、といったお話をしました。最後に、Bazaar のエコシステムがうまく回らなくなったので Git に移行した、という1か月前の出来事に触れました。
    Ustream 配信の録画

    Git はエコシステム的には大成功しているツールですが、使い方は簡単ではありません。いろいろな人のお話を聞いていると、自分が使いこなしていないオプション、設定、使い方もいろいろ気づくことができました。

    最後に交流会かと思わせて すごい広島 に参加者を巻き込んだ github flow の実習。ウェブサイトの場合は master ブランチを常にデプロイ可能な状態にしておくブランチ運用がいいよね、という話の実践でした。github のissueやプルリクエストなどの機能をみんなで体験しました。

    6月2日:内容を追加しました。

  • おいしい広島 Advent Calendar 2012 (12月3日)

    おいしい広島 Advent Calendar 2012の3日目を担当させていただきます。@24motz の中の人です、こんにちは。

    広島に関するアツイ思いをつなげていこうぜ。
    ※内容は技術系とか関係なくご自由にどうぞ 例 俺の一番オススメなお好み焼きとか 俺が考えた最強の広島弁ネタとか

    ということで、2011年から活動している「NVDAユーザ会広島」について書きます。

    自己紹介

    広島出身。2011年3月まで東京で大学教員をしていました。広島に転居して、NVDA日本語版(詳しくは後述)の開発を続けながら、技術コンサルティングや受託開発をしていたのですが、2012年10月から特定非営利活動法人 支援技術開発機構の主任研究員として働いてます。明日からまた海外出張なので、今日書かせていただくことにしました。

    NVDAとは

    NVDA (NonVisual Desktop Access) はオープンソース(無料)のスクリーンリーダーです。スクリーンリーダーというのは、視覚に障害があるかたが、キーボード入力、音声合成、点字ディスプレイでコンピューターを操作するための支援技術です。
    NVDA はオーストラリアの開発者2人が中心になって2006年から開発しており、近年、世界でユーザーが増加しています。
    2012年5月のWebAIMの調査では NVDA を”commonly used”と答えた割合が43パーセントに達しています。
    日本でも2008年頃から「NVDA日本語化プロジェクト」が進められ、NVDAの日本語化が行われました。
    しかし、NVDAが標準で使用しているeSpeak音声エンジンが日本語に対応していない、日本語のカナ漢字変換を読み上げできない、日本語の点字出力に対応できない、といった課題がありました。
    これらの開発を行うために私(最初は東京在住)や @hoozukiyama さん(もともと広島県三次市在住)がNVDA日本語化プロジェクトに参加しました。

    NVDAユーザ会広島

    私が2011年春に地元の広島に帰ったので、NVDA日本語版の開発者2人が広島に揃いました。
    NVDAユーザ会広島は、名前はユーザ会ですが、最初は NVDA 本家版のリリースごとに日本語版の開発を行う、開発者の団体でした。
    しかし、いずれはユーザーが集まる場にしたい、と思ったので、あえて「ユーザ会」という名前をつけました。
    ちなみに現在、日本で「NVDAユーザ会」と名乗っている団体は、私の知る限り、広島にしかありません。
    NVDAユーザ会広島は地元のイベント、オープンソースカンファレンス Hiroshima に参加しています。
    NVDAのイメージキャラクター「でめきん」のぬいぐるみは、オープンソースカンファレンスのために作りました。
    また nvda.jp というドメインもNVDAユーザ会広島の活動として取得しました。
    OSC広島2011のブースの様子

    OSC広島2012のブースの様子

    勉強会

    2012年に入ってからは、定期的に例会(勉強会)を行ってきました。
    あいかわらず少人数ですが、アクセシビリティやソフトウェア開発に興味をお持ちのかたが集まったので、Python による自然言語処理(NLTK)の勉強会もしました。本を読みながらソースを打ち込んで実行する、というスタイルで行いました。時間の制約もあり、テキストの全部はカバーできませんでしたが、NVDA の開発に使われているプログラミング言語 Python の実践的な勉強になりました。
    音声合成や点訳エンジンのために機械学習を使おうと考えて、このテーマを選んだのですが、結果的に NVDA とはあまり関係ない勉強会になってしまいました。

    入門 自然言語処理
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    NVDA日本語チーム

    2012年5月に「NVDA日本語化プロジェクト」は「NVDA日本語チーム」になり、私が代表になりました。
    2012年6月にNVDA日本語版 2012.2.1jp をリリースしました。このバージョンは2012年12月1日までに4420回ダウンロードされました。
    それまでのバージョンでは(ポータブル版とインストーラー版をあわせても)2000回程度であったので、この半年で利用者が大幅に増加したと考えられます。
    たぶん今日中に新しいバージョンの安定版をリリースしますので、よろしければ nvda.jp のサイトをご確認ください。
    現在、NVDAは40以上の言語で使われていますが、ローカライズ版を独自にリリースしているのは日本、香港、韓国などわずかな国しかありません。
    本家版には新しいバージョンがリリースされたら自動的に更新される機能がありますが、この機能は日本語版では無効にしています。
    ローカライズ版に独自に追加してきた機能が、本家版に統合されていくことが理想です。
    NVDA 2012.2 から導入された「アドオン」という機能を使うと、本家版に日本語音声エンジンを追加することが容易になります。
    すでに NVDA 日本語チームは NVDA 本家版用の日本語音声アドオンをリリースしています。
    このアドオンというしくみが、「世界で一つのNVDA」を実現するために、これから重要になってきます。
    NVDA日本語チームという名前は、本家版NVDAの日本語対応と、NVDA日本語版の開発を、同じメンバーで進めていく、という体制を示すために選ばれました。
    NVDA日本語版の開発に全国からユーザーや開発者が参加してくださるようになったため、NVDA日本語チームは毎週の定例Skype会議で議論しながら進めるようになりました。
    NVDA本家版 2012.3 の「東アジア言語の文字入力」には、日本語チームが行ってきた実装が一部利用されました。
    2012年9月にはオーストラリアから NVDA の主要な開発者のお一人である Michael Curran さんを東京に招いてワークショップを開催しました。
    現在は、NVDA本家版 2012.3 でもいちおう日本語の文字入力の読み上げができるようになっています。また、日本語に起因するバグを本家で修正してもらえるように活動しており、例えば「ユーザー名が日本語の特定の文字を含んでいるときにNVDAがインストールできない」問題が解決されました。
    現在のNVDA日本語チームの最大の課題は、日本語点訳エンジンの改良です。一度は機械学習ベースでゼロから作ろうと考えたのですが、現在は liblouis という多言語対応のオープンソース点訳エンジンの調査研究も行なっています。
    日本語だけ独自の技術を開発しても、それがユニバーサルな実装にならなくては結果的に長続きしない、ということが起こるからです。
    音声エンジンについても Open JTalk に基づく独自実装から、多言語音声合成エンジンに発展させていくことが、日本語対応をグローバルに展開する道筋だと思い始めています。海外で話をしてみると HMM 音声合成はあちこちで研究開発されているので、ハードルはそれほど高くないように感じます。

    NVDAユーザ会広島のこれから

    NVDAユーザ会広島という活動を立ち上げた自分が、今はこの広島地域コミュニティをうまく活用できていないのです。ごめんなさい。
    ただ、何か協力できないか、といろいろなかたから声を掛けていただいていることを、本当にありがたく思います。
    関係者が集まったときには NVDA だけではなく iPhone, iPad や Android のスクリーンリーダー、電子書籍の音声読みあげなどについても情報交換しています。
    広島でアクセシビリティとソフトウェア開発に興味がある人が集まって face-to-face で活動できる場として、発展させていければよいと思っています。

    次の人

    明日は @wizard_paso さんです。