投稿者: nishimotz

  • NVDA の Windows 10 対応

    NV Access から NVDA の Windows 10 対応について下記の告知が出ています。
    http://www.nvaccess.org/win10/
    2015年8月24日に更新された情報のおおまかな日本語訳です:
    (ここから)
    Windows 10 の多くの機能について、NVDA は 7 や 8.1 と同等に機能しますが、熟練ユーザーでない人は Windows 10 へのアップグレードや Windows 10 プリインストールのマシンの購入について、次のお知らせをするまで、しばらくお待ちください。
    熟練ユーザーで NVDA の Windows 10 対応をテストしたい場合は、実験用の環境をご用意ください。そして以下をご確認ください。
    * 常に最新の NVDA をご利用ください。最新は NVDA 2015.3 です。
    (訳注:本家 2015.3 に対応する 日本語版 2015.3jp を2015年8月25日に公開しました)
    * Microsoft Edge ブラウザへの実験的な対応は 2015.3 で導入されました。しかし、致命的な問題が残っており、日常の利用に耐える状況ではありません。
    原因は Edge 側の実装にあり、 NV Access は Microsoft がこの問題を将来の Windows Update で修正できるように協力をしています。
    * Edge が既定のWebブラウザとなっている場合は、既定のブラウザを Firefox や Internet Explorer に変更してください。
    * Edge が既定のPDFビューワーになっている場合は、既定のPDFビューワーを Adobe Reader に変更してください。
    * コルタナや Windows ストアなど Windows 10 用に開発されたアプリは、内部で Edge ブラウザのエンジンを使用しており、操作が適切に行えない可能性があります。
    * Windows 10 標準のメールアプリは現在のバージョンではアクセシブルではありません。他の電子メールアプリをご利用ください。
    * NVDA を Windows 10 で使用すると、以前のバージョンの Windows に比べて応答が遅くなる場合があります。例えばファイル エクスプローラーの読み上げがもたつく、Outlook 2013 のメッセージリストで反応が非常に遅い、といった状況です。NVDA の将来のバージョンではこの問題への対策を行う予定ですが、一部の問題については Microsoft のソフトウェアの修正が必要です。
    * Windows 10 へのアップグレードが開始されると、アップグレードの最後の段階を終了させる場面では NVDA を実行することができません。
    ただしこの段階で Windows+Enter を押してナレーターを起動し、アップグレードを終了させることができます。
    アップグレードが完了したら NVDA は通常どおり利用できます。
    (訳注:アップグレード中のナレーター利用について日本語での動作は確認していませんが、Windows 10 には 8 や 8.1 と同様に日本語音声合成が搭載されていることを確認しています)
    (ここまで)
    追記:Windows 10 のナレーターについてMLでご教示いただいたところでは、アップデート中にナレーターで容易に操作が可能とのことです。
    追記(8月1日):本家 master に Edge ブラウザ対応がマージされました。この本家 master に基づいて NVDA 日本語チームは日本語公開ベータ版 2015.3jp-beta-150731 を公開しました。www.nvda.jp をご参照ください。ただし現時点での Edge の使い勝手は上記のアナウンスのとおりであるとご理解ください。
    追記(8月25日)本家の記事の更新に対応して本記事を更新しました。

  • NVDA ミートアップ東京 2015.2 の報告

    6月20日に NVDA ミートアップ東京 2015.2 を開催しました。
    多くの人にお集まりいただきありがとうございました。
    私の使ったスライドは下記の通りですが、すこし詳しくコメントします。


    まず、訂正とお詫びがあります。
    過去に「NVDA日本語版の更新チェックのアクセス統計」を紹介したことがありますが、私の作業に間違いがあり、実際のアクセスのおよそ2倍の数字を間違って報告していたことがわかりました。
    あらためて今回訂正したグラフをスライドで紹介しましたが、最新のデータは、1日平均386人のユーザーがいらっしゃる、という状況です。
    間違った数字を出してしまって申し訳ありませんでした。
    しかし、正直なところ「700人以上のユーザーがいらっしゃるわりには手応えがないなあ」とも思っていたので、ある意味で400人弱は妥当な状況だと感じています。
    ひきつづき、より多くのユーザーに使っていただけるように努力を続けたいと思います。
    NVDA 日本語チーム役員会は2012年より2年の任期で活動し、現在ちょうど3年、つまり2期目の前半1年が終了したところです。
    次回はミートアップのかわりに「NVDAワールド2015東京」を9月12日に開催し、年末に「NVDAミートアップ東京2015.4」を開催する予定です。
    私はアンカンファレンスの時間を使って3つの話題を紹介しました。
    最初は NVDA Remote Access の実演をしました。
    このアドオンは現在は出資者向けのベータ版という状態で、一般のユーザーはまだ入手できません。
    まだ未完成なところも多いのですが、実際に会場で2台のコンピュータを使って実演しました。
    遠隔サポートやサーバー管理、仮想マシンの操作などに使えるのではないか、という意見を聞くことができました。
    2番目は 2015.2 の新機能の紹介と、翻訳しながら私が考えたことをお話しました。
    ウェブページのCSSで指定された色の読み上げが改善されたので、「書式情報」で色の通知を有効にして実演しました。
    色の名前の翻訳では「日本語としての自然さ」よりも「ウェブ制作者の意図」を重視することにしました。
    例えば「Dark Goldenrod」を選んだウェブ制作者は「ダーク・ゴールデンロッド」という名前を意識しているはずで、スクリーンリーダーのユーザーから「この金色みたいな色の画面要素が」などという問い合わせを受けると、かえって困ってしまうのではないか、と考えました。
    現在の NVDA では「Dark Goldenrod」は「暗いゴールデンロッド色」という翻訳にしてあります。
    実際にブラウザで読み上げて動作を確認していると「暗いゴールデンロッドの色」のように「の色」で統一するのがよいかと思い始めています。
    Excel のグラフと数式はスライドで紹介したとおりなのですが、Excel で NVDA+F7 を押すと要素リストが表示されないで「スペルチェック」が実行されてしまうことがあります。
    他のユーザーから報告されていない現象なのですが、気になっているので、情報をお待ちしています。
    最後に Windows 10 の実演。
    NVDA をメインのスクリーンリーダーとして、Firefox をデフォルトのブラウザとして使える人であれば、現状でも Windows 7 からの移行は可能なのではないかと思います。
    ただ Windows 10 のナレーターの日本語の読み上げはまだ私はきちんと動作確認できていません。
    もちろん NVDA 以外のスクリーンリーダーが Windows 10 に対応するまで移行できないという人も多いでしょうから、「壊れてもよい環境」を用意して、自己責任でお願いします。
    仮想デスクトップはキーボードだけで操作でき、ほぼスクリーンリーダーで読み上げできています。
    スタートメニュー、新しいタスク切り替え、新しいウェブブラウザがきちんと対応するのは NVDA 2015.3 からです。
    おそらくリリースは9月上旬のイベントの時期になるでしょう。
    Windows 10 がリリースされる7月29日前後には、本家の master ブランチに基づく日本語公開ベータ版をリリースして、日本からも 2015.3 正式版に対して積極的なフィードバックをしていきたいと思い始めています。
    追記:Windows 10 紹介の録音を公開しました。

  • NVDA 2015.2 の数式対応

    NVDA 2015.2 の数式対応について、ミツエーリンクスさんのブログで解説されています。
    http://www.mitsue.co.jp/knowledge/blog/a11y/201506/17_1000.html
    NVDA 2015.2 ユーザーガイドにも上記記事にも書かれているとおり、MathPlayer 4 ベータ版をインストールしないと、数式の読み上げは動作しません。
    http://www.dessci.com/en/products/mathplayer/download.htm
    この機能に関して、NVDA 日本語版は独自のオプションを追加したので、コメントしておきたいと思います。
    NVDA 日本語版の説明
    https://www.nvda.jp/nvda2015.2jp/ja/readmejp.html#toc26
    からまず引用します:
    5.2.14. 数式を英語で読み上げる
    「数式を英語で読み上げる」オプションの初期値はチェックされています。
    MathPlayer がインストールされていて、このオプションがチェックされている場合、コンテンツの言語属性や NVDA の設定に関わらず MathML で記述された数式は英語で読み上げます。
    このオプションをチェックなしにすると、コンテンツや設定によって MathML の数式が日本語で読み上げられる場合があります。
    しかしこのとき、数式の対話的ナビゲーションを実行すると
    “No navigation files for this speech style in this language”
    と通知されて操作ができない場合があります。
    この問題についての詳細はチケット35208 および本家チケット #5126 を参照してください。
    日本語チームチケット 35208
    https://osdn.jp/ticket/browse.php?group_id=4221&tid=35208
    本家チケット 5126
    http://community.nvda-project.org/ticket/5126
    数式を読み上げるためのテキスト化の処理は NVDA ではなく MathPlayer に実装されています。
    実は MathPlayer 4 自身が音声エンジンと点訳エンジンを内蔵しており、スクリーンリーダーがなくても動作します。
    点字は MathPlayer が Nemeth コードへの変換を行っているようです。
    ただし NVDA と組み合わせて使う場合は MathPlayer 内蔵の音声エンジンは使われません。
    MathPlayer は Internet Explorer のプラグインとして動作しますが、Firefox で MathML を読み上げるときにも、NVDA は内部的に MathPlayer のエンジンを呼び出しています。
    MathPlayer をインストールすると Windows のコントロールパネルに MathPlayer の設定をするダイアログが現れます。
    そこに数式を読み上げる言語の設定オプションもあります。
    しかし NVDA が MathPlayer を通じて数式を読み上げるときに、数式をどの言語で読み上げるか、という設定は、私が確認したかぎりでは、あまりうまく制御できません。
    HTML で言語属性がどのようにマークアップされているか、
    あるいは NVDA の音声設定
    「自動言語切り替え」
    「記号と文字の説明に音声の言語を使用」
    などのオプションが、数式の読み上げに影響を与えるようです。
    日本語 Windows で NVDA を使っていれば、 MathML コンテンツは通常、日本語で読み上げられます。
    しかし、上記に引用した説明にも書いたとおり、 MathPlayer の制約で「対話的なナビゲーション」(NVDA+Alt+M)が正しく動作しない場合があります。
    これは私が頑張って追求したのですが、 NV Access の判断は MathPlayer の不具合なので NVDA は直さない、ということでした。
    2015.2 の重要な新機能のひとつが日本語環境でうまく使えない、という事態を避けるために、NVDA 日本語版においては、「数式を英語で読み上げる」オプションを提供して、デフォルトでは
    「数式は英語で読み上げるけれど NVDA+Alt+M は確実に使える」
    という状態にしました。
    例えば JTalk で音声設定「自動言語切替」を有効にしていると、数式の部分だけ eSpeak の英語の声で読み上げる、という状況を確認していただけるはずです。
    一方で、NVDA+Alt+M の動作は不完全かも知れないが、日本語環境では数式も日本語で読ませたい、という場合は、この日本語設定「数式を英語で読み上げる」をチェックなしにしていただくと、本家版 2015.2 と同じ動作になります。
    ミツエーリンクスさんのブログには、数式の日本語での読み上げには不自然なところがある、というご指摘も書かれています。
    これは MathPlayer 自身に「数式を日本語でどう読み上げるか」という処理が入っているため、 NVDA 側では改善できません。
    数式の日本語での読み上げをもっと自然にすること、日本語でナビゲーションが使えるようにしていただくこと、などの件について MathPlayer 開発元である Design Science へのフィードバックも重要と思います。
    MathPlayer の開発チームには日本の数式アクセシビリティ研究者のお名前も挙がっているので、きちんと問題提起すれば改善されるのではないかという期待もあります。
    http://www.dessci.com/en/products/mathplayer/tech/credits.htm
    NVDA の数式対応についての Design Science と NV Access の協業は、今年3月に正式発表されましたが、現在もまだ MathPlayer 4 がベータ版として配布されている状態なので、今後も状況が変化していくと思います。
    まずは日本のコンテンツ制作者の皆様にアクセシブルな MathML コンテンツのブラウズ環境を体験していただき、適切なマークアップ方法についてご議論いただくために、NVDA 2015.2 の新機能を体験していたければ幸いです。
    追記
    https://osdn.jp/projects/nvdajp/wiki/MathML に私が検証に使っているMathMLコンテンツのリンク集を作りました。ご利用ください。