6月20日に NVDA ミートアップ東京 2015.2 を開催しました。
多くの人にお集まりいただきありがとうございました。
私の使ったスライドは下記の通りですが、すこし詳しくコメントします。
まず、訂正とお詫びがあります。
過去に「NVDA日本語版の更新チェックのアクセス統計」を紹介したことがありますが、私の作業に間違いがあり、実際のアクセスのおよそ2倍の数字を間違って報告していたことがわかりました。
あらためて今回訂正したグラフをスライドで紹介しましたが、最新のデータは、1日平均386人のユーザーがいらっしゃる、という状況です。
間違った数字を出してしまって申し訳ありませんでした。
しかし、正直なところ「700人以上のユーザーがいらっしゃるわりには手応えがないなあ」とも思っていたので、ある意味で400人弱は妥当な状況だと感じています。
ひきつづき、より多くのユーザーに使っていただけるように努力を続けたいと思います。
NVDA 日本語チーム役員会は2012年より2年の任期で活動し、現在ちょうど3年、つまり2期目の前半1年が終了したところです。
次回はミートアップのかわりに「NVDAワールド2015東京」を9月12日に開催し、年末に「NVDAミートアップ東京2015.4」を開催する予定です。
私はアンカンファレンスの時間を使って3つの話題を紹介しました。
最初は NVDA Remote Access の実演をしました。
このアドオンは現在は出資者向けのベータ版という状態で、一般のユーザーはまだ入手できません。
まだ未完成なところも多いのですが、実際に会場で2台のコンピュータを使って実演しました。
遠隔サポートやサーバー管理、仮想マシンの操作などに使えるのではないか、という意見を聞くことができました。
2番目は 2015.2 の新機能の紹介と、翻訳しながら私が考えたことをお話しました。
ウェブページのCSSで指定された色の読み上げが改善されたので、「書式情報」で色の通知を有効にして実演しました。
色の名前の翻訳では「日本語としての自然さ」よりも「ウェブ制作者の意図」を重視することにしました。
例えば「Dark Goldenrod」を選んだウェブ制作者は「ダーク・ゴールデンロッド」という名前を意識しているはずで、スクリーンリーダーのユーザーから「この金色みたいな色の画面要素が」などという問い合わせを受けると、かえって困ってしまうのではないか、と考えました。
現在の NVDA では「Dark Goldenrod」は「暗いゴールデンロッド色」という翻訳にしてあります。
実際にブラウザで読み上げて動作を確認していると「暗いゴールデンロッドの色」のように「の色」で統一するのがよいかと思い始めています。
Excel のグラフと数式はスライドで紹介したとおりなのですが、Excel で NVDA+F7 を押すと要素リストが表示されないで「スペルチェック」が実行されてしまうことがあります。
他のユーザーから報告されていない現象なのですが、気になっているので、情報をお待ちしています。
最後に Windows 10 の実演。
NVDA をメインのスクリーンリーダーとして、Firefox をデフォルトのブラウザとして使える人であれば、現状でも Windows 7 からの移行は可能なのではないかと思います。
ただ Windows 10 のナレーターの日本語の読み上げはまだ私はきちんと動作確認できていません。
もちろん NVDA 以外のスクリーンリーダーが Windows 10 に対応するまで移行できないという人も多いでしょうから、「壊れてもよい環境」を用意して、自己責任でお願いします。
仮想デスクトップはキーボードだけで操作でき、ほぼスクリーンリーダーで読み上げできています。
スタートメニュー、新しいタスク切り替え、新しいウェブブラウザがきちんと対応するのは NVDA 2015.3 からです。
おそらくリリースは9月上旬のイベントの時期になるでしょう。
Windows 10 がリリースされる7月29日前後には、本家の master ブランチに基づく日本語公開ベータ版をリリースして、日本からも 2015.3 正式版に対して積極的なフィードバックをしていきたいと思い始めています。
追記:Windows 10 紹介の録音を公開しました。
タグ: nvda
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NVDA ミートアップ東京 2015.2 の報告
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NVDA 2015.2 の数式対応
NVDA 2015.2 の数式対応について、ミツエーリンクスさんのブログで解説されています。
http://www.mitsue.co.jp/knowledge/blog/a11y/201506/17_ 1000.html
NVDA 2015.2 ユーザーガイドにも上記記事にも書かれているとおり、MathPlayer 4 ベータ版をインストールしないと、数式の読み上げは動作しません。
http://www.dessci.com/en/products/mathplayer/download. htm
この機能に関して、NVDA 日本語版は独自のオプションを追加したので、コメントしておきたいと思います。
NVDA 日本語版の説明
https://www.nvda.jp/nvda2015.2jp/ja/readmejp.html#toc26
からまず引用します:
5.2.14. 数式を英語で読み上げる
「数式を英語で読み上げる」オプションの初期値はチェックされています。
MathPlayer がインストールされていて、このオプションがチェックされている場合、コンテンツの言語属性や NVDA の設定に関わらず MathML で記述された数式は英語で読み上げます。
このオプションをチェックなしにすると、コンテンツや設定によって MathML の数式が日本語で読み上げられる場合があります。
しかしこのとき、数式の対話的ナビゲーションを実行すると
“No navigation files for this speech style in this language”
と通知されて操作ができない場合があります。
この問題についての詳細はチケット35208 および本家チケット #5126 を参照してください。
日本語チームチケット 35208
https://osdn.jp/ticket/browse.php?group_id=4221&tid=35208
本家チケット 5126
http://community.nvda-project.org/ticket/5126
数式を読み上げるためのテキスト化の処理は NVDA ではなく MathPlayer に実装されています。
実は MathPlayer 4 自身が音声エンジンと点訳エンジンを内蔵しており、スクリーンリーダーがなくても動作します。
点字は MathPlayer が Nemeth コードへの変換を行っているようです。
ただし NVDA と組み合わせて使う場合は MathPlayer 内蔵の音声エンジンは使われません。
MathPlayer は Internet Explorer のプラグインとして動作しますが、Firefox で MathML を読み上げるときにも、NVDA は内部的に MathPlayer のエンジンを呼び出しています。
MathPlayer をインストールすると Windows のコントロールパネルに MathPlayer の設定をするダイアログが現れます。
そこに数式を読み上げる言語の設定オプションもあります。
しかし NVDA が MathPlayer を通じて数式を読み上げるときに、数式をどの言語で読み上げるか、という設定は、私が確認したかぎりでは、あまりうまく制御できません。
HTML で言語属性がどのようにマークアップされているか、
あるいは NVDA の音声設定
「自動言語切り替え」
「記号と文字の説明に音声の言語を使用」
などのオプションが、数式の読み上げに影響を与えるようです。
日本語 Windows で NVDA を使っていれば、 MathML コンテンツは通常、日本語で読み上げられます。
しかし、上記に引用した説明にも書いたとおり、 MathPlayer の制約で「対話的なナビゲーション」(NVDA+Alt+M)が正しく動作しない場合があります。
これは私が頑張って追求したのですが、 NV Access の判断は MathPlayer の不具合なので NVDA は直さない、ということでした。
2015.2 の重要な新機能のひとつが日本語環境でうまく使えない、という事態を避けるために、NVDA 日本語版においては、「数式を英語で読み上げる」オプションを提供して、デフォルトでは
「数式は英語で読み上げるけれど NVDA+Alt+M は確実に使える」
という状態にしました。
例えば JTalk で音声設定「自動言語切替」を有効にしていると、数式の部分だけ eSpeak の英語の声で読み上げる、という状況を確認していただけるはずです。
一方で、NVDA+Alt+M の動作は不完全かも知れないが、日本語環境では数式も日本語で読ませたい、という場合は、この日本語設定「数式を英語で読み上げる」をチェックなしにしていただくと、本家版 2015.2 と同じ動作になります。
ミツエーリンクスさんのブログには、数式の日本語での読み上げには不自然なところがある、というご指摘も書かれています。
これは MathPlayer 自身に「数式を日本語でどう読み上げるか」という処理が入っているため、 NVDA 側では改善できません。
数式の日本語での読み上げをもっと自然にすること、日本語でナビゲーションが使えるようにしていただくこと、などの件について MathPlayer 開発元である Design Science へのフィードバックも重要と思います。
MathPlayer の開発チームには日本の数式アクセシビリティ研究者のお名前も挙がっているので、きちんと問題提起すれば改善されるのではないかという期待もあります。
http://www.dessci.com/en/products/mathplayer/tech/ credits.htm
NVDA の数式対応についての Design Science と NV Access の協業は、今年3月に正式発表されましたが、現在もまだ MathPlayer 4 がベータ版として配布されている状態なので、今後も状況が変化していくと思います。
まずは日本のコンテンツ制作者の皆様にアクセシブルな MathML コンテンツのブラウズ環境を体験していただき、適切なマークアップ方法についてご議論いただくために、NVDA 2015.2 の新機能を体験していたければ幸いです。
追記
https://osdn.jp/projects/nvdajp/wiki/MathML に私が検証に使っているMathMLコンテンツのリンク集を作りました。ご利用ください。 -
NVDA 2015.2jp リリースおよび NVDA 関連イベントのお知らせ
NVDA 日本語チームから NVDA 2015.2jp のリリース、NVDA ミートアップ東京 2015.2 の再度のご案内、そして NVDA ワールド 2015 東京 開催決定のお知らせです。
無料(オープンソース)の Windows 用スクリーンリーダー NVDA (NonVisual Desktop Access) の日本における開発コミュニティである NVDA 日本語チームは、2015年6月15日に NVDA 2015.2jp をリリースしました。
ダウンロード
http://i.nvda.jp/
NVDA日本語版 ダウンロードと説明
https://www.nvda.jp/
Windows 8.1, 8, 7, Vista, XP(SP3) の32ビット版および64ビット版に対応しています。
Windows 8 以降ではタッチ操作が利用できます。
NVDA 日本語版のライセンスは GPL v2 です。
オーストラリアの非営利法人 NV Access がリリースする NVDA 本家版は、Michael Curran, James Teh の両氏が中心となって開発を行い、世界のコミュニティが支援しています。
NVDA は多くのアプリケーションに対応し、インストール不要で利用できるポータブル版、アドオンによる機能拡張など、さまざまな特長を備えています。
NVDA 日本語チームがリリースする NVDA 日本語版は、NVDA 本家版に日本語の音声エンジンと点訳エンジンを追加するなど、日本語 Windows 環境のための改良を行っています。
NVDA 日本語版 2013.3jp 以降がインストールされ、「自動的に確認してNVDAを更新」を有効にしている場合は、このリリースを新しいバージョンとして通知します。
このリリースは NVDA 本家版 2015.2 に基づいています。
2015.2 の改良点は、Microsoft Excel のグラフ読み上げ対応、数式コンテンツ(MathML)への対応などです。
以下は日本語版 2015.2jp での変更点の概要です。
(1)
日本語入力で変換前文字のキャレット移動が「空行」と通知される不具合への対応
(2)
BrailleNote 46C/46D でタッチカーソルを押すとエラーになる不具合への対応
(3)
更新チェックの安全な通信(HTTPS)への移行
(4)
日本語設定「ヘルプを独自のウィンドウで開く」を無効にできるオプションの追加
(5)
音声設定の既定値「大文字にビープを付ける」をチェックなしにして「大文字の前に大文字と読む」をチェックする変更
(6)
日本語点字出力の改善
(7)
ユーザーガイドの日本語表記の改善
(8)
日本語設定「数式を英語で読み上げる」オプションの追加。
これは NVDA 本家版および MathPlayer の実装で、NVDA の言語が日本語のときに数式コンテンツの操作ができない問題に対応するための変更です。
詳細は「NVDA日本語版の説明」をご確認ください。
NVDA日本語版の説明 バージョンごとの変更点
https://www.nvda.jp/nvda2015.2jp/ja/readmejp.html#toc64
NVDA最新情報(本家版のバージョンごとの変更点)
https://www.nvda.jp/nvda2015.2jp/ja/changes.html
NVDA ミートアップ東京 2015.2 では今回リリースした NVDA 日本語版 2015.2jp の概要とNVDA 日本語チームの活動報告、アンカンファレンスを行います。
NVDA と Windows スクリーンリーダーの情報交換の場としてぜひご参加ください。
日時:2015年6月20日(土曜)13時から17時
場所:東京都新宿区 日本盲人会連合 日本盲人福祉センター
詳細と参加のお申し込み方法は下記でご確認ください。
NVDAミートアップ東京 2015.2 (connpass)
http://nvdajp.connpass.com/event/12178/
最後に、NVDA 日本語チームは、2013年、2014年に続いて、2015年も下記の通り「NVDAワールド」を開催することをお知らせします。
イベント名:NVDAワールド 2015 東京
日時:2015年9月12日(土曜)10時より
場所:東京都港区虎ノ門で調整中です。
詳細は下記のサイトでお知らせします。
NVDAワールド 2015 東京
https://www.nvda.jp/2015/nvda-world-2015-tokyo.html
(以上)