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  • デザイニング Web アクセシビリティ

    2015年7月に出版された「デザイニング Web アクセシビリティ」を紹介します。
    私が開発・翻訳に関わっているオープンソースのスクリーンリーダー NVDA は、アクセシビリティに関わる開発者・制作者のためのツールになってほしい、そして日本でもこういう「Web アクセシビリティの定番教科書」(になるはずです、この本は)が取り上げるソフトウェアにならなくてはいけない、という思いを私は持ち続けてきました。

    手元に届くまで、もし NVDA の N さえ出てこなかったらどうしよう、とドキドキしていたのですが、心配無用。
    冒頭の「スクリーンリーダー」の説明:
    「日本国内では PC-Talker, JAWS, NVDA などがよく使われています」
    なんと「日本国内でよく使われているスクリーンリーダー」とまで言っていただきました。
    たいへん光栄です。
    まだまだ「よく使われている」かどうかは私自身が疑問ですが、日本国内で「よくインストールされている」スクリーンリーダーであることは間違いないでしょう。なんせ無料だし、3ヶ月に1回バージョンアップしてますからね。。
    一方で、この「よく書かれた教科書」は、スクリーンリーダーの解説書でもなければ、スクリーンリーダーでのユーザー体験がすべてであると書かれているわけでもありません。
    支援技術への対応やその検証は、本書で解説される「サイト製作プロセス」の後のほうの一要素でしかありません。
    それどころか本書は全体を通じて、HTML や CSS フレームワーク、JavaScript ライブラリなどの具体的な記述など、実装の話は少ししか出てきません。
    WCAG 2.0 や JIS X 8341-3 と同じく「特定の技術や実装に依存しない記述」になっていると言えます。
    (そのかわり関連書籍「コーディング Web アクセシビリティ」が WAI-ARIA を扱っています)
    ですが、ユーザー体験というレベルでは、アクセシビリティがどのように損なわれるのか、という問題が非常に具体的に扱われていて、その問題ごとに適切な解決アプローチが紹介されています。
    なので本書は WCAG 2.0 や JIS X 8341-3 のよい解説書、アクセシビリティガイドラインに対応するための実践書になっています。
    (「WCAG 2.0 と本書内容の対照表」が巻末についています)
    私はWebサイト制作者としてのスキルやキャリアが足りないので、本書を読みながら、世の中のWeb製作の現場、社内や顧客とのやりとりなどを想像するのが面白いです。
    さすがに2015年の現在、アクセシビリティというものに対する世の中の認知は、多少は高まってきたのだと信じています。
    おそらく「単なる悪意や無理解でアクセシビリティが悪い」ということは、多少は減ってきたのだと思います。
    しかし「つい他のことに気を取られてアクセシブルでなくなってしまっている」というケースはむしろ多くなっているのではないか、ということを、本書を読んで感じています。
    その最たる例が「いわゆるセキュリティ面の要求に応えていたらアクセシブルではなくなった」というケースでしょう。
    ロボットを排除するための画像認証(CAPTCHA)、コンテンツのコピー防止のための右クリック対策、不正アクセスを防止するための「戻るボタン」抑止やセッション時間制限、フォーム入力の過剰なエラー処理、など、おそらくは「悪意からこうなった」というよりも「セキュリティの要求に(アクセシビリティの視点抜きに)対応してしまった」というケースが増えているのだと思います。
    本書が「本気」で書かれているのはまさにこの部分で、こういう課題をどう考えれば正しいのか、筋がよいのか、といったことが議論されています。
    CMSの問題、ポップアップメニューの操作、といった問題も「運用コスト」「開発効率」「リッチな体験」「モバイルデバイスの画面設計」などなど、「つい他のことに気を取られて失敗」というパターンに分類できそうです。
    「正しいことを正しくやる」ことがずっと変わらないとしても、それを学ぶために必要な教科書は「こういうことに気をとらわれるとこういう失敗がおきる」ということを、時代に合った内容で伝えていく必要があるんでしょうね。。
    アクセシビリティ、あるいはマシンリーダブルであることの重要性をいくら説いても「ついそこから逸脱させてしまう他の要因」は手を変え品を変え、次から次へと登場してくるのでしょう。
    なので、こういう内容の本にご興味があるなら、早めに手にとって実践されることをお勧めします。
    ひさしぶりに書籍の紹介をした理由ですが、実は自分用に1冊購入して、その後で AccSell メールマガジンの読者プレゼントでもう1冊いただきました。2冊目は人に配るために使わせていただきます。
    そして AccSell のポッドキャスト 8月19日ごろ配信の第75回には、私が出演して NVDA の話をします。
    NVDA 関連の告知を(前の記事の繰り返しですが)もう2つ:
    NVDA ワールド 2015 東京(9月12日)のプログラムがほぼ確定しました。
    特別講演として LibreOffice 日本語チームの おがさわら なるひこ さんをお招きします。
    NVDA でも利用できる無料のオフィススイート LibreOffice の魅力、アクセシビリティ対応とコミュニティ運営について伺う予定です。
    とても楽しみです。
    翌日の9月13日は AccSell Meetup 010 『Web制作者のためのNVDA入門』 を担当します。
    「デザイニング Web アクセシビリティ」で書かれていること、実際に試してみましょう。
    どちらもよろしくお願いします。

  • PyCon mini Hiroshima など

    地域 PyCon mini を広島で という話を2月14日にしゃべってから、いろいろな方にご相談して、ご協力いただいています。
    日程と場所が確定したので、今日の LT 駆動開発17 で紹介しました。
    PyCon mini Hiroshima 2015
    主催:PyCon mini Hiroshima 2015 実行委員会
    開催日:2015年11月22日(日曜)
    会場:サテライトキャンパスひろしま
    私は実行委員長を務めることになりました。このイベントについての詳細はいずれまたお知らせします。
    今日のLTでは、PyCon JP 行動規範に始まり、整備されたマニュアルやツールなど、イベントの運営についていろいろ学ぶことがある、という話をしました。
    以下はLT駆動でしゃべらなかったですが、9月の東京でのイベントのお知らせの続報。
    9月12日(土曜)「NVDAワールド 2015 東京」参加申し込みの受付を開始しています。
    翌日も東京ですが、9月13日(日曜)『Web制作者のためのNVDA入門』というイベントで講師を担当します。

  • NVDA の Windows 10 対応

    NV Access から NVDA の Windows 10 対応について下記の告知が出ています。
    http://www.nvaccess.org/win10/
    2015年8月24日に更新された情報のおおまかな日本語訳です:
    (ここから)
    Windows 10 の多くの機能について、NVDA は 7 や 8.1 と同等に機能しますが、熟練ユーザーでない人は Windows 10 へのアップグレードや Windows 10 プリインストールのマシンの購入について、次のお知らせをするまで、しばらくお待ちください。
    熟練ユーザーで NVDA の Windows 10 対応をテストしたい場合は、実験用の環境をご用意ください。そして以下をご確認ください。
    * 常に最新の NVDA をご利用ください。最新は NVDA 2015.3 です。
    (訳注:本家 2015.3 に対応する 日本語版 2015.3jp を2015年8月25日に公開しました)
    * Microsoft Edge ブラウザへの実験的な対応は 2015.3 で導入されました。しかし、致命的な問題が残っており、日常の利用に耐える状況ではありません。
    原因は Edge 側の実装にあり、 NV Access は Microsoft がこの問題を将来の Windows Update で修正できるように協力をしています。
    * Edge が既定のWebブラウザとなっている場合は、既定のブラウザを Firefox や Internet Explorer に変更してください。
    * Edge が既定のPDFビューワーになっている場合は、既定のPDFビューワーを Adobe Reader に変更してください。
    * コルタナや Windows ストアなど Windows 10 用に開発されたアプリは、内部で Edge ブラウザのエンジンを使用しており、操作が適切に行えない可能性があります。
    * Windows 10 標準のメールアプリは現在のバージョンではアクセシブルではありません。他の電子メールアプリをご利用ください。
    * NVDA を Windows 10 で使用すると、以前のバージョンの Windows に比べて応答が遅くなる場合があります。例えばファイル エクスプローラーの読み上げがもたつく、Outlook 2013 のメッセージリストで反応が非常に遅い、といった状況です。NVDA の将来のバージョンではこの問題への対策を行う予定ですが、一部の問題については Microsoft のソフトウェアの修正が必要です。
    * Windows 10 へのアップグレードが開始されると、アップグレードの最後の段階を終了させる場面では NVDA を実行することができません。
    ただしこの段階で Windows+Enter を押してナレーターを起動し、アップグレードを終了させることができます。
    アップグレードが完了したら NVDA は通常どおり利用できます。
    (訳注:アップグレード中のナレーター利用について日本語での動作は確認していませんが、Windows 10 には 8 や 8.1 と同様に日本語音声合成が搭載されていることを確認しています)
    (ここまで)
    追記:Windows 10 のナレーターについてMLでご教示いただいたところでは、アップデート中にナレーターで容易に操作が可能とのことです。
    追記(8月1日):本家 master に Edge ブラウザ対応がマージされました。この本家 master に基づいて NVDA 日本語チームは日本語公開ベータ版 2015.3jp-beta-150731 を公開しました。www.nvda.jp をご参照ください。ただし現時点での Edge の使い勝手は上記のアナウンスのとおりであるとご理解ください。
    追記(8月25日)本家の記事の更新に対応して本記事を更新しました。