写真 青い空と雲と建物と木々の緑

nishimotzの日記

  • つぶやきの捕まえ方

    今年3月に電子情報通信学会の総合大会とHCGシンポジウムに参加していたとき、Twitterでイベントの中継を試してみて「Twitterの欠点は『落ちる』こと」だと思った。半年が過ぎて、これだけ普及しても、まだその不安は払拭されていない。

    Twitterの利点の一つは「国際化されていること」だ。同じシステムの中で母国語と外国語の発言が混在すると、短波ラジオやアマチュア無線のような感覚がある。最近ちょくちょくログインするようになったFacebookもそうだが。

    そして発言したことが「ちゃんとWeb検索エンジンに引っかかること」がよい。自分のブログやWebサイトを更新したときに、TwitterでそのURLをお知らせすることが、ちゃんとSEOに貢献している(ような気がするが、そのうち何らかのSEO対策が講じられるかも知れない)。

    一方で、いろんな人をフォローしてみて、情報発信の仕方もさまざま、捕まえ方もさまざまだと感じる。

    勝間さんと広瀬さんをフォローしたら、このお二人が会話しているところにいろんな人が出入りする、その様子を立ち聞きしている感じになる。高校生のころやっていたアマチュア無線で「電波の人気者たちの会話」にチューニングしている、あの感覚がある。

    津田さんをフォローすると、津田さんの参加する会合をリアルタイムで受信できる。自分がいまいる場所で、同時にもう一つのイベントに参加している、そんな不思議な感覚が得られる。

    SourceForge.jpは、誰かがソフトウェアをリリースすると、自動的にTwitterにメッセージが流れる仕掛けらしい。先日の連休に自分がgalateaからリリースを出してみて、その情報が瞬時に流れてきて、そのことが確認できた。

    企業のアカウントも使い方はさまざま。毎日新聞は担当ごとにアカウントを使い分けているらしい。カブドットコムは一つのアカウントで複数の担当者が署名入り発言。

    佐々木俊尚さんのように「つぶやき」にソーシャルブックマークの役割を見いだしている方もおられる。その一方で、もっとも古典的な使い方である「ナントカなう」発言に徹している人たちもいる。

    情報発信としては中途半端なコンテンツをあえて許容するために、140文字という縛りがある、と思われる。明確な目的を持った使い方にとっては、その縛りはやはり中途半端だ。だがその縛りは「受信者への配慮」だと考えなくてはならない。受信者は情報の洪水に遭遇すると入力を遮断してしまうのだ。

    複数人での情報発信のためには、アカウントを共有するか、ハッシュタグなどの検索を活用するか、なにか工夫が必要になる。一対一のやりとりについても、いまだに私はダイレクトメッセージや @ つきの発言に戸惑ってしまう(2つのアカウントを同時に使って一通り実験すれば腑に落ちるのだろうが)。

    いろいろな面においてシステムの未熟さ(将来のさらなる発展の可能性)を感じる。しかしながら、未熟さを逆手にとって、熱い盛り上がりを演出する、そういうサービスの育て方もあるのだ、と気づかせてくれる。かつてはグリーやミクシィもそんな場所だった、かも知れない。

    私はしばらくTwitterは「個人がニュースをリリースする手段」あるいは「RSSを配信することの代替」として使いたい。ときどき「イベントを実況中継する放送ツール」として使うつもりだ。私が日頃関わっている活動に関連して、障害を持つ方が学会に参加するための支援や情報保障に、何か役立たないだろうか、と常々考えている。ちなみに @nannohi によれば10月1日は「福祉用具の日」「補助犬の日」「国際高齢者の日」だそうだ。

    PCから普通に twitter.com を使い、携帯電話からモバツイを使っているが、フォローする相手が3桁・4桁になったら、標準的な使い方では破綻するだろう。受信の仕方もいろいろ工夫してみたいのだが、すでにさまざまな閲覧ツールがリリースされているらしく、いろいろ試すのは楽しいような面倒くさいような。。

    最近「質の高いフォロワーを増やす」というテーマの記事が(どなたかのつぶやきのおかげで)目に入った。私はフォローされるとたいていフォローし返しているので「フォロー数よりフォロワー数が多い」人にはなかなかなれそうにない。

    私の考えでは Twitter は「放送的なメディア」なので、たぶんポッドキャストやラジオ番組と同じだと思う。つまり「大事な情報源に絞り込む」ことよりも「不快な情報源を遮断する」ことになりそうだ。「この人をフォローし続けると大事な情報が得られなくなる」と思った人をフォローから外すことになるだろう。ヘビーローテーションしたいアルバムや放送局は「耳障りなトークや音楽が出てきにくい」という理由で選ばれるのだと思う。

    逆に言うと「自分がノイズ発生源にならない」ことを心がけるべきだ。自分がどんなフォロワーを持っているのかを意識したうえで「自分のフォロワーにとって目障りな情報を自粛する」ということが、気持ちよく情報を共有するコツではなかろうか。

    「棒読みちゃん」というソフトを見つけた。前からやってみたかった「音声合成で友達のつぶやきを聞き流す」ということが実現できる。まさに「ソーシャルネットワーク型ラジオ番組」だ。いろいろ課題があるとは思ったが、ちょっと未来を垣間見ることができて嬉しかった。

    • 追記(2009-10-05) : sourceforgejp のリリース告知機能なのですが「パッケージ」「リリース」「ファイル」のすべてを「秘密」というステータスにしていても、ファイルをアップロードしたときに tweet が流れるようです。ちょっとどうかと思いますが。。
  • Panasonic と Vine

    2008年1月に Panasonic Let’s Note でひどい目にあった。

    乱暴に言えば、Windows Update がパソコンを壊したのだ。日本でしか売れていないマイナー機種は、もはや Microsoft で動作検証されてすらいない、という事実に気づくきっかけになった。

    長年使い続けた Let’s Note が、気づいたら「高品質の代表」ではなくなっていたことに愕然とした。「グローバルでない製品を使うのはリスク」という認識を持つようになった。

    2008年4月に Lenovo ThinkPad X300 に乗り換えた。(高かったが。。)中国メーカーに事業譲渡されて劣化したという意見もあるが、それを言うなら Apple 製品も製造は中国や台湾だ。本当はトラックポイントがお気に入りだったし、PgUp PgDn のあるキーボードが使いたかったので、乗り換えて満足した。

    もちろん高品質と手放しで喜べたわけではなく、まず Windows XP にダウングレードしたあと、Muteボタンがうまく動かなくて苦労した。調べたらウイルスバスターとの互換性問題だった。(ウイルスバスターがガラパゴスだった)試したら Microsoft OneCare がよかったので、ウイルス対策ソフトの乗り換えを行った。(販売終了になってしまったのが残念だが)

    今年の夏ごろから、バッテリーの故障とキーボードの故障に相次いで見舞われた。しかし、Lenovo は部品を注文して自分で取り替えればたいていのことはできるので、あまり悩むこともなく、時間は無駄にならなかった。

    さすがに Let’s Note より重たいけれど、慣れてしまった。内蔵 DVD ドライブを使う機会がほとんどないので、セカンドバッテリに換装した。

    SSD 64GB はちょっと物足りないが、逆に大事なデータをこまめにバックアップする習慣がついたから、必ずしも悪いとは言えない。それでも VMWare で Ubuntu を使うには少し足りないが。。。1440×900 の画面が使えるのはありがたい。

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    私が Let’s Note T1 に飛びついたのは 2003 年ごろで、当時は周りの人はみんなバイオノート派だったので珍しがられた。

    いまや Let’s Note でない人を探す方が難しいが、Let’s Note 派の人が「原因不明のトラブル」に見舞われている率が去年くらいから高まっているように感じる。

    私の職場でも「異常な温度上昇」「電源トラブル」などなど。

    先日は私が座長をしていた学会のセッションで、自分の発表を始めようとしてプロジェクターにつないだ人が、突然 Let’s Note の電源が入らなくなった。おかげで10分くらい時間が無駄になった。けっきょくバッテリーを外して付け直したら復旧したのだが。

    Twitter の kazuyo_k さんもデバイスドライバーの相性でそうとうお困りだった様子だが、私が去年1月に経験したトラブルのことを思い出すと、最近の Panasonic にいかにもありそうなトラブル、という気がする。

    こうしてグローバルでない商品はいつのまにか腐っていくのだな、という実感を持っている。

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    すこし前に、ある人にGalateaの動作確認を頼まれてVine Linux 5の64bit版を仕方なく入れてみた。

    そもそも1年前までGalateaはVine Linuxを動作対象にしていた。自分も日常的にVineを使っていた。Vineは「日本語環境が充実している」のが売りだった。日本語フォント、かな漢字変換システム、日本語の入力がちゃんとできる Emacs エディタや、日本語の論文作成ができるようにチューニングされた LaTeX などなど。

    1.x の時代(10年前だ)には Linux はカーネルが 1.0 系だった。そもそも Linux そのものが「枯れていなかった」。NFSサーバを運用してみたらファイルがぶっ壊れて、仕方なく Solaris に戻したこともあった。サーバとして、デスクトップ環境として、まともに使えるようになったのは Vine 2.5 あたりからだった。商用版が発売され、日本ではそれなりに普及していたはずだ。

    Vine 2.x, 3.x, 4.x とずっと使い続けた感想として、明らかにこの数年、Vineは「腐って」きた。3.x の時代には「日本語のフォントが間違っている」ことがあった(教授の名前の1文字だったので、とても困った)。開発者グループに連絡をしたがすぐには直してもらえず、仕方なく某商用 TrueType フォントに差し替えて使った。

    昨年6月にはサーバの更新で Vine 4.2 を使おうとして、NIS サーバの設定ファイルにバグを見つけた。そのとき気づいた。「もう誰も Vine なんて使ってないんじゃないか」と。

    ちょうど Ubuntu Linux が台頭しはじめていた。あちこちで「Ubuntu があれば Windows はいらない」と言われ始めるほど、高い完成度を誇り始めていた。

    Ubuntuでは国際化されたバージョンに「日本特有のパッケージを追加して使う」という考え方になっている。コアの部分は世界中で使われ、不具合がないようにグローバルに検証されているのだ。

    Linux カーネルの更新に1年に2回追従していた Ubuntu と異なり、Vine は(もともと「保守的」な開発方針であったため)カーネルが古すぎて新しいハードウェアで動かない、ということが当たり前だった。自分で差し替えることはできたが「だれも使っていない使い方」を試行錯誤するのは苦痛だった。

    GalateaはターゲットをUbuntuに切り替えた。自分の(職場の)Linux環境も1年前からUbuntuへの移行を進めた。腐ったLinuxと心中することを回避できた。

    2年以上かかって先日やっと Vine 5 がリリースされた。頼まれて仕方なくいじってみたが、駄目だ、と思った。Vine で XXX が動かない、と聞かれても、やっぱり「それは Vine が腐っているからだ」と答えるしかない。

    ちなみに32bit版も試してみたら、多少まともだった。だが、ダウンロードのデフォルト選択肢が64bit版だったことは理解に苦しむ。

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    私にいろいろ相談してくださった方は、けっきょく Let’s Note で Vine 5 のオーディオデバイスをどうしても認識できない、とのことで、今年は Galatea for Linux の演習を断念されたとのこと。私に言わせれば「最悪の組み合わせ」だ。。

    「グローバルでない製品を使うのはリスク」というのはハードウェアにもソフトウェアにも当てはまりそうだ。

    • 追記(2009-10-01): 上記は私の経験に基づく仮説であり、特定の製品の開発プロセスについては推測に過ぎません。特定の製品が頻繁に故障しているように見えるのは、特定の製品のユーザが圧倒的に多いことによるバイアスかも知れません。また、この記事に関してもう一つお伝えしたいことは「評判は頻繁に変化しうる」ということです。ソフトウェアもハードウェアも現在ちょうど新しいバージョンに変わるタイミングですので、いろいろな方の評価を御確認の上、ご自身でご判断ください。本記事の誤りをご指摘いただいた場合は、お詫びして修正をするつもりですが、本記事をお読みになったことで不利益が生じたとしても責任は負いかねます。御了承ください。
  • HCGシンポジウム準備状況

    私は電子情報通信学会・福祉情報工学研究会(WIT)の副委員長を務めており、障害をお持ちの方を支援する技術に関する研究会活動を、当事者の方に参加していただきながら続けております。

    私たちのWebサイトではこういった活動のノウハウも掲載しています:

    そして私は現在WITからのリエゾン委員として、2009年12月10日(木)~12月12日(土)に札幌コンベンションセンター (札幌市) で開催される「2009年度HCGシンポジウム」のプログラム委員および情報保障を担当しています。

    昨日プログラム編成会議が行われ、研究発表の時間帯がだいたい確定しました。視覚障害、聴覚障害、発達障害、Webアクセシビリティ、高齢者支援などに関する御発表が多数予定されています。その一方で、広く「ヒューマンコミュニケーション」に関する研究発表が一同に会する予定でもあります。非常に興味深い御議論や御交流が期待できます。また講演だけでなくインタラクティブ発表も予定されています。

    約80件の発表申込をいただきました。大変感謝しております。近々プログラムを発表し、参加募集を行い、情報保障の要望の受付を行います。

    詳細は WIT 研究会のサイト、HCGシンポジウムのサイト、そしてこのブログやTwitter (@nishimotz) などでも随時お知らせする予定です。

    特に「情報保障の都合に合わせた運営」を最初から前提にしてしまうのは好ましくありません。できるだけ多くの方に楽しんで参加していただきたいと思っています。

    とはいえ、パラレルセッションやインタラクティブ発表における情報保障については「未知との遭遇」です。インタラクティブ発表については「一人30秒の概要発表」も予定されています。御要望には可能な限り対応したいのですが、幅広く皆様からお知恵をお借りすることもあると思います。

    プログラム作成において以下のようなことを配慮しています。

    • できるだけ Room A に福祉情報関連の発表が集まるようにして、特に、聴覚障害はひとつのセッションにまとめました。
    • WEIMS2009 http://www.mrit.kyushu-u.ac.jp/weims2009/ との日程調整の御要望をいただいたので、WITからの申込という属性がついている発表は、3日目を避けていただきました。
    • 日程については発表を申込された方の個別の要望も基本的にお受けしています。
    • 聴覚障害関係のインタラクティブ発表が複数あります。できるだけ近づけて配置していただくように、配慮をお願いしました。(現時点で発表者の方はみなさま健聴者と伺っています)
    • 車椅子でのインタラクティブ発表を予定しておられる方について、場所の配慮をお願いしています。

    現在のところ下記の方針を考えております。

    情報保障を希望される方への対応方針:

    • なるべく具体的に要望を受け付ける=「どの発表について」「手話と要約筆記のどちらを」希望されるのか(両方、でも構いません)
    • 招待講演や懇親会についても、要望を伺い「事前の要望があれば対応します」と宣言させていただく(通訳者の方の拘束時間は事前に確定する)
    • どういうやり方で情報保障を提供するか、希望された人となるべく密に連絡を取りながら準備を進める(特にインタラクティブ発表についてはWITでは未経験。PC要約筆記が実施できない、などの制約がある)
    • 万が一パラレルセッションの両方で要望が発生した場合は、プログラム委員会にて相談させていただく(情報保障担当者を複数グループ手配することは困難が予想される)

    発表をされる方への対応方針:

    • 実際に要望があった発表については、発表者に事前に連絡し、協力を依頼する。=通訳者に対する事前の情報提供などを協力していただく必要がある

    現在、手話通訳や要約筆記の手配や申込締切などの詳細を検討中です。また、点字版の資料についても準備をする予定です。予稿集は電子データでの出版を予定しています。皆様のご参加をお待ちしております。