投稿者: nishimotz

  • サピエ図書館に思うこと

    本を売って印税を得る権利、買った本を障害の有無にかかわらず読むことができる権利、そして図書館などの公的施設で無料で本を借りて(もちろん障害の有無にかかわらず)読むことができる権利。
    権利と権利はどのようにお互いに尊重され、守られていくのか。。
    2週間前になってしまいましたが「視覚障害者総合情報ネットワーク」(新しい名称「サピエ」)の研修会に参加した際にTwitterでつぶやいた記録を下記にまとめておきます。明日から4月。いよいよ正式に公開されるはずです。
    私は引き続き「地域・生活情報」のシステムやインタフェースのお手伝いをしたり、テキストDAISYの制作・閲覧のためのテキスト音声合成技術のお手伝いをしたりする予定です。
    日本の国会図書館の動向が頻繁に話題になりますが、サピエはこの1年間「活動が国会図書館と重複しないように」という調整をしてきたに過ぎず、本格的な連携については今後議論されていくのではないでしょうか(私はこのあたりにはタッチしていません)。
    つぶやきの再掲になりますが、今回のプロジェクトに関わったことで、視覚障害者が本を読む権利と著者の権利が、著作権法37条によって両立している最前線の現場を知ることができました。その現場がほとんど世の中で知られていないのは、皮肉にも著作権法が厳格に運用されているからだということもよく分かりました。
    「著作権法37条」という特別な世界の中で、それらがボランティアの手で音声やテキストファイルや点字データに変換される。
    その流通もカセットテープからDAISY CDへ、そしてSDカードになり、ブロードバンドで直接ダウンロードできるようになる。世代間の格差。アクセシビリティのデバイドの中に、さらにディジタルリテラシーのデバイドがある。。
    電子書籍という黒船の到来。紙の本や雑誌や新聞が売れないと言われるメディア環境の変化。
    そんな中で、だがやはり現実には、墨字の本が日々世の中に送り出されている。
    実情が広く知られると「じゃあ自分にも何か役に立てるのではないか」と思う方がたくさんいる。
    しかし点訳も音訳も、きちんと講習を受けて、必要な技能を持ち、著作権法を遵守できる組織に属する方々による作業。
    素人が簡単に関われる世界ではない。。
    何年か前にトロンのイベントで坂村さんが「朗読ボランティアをやりたかったが試験で不合格になった。それがイネーブルウェアを始めたきっかけ」と言っておられたのを思い出しました。
    サピエ講習会では「読書のバリアフリー」に関わる方々が、みなさん一生懸命に頑張っておられることを痛感しました。
    その気持ちに触れた自分に何ができるのか、自問する日々です。
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  • 総合大会 福祉情報工学セッション

    電子情報通信学会 総合大会 A-19 福祉情報工学セッション(馬塚先生の講演会の続きの時間帯)の記録です。今年は、東京で単独開催の研究会をやった直後の総合大会でしたが、件数も多く参加者もたくさんいらっしゃって、議論も活発だったと思います。
    一昨年までは総合大会は3月のWIT研究会と連続開催でした。昨年度から総合大会と研究会の開催場所・開催日程が分離され、今年度は12月にまったく新しい合同イベントとしてHCGシンポジウムが行われることになりました。
    来年度は3月にはWIT研究会を行わない予定なので、総合大会はさらに盛り上がるかも知れません。2011年総合大会は3月14日(月)~17日(木)の4日間、東京都市大学 世田谷キャンパス(東京)での開催です。
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  • 言語のメロディを学ぶ

    東北大学で開催されている電子情報通信学会の総合大会にて、イベント企画(講師:馬塚れい子先生、無料公開)のオーガナイザを務めました。
    たまたま、いま読んでいた「散歩学のすすめ」という本でこんなエピソードを読んだばかりです:

    神聖ローマ帝国のフリードリッヒ2世という王様が、「赤ちゃんを大人の会話に触れないように育てたら、何語を話すようになるだろう?」という疑問を持ち、実際にそのような実験を行った。しかし、答えは得られなかった。なぜなら、すべての赤ちゃんが死んでしまったからだ。。

    「散歩学」のすすめ (中公新書ラクレ)
    古川 愛哲
    中央公論新社
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    おすすめ度の平均: 3.5

    4 散歩をする習慣がない人にオススメ!
    5 散歩はビタミン剤
    1 散歩学?

    この「散歩学」の本はなぜか散歩の本なのに「連れと散歩しながら雑談を楽しむ」ことを主張するユニークな本なのですが、ともかく、人間が乳児の時期において言語を獲得するということは、人間の生存に関わる重要な活動であることには違いありません。
    この大仕事を、乳児自身とその親達が、いかにこなしているのか、誰もが興味をおもちではないでしょうか?
    今回は馬塚れい子先生が、直前にアメリカで参加された(成田から仙台に直行してくださったのです!)国際会議の情報を交えて、乳児どころか胎児の言語獲得に関する最新情報までお話してくださいました。
    さらに「最近、乳児の日本語教育や英語教育について、科学的な知見を歪曲しかねない情報がメディアにあふれつつある」ということを懸念しておられる馬塚先生は、そういった誤解をできるだけ丁寧に解こうとして、当初のテーマから大幅に話を広げてくださいました。
    西本のTwitter中継は馬塚先生の弾丸トークを十分にカバーできたとは言えませんが、雰囲気だけでもお伝えできれば幸いです。
    会場には40人くらいの方がお見えになったのですが、本当はこういうイベントこそUstreamなんかで中継したかったです。。
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