投稿者: nishimotz

  • こどもプログラミング教室(PCNひろしま)参加について

    「PCNひろしま」という団体の立ち上げに参加し、こどもたちに「プログラミング専用パソコン IchigoJam」を体験していただくイベントを開催することになりました。
    第1回は私が講師を担当する予定です。開催日は7月30日(日曜)午後1時開始、3時30分終了の予定です。
    会場は「イノベーション・ハブ・ひろしま Camps」です。
    募集開始が7月になっていますが、詳しくは connpass のイベントページをご参照ください。

    経緯

    ここでは、私の視点での IchigoJam の魅力、そしてこの活動に関わることになった経緯を書いておきたいと思います。
    2015年の年末に「こどものプログラミング教室」について相談を受けたことがあり、ちょうど気になっていた教材候補の一つとして2016年1月に IchigoJam を購入してみました。
    いわゆるビジュアルプログラミングの教材もいくつか試してみたのですが、私は IchigoJam がシンプルで扱いやすい、魅力的な教材だと感じました。
    また、ある程度ハードウェアを拡張でき、しかもその扱いも簡単であることから、教育用としてだけでなく、大人のちょっとした電子回路の実験にも使えるように思いました。
    とは言いつつ、最初はいろいろ不満もありました。なぜ PS/2 キーボードなのか、なぜ(アナログの)ビデオ出力なのか、などなど。。
    私の作業場所にはアナログビデオ入力のディスプレイがなかったため、アナログから HDMI に変換するスキャンコンバーターを購入してみたのですが、微妙に信号の規格がずれているらしく、実用的なクオリティの画像を HDMI ディスプレイに出力できませんでした。
    中国からの輸入品で購入した超小型の液晶モニタがちょうどよくて、作業環境はやっと落ち着きました。
    けっきょく去年「こどものプログラミング教室」に私は関わることはなく、しばらく IchigoJam の応用例を参考にして MicroPython + ESP8266 の実験をやったりもしていました。
    今年の2月の「オープンセミナー広島」に jig.jp の福野さん(IchigoJam の開発者)がいらっしゃって、それにあわせて開催された IchigoJam の体験会に立ち会わせてもらいました。
    そして、この教材に対する見方がまた変わりました。
    一言でいえば「こどもの教材としてよく考えて作られている」ということでした。
    ご自身がちゃんとこどもたちと向き合ってプログラミングを教えながら、その経験を踏まえて仕様を改良して、現在に至っているということが理解できました。
    その後、福野さんを広島に招いたり体験会を企画してくださった石崎さんを代表として「プログラミング・クラブ・ネットワーク (PCN)」の広島版を立ち上げることになり、やっといま、第1回イベントの告知にこぎ着けたところです。
    広島に戻って以来、大学生にプログラミングを教えることからもしばらく遠ざかっていたのですが、私自身がこども時代に「黒い画面とキーボードだけのコンピューター」にワクワクしていた気持ちを思い出して、私が理解した IchigoJam の魅力を多くの人にお伝えしたいと思っています。

    おまけ

    西本はことし RubyKaigi 2017 オーガナイザーとして、全国・世界の Ruby 技術者が9月18日からの3日間広島に集まるお祭りの裏方をやっております。
    現在は Super Early Bird 料金でのチケットを販売中です。
    またスポンサー企業も募集しております。
    そろそろカンファレンスの詳細がいろいろ発表されると思います。ご期待ください。
    去年まで活動していた Python のイベントはどうなったのかというと、今年は「すごい広島 with Python」として、4月から毎月1回、定期的な勉強会として盛り上げていこうとしています。
    スクリーンリーダー NVDA に関しては、VIC への参加、そして今年は秋以降に NVDA 日本語チームとして東京圏での活動を計画中です。
    あわせて今後ともよろしくお願いします。

  • 「つくれば工房」で MicroPython 体験会

    この記事は たまに広島 Advent Calendar 2016 20日目の記事です。
    広島で Python のカンファレンスを開催してきた PyCon mini Hiroshima 実行委員会の西本です。
    その他に、オープンソースの Windows 用スクリーンリーダー NVDA の日本の開発者コミュニティ、NVDA日本語チーム、そして広島のコミュニティNVDA ユーザ会広島などをやってきました。
    11月12日の PyCon mini Hiroshima の報告は PyCon JP のブログに書きました
    また 11月27日 OSC 2016 Hiroshima のセッション『jus研究会広島大会「ITコミュニティの運営を考える」』で NVDA のコミュニティについて喋らせてもらいました。開催レポートで詳しく紹介していただいています。

    つくれば工房

    広島で「電子工作やLED手芸など自分で自由に作るものづくりの場」=「つくれば工房」を運営しておられる遠藤さんが PyCon mini Hiroshima 2016 に参加され、私が紹介した MicroPython について興味を示してくださったので、MicroPython 体験会を提案しました。
    事前に見学をさせていただきました。
    会場は広島市西区楠木町のアドウィンテクノ塾です。
    お子さんから年配のかたまでいろんな人がいらっしゃって、Arduino や 3D プリンタなど、いろいろなことにそれぞれ取り組んでいらっしゃいました。
    毎週土曜日に欠かさず開催されているそうです。ものづくりの「もくもく会」だと思いました。

    MicroPython体験会

    ということで12月10日の「つくれば工房」にて「MicroPython体験会」を開催していただきました。

    つくれば工房のウェブサイトに報告を掲載していただいているので、自分用の記録をここにまとめます。

    • 参加者 17人くらい。やはり年配の方からお子さん(お母さん同伴)まで。マイコン開発経験者もPython経験者もいらっしゃった。Windowsパソコンを持ってきたけどプログラミング未経験、というかたもいらっしゃった。
    • スイッチサイエンスの ESPr One の持参を推奨したが、他の ESP8266 基盤を持参された方もいた。機材によってはLED点滅の実験のためにLEDをGPIOポートにつないでいただく必要があった。
    • ファームウェアの書き込みのためにPCとMicroUSBケーブルで接続していただいた。充電はできるけど通信はできないMicroUSBケーブルもあり、サポートに手間取った。
    • 西本が事前に確認したのは PC 側に Python 2.7 + esptool.py をインストールして書き込みをする手順だった。体験会をした部屋で WiFi がうまく使えなかったため、USB メモリで ESP8266 Flasher と MicroPython のバイナリ、ESPr One のUSBシリアルドライバなどを回覧してセットアップしていただくことになった。
    • Windows に TeraTerm をインストールしていただいたら、バージョン 4.93 に文字化けの不具合があり、4.92 を入れ直していただいた。

    説明したこと:

    • nishimotzのサイトで紹介したLED1の点滅を、ターミナルから逐次入力でやってもらった。
    • コンマとピリオド、コロンなど、文法を説明した方が間違えにくいということに気づき、基本的な Python の文法の説明をした。
    • ペーストモードの説明をして、このLEDの点滅を def blink() のように関数として「メモ帳」に書いてもらって、ペーストモードで貼り付けてもらった。そうすると blink() だけで点滅を実行できる。
    • 早くできた人は PWM でだんだん明るくなるコードを自分で試していた。
    • トラブルシューティング:ペーストモードで改行が余分に入る。TeraTermの改行設定を送受信ともにCRにしてもらう。
    • WiFiを触ってもらうと面白いのだろうが、いろいろ難しそうだったので今回は説明を見送り。

    質問されたこと:

    • WebREPL が動いてない:MicroPython 1.8.6 から初期化を実行しないと WebREPL が動かない仕様になった。
    • 割り込みは?:ユーザーボタンを押すとメソッドを実行する、といったコードは動作を確認している。
    • 起動すると自動的に実行するコード(main.py)をどうやって書き込むの?:WebREPLでアップロードするか、プログラムをファイルシステムに書き込むためのプログラムをターミナルで実行する。
    • 本格的に使えるの?:処理系を自分でビルドすれば、C言語拡張モジュールを組み込むことができる。CQ出版「インターフェース」2016年10月号に情報あり。

    私はいろいろ準備不足でしたが、ベテランのかたが気を利かせてサポートしてくださったおかげで、無事に体験会を行うことができました。
    ふだん Arduino でマイコン開発を楽しんでおられるかたも何人かいらっしゃいましたが、MicroPython のメリットや面白さをなにか感じていただければと思います。
    広島に Python Boot Camp を誘致する計画も進んでいますが、広島で MicroPython 体験会、いかがでしょうか。こんどやるときはもっと上手にやれると思うので、ご連絡ください。
    自分が映ってる写真を撮り忘れたので、「つくれば工房」さんのサイトからお借りしました:

  • NVDA で Excel を使う

    この記事は Webじゃないアクセシビリティ Advent Calendar 2016 13日目の記事です。
    前日はFCSアプリが公開されました。:友加の日々の記録:So-netブログでした。
    オープンソースの Windows 用スクリーンリーダー NVDA の日本の開発者コミュニティ、NVDA日本語チームの西本です。

    NVDA 2016.4jp

    このアドベントカレンダーにエントリーした時には NVDA (本家版)の次のバージョン 2016.4 は string freeze (翻訳者向けに新機能の追加や英語のドキュメントの更新が停止された段階)に入っていました。
    予想では11月29日にリリース候補版(RC)が出て、12月6日に正式リリース、ただし、なにかの事情でRCが2回出ることになったら1週間遅れるだろうと思い、この日を登録しました。
    結果的に「なにかの事情でリリース候補が遅れる」に加えて「リリース候補が2回でる」ことになり、本日12月13日には 2016.4 RC2 が出ました。おそらく正式版は今週末か来週でしょう。
    本家の正式版が完成したらすぐに日本語版 2016.4jp をリリースする見込みです。
    NVDA日本語版 2016.4jp の新機能ですが、Microsoft Excel でセルの罫線の報告を実装しました。
    この機能は(本家版にも提案はしていますが)いまのところ日本語版限定の機能なので、「日本語設定」に罫線報告を「なし」にしたり、色だけを省略できるオプションがあります。
    NVDA の Excel 罫線対応を実装するために使ったワークシート
    このほかには「NVDAキー」の表記を「NVDA制御キー」に揃えるなどの用語の変更、修正を行っています。
    NVDA 日本語版の課題やご要望の報告には「新規チケット登録」をご利用ください。
    ご報告いただいた件について詳細の調査や本家への提案などをお手伝いいただける NVDA 日本語チームの仲間も募集しております。
    前置きが長くなりましたが、ここから本題です。

    NVDAのExcel関連機能の紹介

    NVDA ユーザーガイドには Excel 関連機能がまとめられています
    VIC 広島市視覚障害者情報支援センター(ボランティアサークル)の12月4日の例会で、この NVDA の Excel 関連機能を講習会形式で紹介してみました。
    教材として使ったファイルは docs.com に置きました
    マクロを有効にした、いわゆる xlsm ファイルでお配りしています。
    メッセージボックスを開く簡単な VBA マクロを使っています。
    マクロが無効のままだと最後の「フォームフィールド」の実習がうまく動きません。
    「セキュリティの警告 マクロが無効にされました。」
    のようなペインが(F6キーで移動していくと)表示されるので、右側の「コンテンツの有効化」ボタンを押してください。
    NVDAでExcel.xlsm ファイルのSheet1を開いた画面

    ワークシートの切り替え

    Excel のファイル(ブック)には複数のワークシートを含むことができます。
    表示中のワークシートを切り替えるキーボードショートカットは Ctrl+PageUp および Ctrl+PageDown で、これは Excel の標準機能です。
    しかし NVDA で Excel を操作しているときには、要素リストで切り替えることもできます。
    NVDA+F7 :要素リストを開く
    要素リストで Shift+Tab を押して種別を「シート」に切り替えて、ツリービューに戻って、移動したいシートの名前で Enter を押します。
    なお NVDA 制御キーを押し損なうとただの F7 キーになってしまい、これは Excel のスペルチェックの呼び出しです。
    では、教材ファイルの Sheet2 に切り替えてみましょう。

    グラフの値を読む

    NVDAでExcel.xlsm の Sheet2 の画像。日付と数値の右側に棒グラフがある
    ワークシートの中を矢印キーで移動すると「グラフ」を選択することができませんが、要素リストを使うとフォーカスをグラフに移動できます。

    1. グラフが含まれているワークシートに移動します。
    2. NVDA をフォーカスモードにします。(ブラウズモードのままだとうまくフォーカスがグラフに移動しません)
    3. 要素リストで種別「グラフ」を選び、ツリービューでグラフを選択して Enter を押します。
    4. 要素リストのダイアログが閉じて、そのグラフにフォーカスが移動した状態になります。

    NVDA+Tab を使うと、グラフがフォーカス位置であると確認できます。
    この状態で、下矢印キーを押していくと、グラフを構成する各要素にフォーカスを移動できます。
    グラフの種類やオプションによって変わりますが、以下のような要素が見つかります。

    • 系列 系列1 1の1
    • 目盛
    • データラベル
    • グラフの軸 種類 項目 グループ 主
    • グラフの軸 種類 値 グループ 主
    • プロットエリア
    • グラフエリア

    「系列 系列1」に移動した状態で、今度は右矢印キーを押します。
    すると、以下のように値を読むことができます。

    • 1月2日 363.5
    • 1月9日 418.0

    右矢印キーを押し続けて、最後までいくと先頭に戻ります。
    また左矢印キーで逆方向に移動できます。
    この機能ですが、グラフの内容やデータの形式によっては不完全だったり不自然な読み上げになります。
    例えば、日付をシリアル値(数字)として読み上げてしまう、セルの書式設定を無視して小数点以下をすべて読み上げる、といった課題を確認しています。
    今回の教材では「NVDAがうまく読み上げるように」あらかじめ手を入れてあります。

    コメント

    Sheet1 のセル B12 には「コメント」がついています。
    NVDA はコメントのつけられたセルに移動すると「コメント」と報告します。
    コメントの内容は NVDA+Alt+C で確認できます。
    また要素リストの種別「コメント」を使うと、コメントを一覧できます。

    数式

    要素リストの種別「数式」を使うと、現在のワークシートに含まれる数式を一覧できます。
    Sheet1 のセル B3 には「=B2*消費税率」と書かれています。
    「消費税率」はセル B8 につけられた「名前」です。
    名前を管理する方法は NVDA にはありませんが、Excel の機能「名前の管理」は Ctrl+F3 で呼び出すことができます。

    行と列の見出しの自動報告

    A1 から B3 にかけて見出しのついた「表」があります。
    ちょっと小さくて物足りないので、以下のように書き足してください:

    • C1: 商品B
    • C2: 200
    • C3: (セルB3をコピーして貼り付けます)

    セル B2 の数式は B8 を名前で参照しているので、C3 には 200 * 1.08 = 216 が表示されます。
    では A1 にカーソルを移動して、以下を実行します。
    NVDA+Shift+C 見出し列の設定
    列を左右に移動したときに、1行目の内容を見出しに使って「商品A」「商品B」と読み上げるようになります。
    もういちど A1 にカーソルを移動して、今度は以下を実行します。
    NVDA+Shift+R 見出し行の設定
    さきほどの列見出しの報告に加えて、今度は行を上下に移動したときにも、A列の内容を見出しに使って「金額」「税込金額」と読み上げるようになります。
    この「見出し行と見出し列の場所」を保存するときに NVDA は Excel の「名前」機能を使っています。
    (さきほど紹介した Ctrl+F3「名前の管理」で確認できます)
    この状態でファイルを保存しておくと、Excel や NVDA を起動し直しても見出しの自動報告は再現されます。

    フォームフィールド

    NVDA 2016.3 で追加された機能が「フォームフィールドの操作」です。
    Sheet1 で NVDA+F7 要素リストを開いて、「種別」フォームフィールドに切り替えます。
    「ボタン1」というボタンが見つかるので、Enter を押します。
    これでフォーカスが Sheet1 のシートに貼り付けられた「ボタン」に移動した状態になりました。
    スペースを押すとボタンを押すことができます(既定のアクションの実行)。
    教材ファイルは「こんにちは」という小さなメッセージボックスを表示しています。
    「OK」というボタンがあります。
    このメッセージを閉じるまで Excel の他の操作ができません。
    OK ボタンにフォーカスを移動してスペースを押す、
    Enterを押す、あるいはEscを押す、といった方法でダイアログを閉じてください。

    最後に

    以上、要素リストの機能を中心に、NVDA が Excel に対して提供している機能を紹介しました。
    機能の実装や日本語の翻訳など、まだまだ課題もあると思うので、なにかお気づきのことがあればお知らせいただけると助かります。
    なお Excel をスクリーンリーダーで使う場合の一般的な解説をいくつか紹介しておきます:
    視覚障害者のためのExcel 2010キー操作マニュアル
    Microsoft Office 2013 のアクセシビリティ
    Excel 2016 でスクリーン リーダーを使用する方法のヘルプ