NVDA 2016.4 と FocusHighlight アドオン

この記事は Web Accessibility Advent Calender 2016 の6日目の記事です。
5日目は「「画像置換はアクセシブル」じゃないよ、という話」でした。

オープンソースの Windows 用スクリーンリーダー NVDA の日本の開発者コミュニティ、NVDA日本語チームの西本です。
NVDA と Web アクセシビリティの情報提供のために Webアクセシビリティ基盤委員会(WAIC) WG2 にも参加しています。

NVDA 2016.4

このアドベントカレンダーにエントリーした時には NVDA (本家版)の次のバージョン 2016.4 は string freeze (翻訳者向けに新機能の追加や英語のドキュメントの更新が停止された段階)に入っていました。
翻訳者の作業締切が11月28日ごろに設定されていたことから、11月29日にリリース候補版(RC)が出て、12月6日に正式リリースになるだろうと予想し、この日を登録しました。
ですが、なにか事情があったらしく、2016.4 RC は12月2日にリリースされ、おそらく正式版は今週末だろう、という状況です。
本家の正式版が完成したらすぐに日本語版 2016.4jp をリリースする見込みです。

NVDA 2016.4 で予定されている主な変更点ですが、ウェブなどのアクセシビリティを検証する開発者に便利な「スピーチビューアー」の操作性が改善されました。
具体的には、スピーチビューアーを表示した状態で NVDA を終了すると、NVDA を次に起動したときに、スピーチビューアーを自動的に再表示するようになりました(「NVDA起動時にスピーチビューアーを表示」というチェックボックスで有効化できます)。
直前に表示されていたスピーチビューアーのウィンドウの位置も保存されるようになりました。

NVDA2016.4のスピーチビューアー

スピーチビューアーと併用して、NVDAの音声エンジンの設定「音声なし」を選べば、音を出さないでキー操作や読み上げるテキストのチェックをする、という使い方ができます。
2015年9月のセミナー資料 開発者のためのNVDA もご参照ください。

もうひとつの変更点として、Microsoft Edge ブラウザへの対応が NVDA 2016.4 で改善しています。
(2015年7月の Windows 10 のリリース以降、NVDA はずっと Edge ブラウザを非推奨としてきました)
せっかくのWebアクセシビリティのアドベントカレンダーですが、私の準備が不十分であることと、「これで終わり」ではなさそうなので、Edge 対応はいずれ改めてお知らせしたいと思います。

NVDA に関する最近の講演スライドとしては、11月3日に東京で登壇したときの資料を紹介しておきます。


以上、前置きが長くなりました。ここから本題です。

NVDA のアドオン FocusHighlight

今日は、私が開発している NVDA のアドオン FocusHighlight について、やや詳しく紹介したいと思います。

ブラウズモードの表示例(フォーカスが赤色の線、ナビゲーターオブジェクトが緑色のギザギザ線):

www.nvda.jp でのフォーカスハイライトの利用例。In English リンクにフォーカスが、その下の「NVDAとは」にナビゲーターオブジェクトがある

フォーカスモードの表示例(フォーカスが青色の斜線入り太線):

www.nvda.jp におけるフォーカスハイライトの利用例。NVDAがフォーカスモードで、フォーカスが In English リンクにある

このアドオンは、NVDA のナビゲーターオブジェクトや、フォーカスのあるオブジェクト・コントロールの場所を、色のついた長方形で強調して表示します。画面の見えにくい人、晴眼の指導者、開発者にとって有用です。

NVDA 本家アドオンコミュニティのダウンロードページ

開発版のダウンロードページ(GitHub)

フォーカスハイライトに関する動画

2016年4月に Deque Systems が Accessibility Testing with the NVDA Screenreader として YouTube動画 を公開しました。
この中で NVDAのインストール手順の一環として Focus Highlight アドオンが紹介されました。

2016年6月にはミツエーリンクスさんのブログ記事 「Deque SystemsがNVDAの紹介動画を公開」 でもこのことを取り上げておられます。

多くの NVDA のアドオンは視覚障害の当事者にとって便利な機能を追加するものですが、Focus Highlight アドオンは「見えない人には一切なんの役にも立たない」アドオンです。
NVDA のコミュニティではあまり話題になりません。
ですが、今年はこの動画で紹介されたせいか、このアドオンについて、ちょこちょこ海外から問い合わせが来ました。

バグ修正や改善の要望が増えてきたので、取りかかる前に、自分のモチベーションを思い出すために、開発の経緯を振り返りました。

開発の背景

Windows やウェブブラウザには「フォーカスの位置を示す表示」があります。もともと、フォーカスがどこにあるかは分かるはずです。
(それが邪魔だということでWeb開発者がフォーカス位置表示を消すと問題になるわけですが。。)

とはいえ、他のスクリーンリーダーに「Windowsの標準機能よりもしっかりフォーカス位置を強調する機能」があるので、NVDA にもつけて欲しいという話をときどき聞きました。

スクリーンリーダーの利用者は全盲の人とは限らず、残存する視力を有効に活用するためにはいろいろな視覚的支援が必要です。

また、本人に視力がなくても、隣でサポートをする人が操作の状況を把握しやすい、といったメリットもあります。

一方で、私自身は、NVDA の挙動や仕様を深く理解するために、自分のためにこの機能を追加しようというモチベーションもありました。
フォーカスは見えるからいいのですが、スクリーンリーダーが「なにかを読むために」Windowsに追加している機能(ブラウズモード、ナビゲーターオブジェクト、レビューカーソル)については、NVDA は可視化してくれないからです。

振り返ると NVDA のコア開発者は二人とも全盲で、NVDA は画面表示については非常に大雑把か不完全でした。
私は何度か本家に画面表示の不備や不具合の修正提案をしてきましたが、そのたびに「他に誰もいないんだなあ」と思ってきました。
本家が 2016.4 でスピーチビューアーなどの表示に関する改善をしたのは、本家の開発元 NV Access が今年になってやっと「見える人」を雇ったから、ということのようです。

こうしたことから「フォーカスハイライト」という名前ではあるものの、私の目標はもともと「フォーカス以外のハイライト」でした。

2013年

2013年5月1日に作業を開始。
sourceforge.jp (現在は osdn.net) の nvdajp プロジェクトにチケット 31261 を作成。
フォーカス位置のハイライト機能

「ハイライト表示を既存のウインドウに重ねるにはどうするの?」ということで MSDN の蛍光ペンのサンプルを参照。
四角い枠を描画するには、Windows API で4辺をそれぞれウィンドウとして描画する以外にない。仕方なくその方向性で進める。
最初は Windows 8 の UI Automation に対応する拡張のための NVDA 本体の作業ブランチでした。

何も考えずに4辺をウィンドウとして描画すると、それぞれがWindowsからアプリとして認識され、タスクトレイのアイコンが4つ増えてしまう。
それを出さないようにウィンドウクラスのオプションを指定する必要がある。

2013年5月23日
NVDA が内部的に保持しているオブジェクト座標情報の取り出し方を変更し、NVDA のプラグインとして実装するように変更。
NVDA 本家版と NVDA 日本語版の両方で動くアドオンを目指す。

2013年5月24日
Focus Highlight アドオン 0.0.1 のリリース。
日本語のユーザーメーリングリスト nvda-japanese-users に投稿。
本家(英語)のメーリングリスト nvda-addons ML に投稿。
ライセンスは NVDA 本体に合わせて GPLv2 とする。

2013年5月26日
0.0.2 リリース。

2013年6月4日
0.0.3 リリース。
やっとナビゲーターオブジェクトを表示できるようになった。
まずフォーカスを赤で、ナビゲーターオブジェクトを緑で表示。
0.0.4 リリース。
フォーカスとナビゲーターオブジェクトが一致しているときに、赤い表示だけを行うようにした。

2013年6月20日
0.0.5 リリース。エラー処理などの改善。

2013年7月7日
本家アドオンコミュニティに登録されることになり NVDA Addon Team にレポジトリが folk される。

2013年8月4日
readme.md がついて本家アドオンコミュニティから公開される。

2013年8月27日
本家 NVDA の issue で言及される

2013年10月22日
NVDA 翻訳チームの作業 英語+日本語+10言語の readme.md および 英語+日本語+11言語の nvda.po がマージされる。
当時アドオンコミュニティに登録されたアドオンの翻訳とリリースは、アドオン開発者の手を離れ、アドオンコミュニティのリリース担当者に委ねていた。

2013年11月12日
1.0 リリース。本家アドオンコミュニティでの扱いが「安定版」になる。

このころ報告されていた不具合:
Windows 8.1 「すべての項目のサイズを変更する」対応
NVDA本体が2014.1でDPI-Awareになって解決したはず。

2014年

2014年1月25日
バージョン 1.1 をリリース。
ナビゲーターの緑のマークをハッチブラシに変更し、色の区別がつきにくい状況への配慮を行った。
アクセシビリティについては人に教える立場だと思っていたのですが「赤と緑の区別がつきにくい人」への配慮を怠っていることに気づきました。
色を変更するといろいろたいへんなので Windows API のブラシで「ギザギザ線」などを導入しました。

2014年5月4日
プラグインの再読み込みでエラーが起きないように修正。

2014年8月5日
フォーカスモードを視覚化。
フォーカスモードの場合にフォーカスを青いハッチラインで描画するように変更。
NVDA+スペースで NVDA のフォーカスモードとブラウズモードが切り替わるのですが(さらに決まった条件で自動切り替えするようにもなっていますが)、このモードの違いを意識しないと NVDA でのWebブラウザ操作はうまくいきません。
フォーカスハイライトでフォーカスモードが簡単に把握できれば、音声出力をミュートしていても楽に扱える、と思いました。

2014年9月15日
バージョン 2.0 をリリース。
このころアドオンコミュニティのバージョンナンバリング方針がかわり、機能アップデートはメジャーバージョンアップ、翻訳アップデートはマイナーバージョンアップ、ということになりました。

2014年12月4日
アドオンコミュニティの作業フローになじめないでいたら、私にかわってバージョン 2.1 (translation updates) を NVDA Addon Team がリリースしました。

2014年12月29日
NVDA 2015.1 でオブジェクトの座標情報を取るための方法が変わるので、前もって互換性の改善をコミット。

2015年

2015年1月18日
2.1 がリリースされたのに readme.md に changes for 2.1 がなかったので改定するコミットを私が行う。
こういうこと私がやらないといけないなら、いまのコミュニティの作業フローってやっぱりおかしくない?と不審に思う。

2015年1月18日
本家の翻訳者メーリングリストで、アドオンコミュニティWebサイトの翻訳について質問が出る。
例えば stable focusHighlight-2.1 と development focusHighlight-1.1dev があるのはなぜ?みたいな問題提起をされる。
それはリリースとコミュニティWebサイトとレポジトリの readme.md 更新のワークフローが混乱してるからじゃね?と内心思う。

2015年1月18日
次は 2.2 でなく 3.0 を出したいとアドオンコミュニティのメーリングリストで宣言しました。

2015年1月21日
stable focusHighlight-2.1 と development focusHighlight-3.0-dev がコミュニティサイトに掲載された状態になりました。

2015年4月12日から4月27日
リファクタリングをしていたつもりが、ウィンドウのオプションの変更が裏目に出て、タスクトレイにアプリケーションのアイコンが出てきてしまう。
本家に不具合報告(4961)されてしまい、慌てて元に戻しました。

2015年5月31日
本来は画面に追加情報を表示するだけで、アプリのフォーカスの挙動に影響を与えないはずのアドオンが、コンボボックスの挙動を変えてしまっていることが判明。
focusHighlight 利用時のコンボボックスの値の変化の通知
苦肉の策でコンボボックスのフォーカスだけアドオン側で制御しなおすワークアラウンドを実装。

2015年6月1日
focusHighlight-3.0-dev-150601 スナップショット

2015年7月24日
3.0 正式リリースに向けて addon_url の値を https://github.com/nvdajp/focushighlight に変更。
アドオンの置き場も nvda.jp に変更した。
https://www.nvda.jp/addons/focusHighlight-3.0.nvda-addon

2015年8月1日
アドオンコミュニティのリンク更新してもらい 3.0 をリリース。

2015年8月27日
バージョン 4.0 に向けた作業開始。
NVDA 2014.4以前との互換性の不具合を再修正

2015年10月22日
バージョン 4.0-dev-151022

2015年10月25日
NVDA がスリープモード(デスクトップ配列で NVDA+Ctrl+S, ラップトップ配列で NVDA+Ctrl+Z)の場合にフォーカスハイライトの表示を消去するように変更。

2016年

気づいたら1年くらい放置していました。

2016年10月2日
GitHub Releases を使い始める。
バージョン 4.0-dev-161002

反省と今後

NVDA 日本語ガイドブック には公式ドキュメントに書かれていない NVDA の仕様がいろいろ含まれています。
例えば 4.1 「レビューカーソルの使い方(前編)」で「NVDA+B = アクティブウィンドウの読み上げ」がレビューカーソルを勝手に動かす、と説明していますが、これはフォーカスハイライトのおかげで気づいた挙動です。
また、NVDA のタッチディスプレイ対応が実はレビューカーソルの移動であるということも、フォーカスハイライトで確認できた仕様です。

NVDA日本語版の開発においても、JTalkの読み上げ位置情報の修正ATOK候補コメントへの対応などでフォーカスハイライトが役立ちました。

Firefox などの Web ブラウザでは、ブラウズモードで上下矢印キーを押すと緑ギザギザ線のナビゲーターオブジェクトだけが移動し、リンクやボタンなどにぶつかるとフォーカスの赤い線が移動するのですが、こういう基本的な挙動も、フォーカスハイライトがあれば安心して検証できます。

とはいえ、キーボードを使わずに(例えばマウスホイールで)ブラウザがスクロールした場合には、ハイライト位置はうまく更新されません。
マルチディスプレイの環境でも不具合があることを把握しています。
また気になるのは、どうやら Windows 10 の Insider Preview だとギザギザ線がうまく描画されないようです。さすがにこんな昔の Windows API の仕様はいずれ廃れていくのかも。。

現在はこのアドオン用の GitHub Issues を使って、海外のユーザーからのフォードバックを得たり、進捗を報告しようとしています。

本家アドオンコミュニティとの関係について触れましたが、2016年の夏から秋にかけて、アドオンコミュニティが翻訳のマージやリリースを取り仕切るのをやめて、各アドオンの開発者に権限と責任を委譲しよう、という方向性になっています。
他のアドオンと違って、コミュニティの中でレビューされることが少なかったのがフォーカスハイライトの悩みでしたが、今後は Web 開発に関わるユーザーからのフィードバックを尊重しながら改良やリリースを進められると思います。

もし NVDA のアドオン開発に興味があれば、NVDA 日本語チームの運営するメーリングリストもご利用ください。
西本宛の私信での相談やご依頼は、無償では対応しない方針ですのでご理解いただければ幸いです。

追記:
ブログを書いたらやる気が出てきたので、フォーカスハイライト 4.0 を正式リリースしました。

電子工作のためのPython: MicroPython on the ESP8266

2016年11月12日に PyCon mini Hiroshima 2016 を開催しました。
開催報告記事は準備中ですが、まず私の発表を紹介しておきます。


作ったプログラムと回路図

準備のためにいろいろ実験していた記録

過去のIoTLT広島での私の発表の記録

録画(YouTube)

質疑応答の時間に「産業界での利用状況は?」というコメントがあり、産業界というよりも教育分野での盛り上がり(BBC micro:bit 対応など)のことしか触れなかったのですが、Damien George さんの講演(YouTube GOTO2016 の動画)では「宇宙開発への応用のための SPARC 移植版」などに言及されていました。開発者がもともとそういう分野の出身なのだそうです。思い出せなくてすみませんでした。。

私の発表では ESP8266 での動作状況だけをお話しましたが、もともとのターゲットである PyBoard などの ARM 系 CPU については、実行時にバイトコードではなくCPUのネイティブ命令を生成する機能など、性能を上げる処理がいろいろ実現されています。

 

このブログ記事では、今回の発表をどのように準備したかを簡単に振り返っておきます。

まず9月末に ESPr One を入手し、MicroPython の書き込み、動作確認をしました。

そして手頃なセンサーやデバイスをいろいろESP8266の入出力につないでMicroPythonで動かしてみました。

明るさセンサー(NJL7502)は「IchigoJamではじめる電子工作&プログラミング (I・O BOOKS)」で紹介されていて、いずれ遊ぼうと思って入手していました。

また圧電サウンダ(ピエゾ圧電ブザー)は IchigoJamU に付属していたものをそのまま拝借しました。すでにモデルチェンジしているようなので、現在購入できるモデルにブザーがついているかどうかはわかりません。

超音波センサーHC-SR04は5月にソラコムのハンズオンをやった(IoTLT広島で紹介済み)ときのパーツです。
ESPr Oneからは5Vと3.3Vの両方の電源をとることができます。
HC-SR04は5V駆動で、ESP8266のGPIOは(Arduinoと同じ)3.3Vとのことなので、ECHO の入力側は抵抗で分圧しています。
こういうのは “Arduino 3.3V HC-SR04” で検索すると見つかるので、人気のあるパーツを選ぶと便利ですね。

MicroPython for ESP8266 の Quick Reference にはデジタルの入出力方式として SPI, I2C, OneWire が紹介されています。
今回 SPI は手頃なパーツがなかったので実験しませんでした。

I2C でつないだのは小型のディスプレイ(OLED)です。
MicroPython のライブラリや Adafruit のサイト記事や動画を見て SSD1306 というドライバーのものが簡単に使えると知ったので安価なものを Amazon で探しました。
TonyDさんは ssd1306.py を組み込んでビルドし直していますが、MicroPythonのソースに入っているドライバーファイルをWebREPLでアップロードすればそのまま動きました。メモリを節約したかったら組み込んでビルドしたほうがいいと思います。

OneWire は Quick Reference に書かれていた温度センサー DS18B20 をすでに入手していました。
Arduino や Raspberry Pi などの書籍や記事でよく出てくるパーツだったので買っておいたのでした。
手で触ると体温で温度が上がるのはわかるのですが、実際に組み合わせて使い道を思いつかなかったので、マイコンの起動直後に温度を表示して、18度から20度までの範囲だったら “good condition” と表示する、みたいな「しょうもない」使い方しかしていません。
OneWire はプルアップの抵抗が必要なのですが、ESPr One のボード内の(おそらくは Arduino のプログラミングモード切り替えのための)抵抗をそのまま使えるように GPIO のポート番号を選びました。

ESPr Oneにはスイッチがあって GPIO で値を読むことができますが、ボードをケースに入れてしまったせいで、細い棒のようなもので突かないと押せません。

じゃあ光センサーと超音波距離センサーをスイッチの代わりにするか、ということで、全体を「光線銃ゲーム」に仕立てることに決めました。

光センサーを「懐中電灯を当てたときに閾値を超える」ように AD 変換で使う抵抗の値を選び、超音波センサーは「距離測定を3回実行して80センチ未満が1回以上あったかどうか」を判定することで誤判定をなるべく回避するように実装しました。まあ誤判定しますけど。。

ゲームにつきものの乱数は MicroPython の math にはなくて os.urandom で得られるランダムなバイト列を使いました。

MicroPython の PWM は LED の明るさを変える目的で使われると思いますが、ここでは LED と圧電ブザーを並列につなぎ、メロディを流すのに使いました。
性能が足りないのか精度が足りないのか、高い音は綺麗に出ません。
音が出ているときはLEDも光ります。音を止める時は duty=0 にして信号が0になるようにしています。

ゲームそのものの実装とデバッグは本番直前の2〜3日でやりましたが、よく考えると(電子工作やマイコンに親しんでいた子供時代を含めて)人に見せるために電子工作やミニゲームを開発したのはこれが初めてだなあ、と思いました。

私が子供のころの電子工作はハンダ付けで組み立てるのが普通で、ブロックを組み合わせるような電子工作実験回路を羨ましく思ったものでした。
いま、こういう回路がブレッドボードで簡単に組み立てできて、入出力デバイスもモジュール化されて、マイコンとデジタルで繋がって、しかもPythonで対話的に開発、実行できる。
いい時代になったんだな、と素直に思った、そんなこの数日間でした。

私に懐かしい世界を思い出させてくれた IchigoJam も好きですが、MicroPython と ESP8266 も、教材が充実してくれば、子どもの遊びやプログラミングの教育に使えるのではないでしょうか。

如法会 2 と「2つのPython」

如法会2の報告を書いていただいたのですが、過大に評価していただいたようなので言い訳を書きます。

私のトークはこういう内容でした。

Pythonで統計や機械学習という記事、文献、書籍がこの1年くらい日本語でもどんどん出版されています。

私は英語の書籍も含めてそうした資料をいろいろ読んでいて「いわゆる PyData とオリジナルの Python は本当に同じ言語仕様なんだろうか」と疑問に感じてきました。

そこで NumPy が Python という言語をどのように拡張しているのか、という観点から資料を探していたら見つけたのが神嶌さんの「機械学習とPythonとの出会い」でした。

無料で公開されている文献なら紹介しやすいし、単純ベイズだけを扱っているので、やりたいことはわかりやすい。通して読んでみたのですが、さて勉強会で紹介するとしたら「単純ベイズ」のところだけが難しく感じられるだろうなあ。そう思って準備したのが「『機械学習とPythonとの出会い』との出会い」でした。

このテキストを説明しようとして、別の文献をいろいろ読むことになったので、私自身も勉強のきっかけになりました。また、いわゆる Jupyter Notebook をスライドのように使う方法もあわせて勉強させてもらいました。

1990年代の音声認識技術からパターン認識の分野に関わったので、ひとつのアプリケーションで有用な技術がどう他の対象に応用できるか、といった発想で物事を考えることはあいかわらず多く、そういうことが(データさえあれば)すぐに形にできる時代になったのはすごいことだなあと思いつつ、一見時代遅れのパターン認識手法をどこかでしゃべるのも、なにか新しいことに役立つかも、と思ったりもします。

Pythonのエコシステムが機械学習をコモディティ化してしまった現実に凄まじさすら感じた、というのが私にとっての PyCon JP 2016 でしたが、オマケのように喋ったのが「2つのPython」というキーワードでした。

Python 2 と Python 3 ですよね、と思われるかも知れませんが、もうその話は終わってたんだな、ということを東京で納得してきました。

むしろ新たな「2つのPython」は、簡単に言えば pip でパッケージ管理される公式 Python の世界と、Anaconda に代表される数値計算コミュニティ向け Python の世界ですね。いろいろ温度差があるということを薄々感じ始めています。。

このニーズや方向性の微妙に違う2つのコミュニティが関わり合って未来の Python が作られている、その現場を私は PyCon JP で見た気がしました。

コミュニティが分断されないためには多様性が尊重されるカンファレンスの場が必要なのだ、ということも強く感じました。

如法さんのブログでは PyCon mini Hiroshima 2016 (11月12日開催)でこの続きが聞きたいと書いておられましたが、取っておこうと思ったことを如法会で喋ってしまい、大したことでもなかったな、と思えてしまったので、私はたぶん別の話を(時間があれば)すると思います。

実は講演プロポーザルの締切を10月5日まで延長したので、まだ講演の提案をお待ちしているところです。詳しくは connpass をご参照ください。最後はまたイベントの宣伝になってしまってすみません。

PyCon JP 2016 ポスター発表: NVDA の開発とコミュニティ活動

9月21日と22日の2日間、PyCon JP 2016 に参加しました。2日目に「スクリーンリーダー NVDA の開発とコミュニティ活動」というポスター発表をしました。多くの人に見ていただけたようです。長い時間をかけてこちらの話に付き合ってくださったかたも多かったです。

PyCon JP 2016 ポスターの前に立つ西本

23日には開発スプリントのリーダーとして、NVDA 日本語版の開発の具体的な作業を紹介、そして Python でアドオンを開発するチュートリアルなどを行いました。メンバー4人で楽しくハッカソン的な時間を過ごしました。

NVDA日本語チームは2013年からユーザーを対象にしたイベントを行ってきましたが、今年、方針を変更してこういう技術者向けイベントに参加しました。結果として、より多くの人にNVDAを知ってもらったり、コミュニティのメンバーを広げたりする手段になったと感じています。

特に今年の PyCon JP は「多様性」がキーノートや講演でも取り上げられました。そのような中で、アクセシビリティの話が、多様性についての視野を広げるお役に立てていたらうれしいです。

PyCon JP の参加を通じて得た知識、気づいたことなどは、また改めて書いたり喋ったりしたいと思います。

11月12日開催の PyCon mini Hiroshima 2016 も「視覚や聴覚に障害をお持ちのかたを含めて、 誰にでも参加して楽しんでいただけるイベント」を目指しています。発表のプロポーザルを9月30日まで募集しています。

それから10月2日に広島での勉強会で Python と機械学習をテーマにLTをしようと思っています。こちらもよろしくお願いします。

PyCon mini Hiroshima 2016「広島とPython」 #pyconhiro #pyconjp

プログラミング言語 Python (パイソン)が気になりはじめた広島の皆様、広島のことが気になっていた全国の Python ファンの皆様のために、今年も PyCon mini Hiroshima を開催します。
開催日は2016年11月12日(土曜)、会場は広島市立大学サテライトキャンパス(広島市役所のすぐ前)です。

これから connpass サイトでの参加募集(および講演の申込受付)を開始します。

2015年11月22日、第1回 PyCon mini Hiroshima の基調講演は石本敦夫さん「Pythonの肩にのる」でした。
一人前のプログラマになるための勉強は果てしなく続く。でも焦ることはない。なにかひとつの技術やプロダクトに深く関わることが重要。
深く学ぶほど大きく広がる Python の世界はその理想的な入口のひとつ。
そんなことをご自身の20年の経験を踏まえて語っていただきました。

たまたま NVDA という Python プロダクトの活動(NVDA日本語チーム)をきっかけに Python を深く学ぶことになり、日本の Python の技術者やコミュニティの素晴らしいパワーに触れる機会を得てきた私には、自分の気持ちととても重なった内容でした。

半年以上が過ぎたいま、Python やその関連プロダクトは、広島の技術者の勉強や仕事に役立ち始めているでしょうか?

広島での PyCon mini の第2回となる今年は「広島から発信しよう」を目指しています。
県外から著名人をお招きしてお話を伺うことよりも「広島で Python がどう使われているのか」「広島で Python 技術者にどんなチャンスがあり得るのか」といった話題を持ち寄って、なにかを生み出したいと思います。
まず「広島で暮らす人々」「広島に観光で訪れる人々」をターゲットに「人間の言葉を理解するコンピュータ」の研究に取り組んでいる広島市立大学「言語音声メディア工学研究室」の関係者にご協力をお願いして、「広島とPython」の接点を探ります。
また IoT (Internet of Things) に適した言語としての Python という側面(例えばハードウェアの制御も Web APIの利用も Python から簡単にできたりします)を掘り下げていくために、今年立ち上がったフレッシュなコミュニティ IoTLT 広島と LT セッションを共同開催します。
スペシャルトークの火村智彦さんには「私はいま広島で○○というプログラミング言語を使っているけど、Python も勉強した方がいいのかな?」と思っている人に刺激を与えるようなお話をお願いしています。どんな内容になるのか、私もまだわかりませんが楽しみにしています。

今年、日本の Python コミュニティでは、初学者向けの勉強会(BootCamp)など新しい取り組みが各地で始まっています。
また Python を基盤にしたビッグデータ、機械学習、インフラ管理など、いろいろなツールのコミュニティも広がりつつあります。
この第2回 PyCon mini Hiroshima を、広島での継続的な Python コミュニティ活動のきっかけにと願いつつ、まずはご参加のご案内をさせていただきます。
講演テーマ募集は9月30日を締切とさせていただく予定です。
参加申込とあわせて、お気軽にご提案いただければ幸いです。

Firefox 43 と WebVisum のこれから

NVDA ユーザーが画像認証 (CAPTCHA) の壁を克服する手段として広く知られている WebVisum という Firefox アドオンがあります。
ミツエーリンクス まほろば などで紹介されています。

最近の Firefox と WebVisum について私が知っていることの整理と、問題提起をしておきます。

最近リリースされた Firefox バージョン 43 から、Firefox の開発元が認証をしたアドオンだけがインストール、実行できるようになりました。

WebVisum はまだ Firefox 開発元の認証を受けたバージョンを公開していないようです。

未認証のアドオンの実行を禁止するようになったのは、システムを不安定にしたり不正アクセスの原因になったりするアドオンが広まることを防ぐ目的のようです。

回避策はいくつかあり、後述しますが、どれも根本的ではありません。

根本的には WebVisum が最新の Firefox に対応するように、ちゃんと開発、システム運営を続けてもらう必要があります。

英語でしか書かれていませんが、WebVisum に寄付をしたり運営に協力したりしてください、みたいなことはサイトに書かれてはいます。

いままでそういう支援を検討しておられたのなら、この機会に WebVisum の運営元に対して、今後もちゃんと開発されていくのか、確認をしてみられるのがよいと思います。

たしか今年の夏ぐらいに WebVisum のサーバーが止まって、一時的に WebVisum が使えなくなったことがあったはずです。
海外のメーリングリストでは WebVisum の代わりになるものがないか、という質問がときどき出るようになりました。

Firefox のアドオンは今後も大きな仕様変更が予定されているはずです。
もし WebVisum の開発が止まっているなら、将来の Firefox のバージョンアップに追従できなくなり、WebVisum は使えなくなってしまうと思います。

以下、暫定的に WebVisum を使えるようにするいくつかの方法です。

(1)
自己責任で Firefox の設定を書き換えて、未認証のアドオンを有効化する。

例えば「窓の杜」の以下の記事に書かれています。

「Firefox 43」では未署名のアドオンが利用不可能に
“about:config”でオプションを無効化すれば、次期バージョンまでは継続利用が可能

Firefox 44 ではこの方法は使えなくなるそうです。
なのでいまから約6週間しか有効ではありません。

(2)
Firefox 38 延長サポート版 (ESR) に乗り換える。

Firefox ESR 38 という、仕様としてはバージョン38のまま、セキュリティ修正だけは2016年5月まで行われる特別な Firefox があります。
下記ページの下の方に日本語 Windows 版のダウンロードリンクがあります。
Firefox/Thunderbird 法人向け延長サポート版

この ESR 38 で WebVisum のサイトからアドオン ( WebVisum 0.9.1 ) をダウンロードしてインストールできることは確認しました。
(未認証のアドオンは自己責任で使ってください、というメッセージは出ます)

この方法も2016年5月までしか有効でなく、次にメジャーバージョンアップされる ESR ではいまの WebVisum は使えないはずです。

(3)
Firefox のバージョンを戻す、バージョンアップを止める。

おそらく皆様最初に思いつくことと思いますが、セキュリティ上の不具合があると分かっていて使い続けることになるため、良くない方法です。

けっきょくは WebVisum というサービスが本当に必要なのか、もし必要なのだとしたら、どうやって WebVisum の開発者や運営者を支援するのか、といったことが問われていると思います。

まあ NVDA もそうなんですけどね。。

CAPTCHA のために WebVisum が使われ続けることは、スクリーンリーダー利用者に対してアクセシブルな操作手段を提供しないサービス運営者を容認することに繋がっているとも考えられます。

以前は日本で広く普及しているスクリーンリーダーが Firefox に対応していなかったため、画像認証をクリアしたい、Firefox を使いたい、じゃあ NVDA を覚えよう、という順番で NVDA に注目された時期もありました。

しかし私は NVDA 開発者たちの思想を尊重して、WebVisum にしがみつかないことも、模索したい、してもらいたい気持ちになっています。

以上、議論の材料になれば幸いです。

追記(2016年8月22日):

WebVisum のサイトに掲載されているバージョンは 0.9.1 のままですが、Mozilla のサイトでは2016年7月18日にリリースされた WebVisum 0.9.5 が紹介されており、認証済みのアドオンとして利用できるようになりました。

ふつう=ユニバーサルでアクセシブル

この記事は ふつうの広島 Advent Calendar 2015 の8日目の記事です。
昨日はkamera25さんの記事でした。

冒頭から脱線しますが「普通の人にはない技術の持ち主」といえば「職人」ですね。
今日から「職人」がテーマのイベントが広島で開催されますよ。

広島職人博覧会
12月8日(火曜)から14日(月曜)まで
旧日本銀行広島支店(広島市中区袋町)

ふつうとはなんだろう

普通じゃない人にとって「普通に生きろ」という言葉は「苦痛」の一歩手前だったりするかも知れません。

「普通の人」=「健常者」「定型発達の人」でしょうか?
「普通の人」=「リモートワークじゃない人」でしょうか?

もっといろんな「普通」があっていいような気がするので、グーグル先生に訊いてみました。

普=「あまねく」「広く」

通=「通用する」

「あまねく」は「ユニバーサル」、「通用」は「アクセス」じゃないですか。

「ふつう」=「ユニバーサル」で「アクセシブル」ということですね!!

イベントの「ふつう」

「ふつうの広島」=「どんな人でも学んだり働いたり活動したりできる広島」にしましょう。

そういうつもりで2015年に私が取り組んだのが Python のイベント、PyCon mini Hiroshima 2015 でした。

開催直前の告知と終了後の報告は PyCon JP のブログに書いたので、下記をどうぞ。

PyCon mini Hiroshima 2015 を開催します!

PyCon mini Hiroshima 2015 を開催しました!

報告の中でも書いたことですが、カジュアルな勉強会は行動力のある人たちに任せて、私は「アクセシビリティを切り口に質を保障できるイベント」を、今後も続けていくためにお手伝いできたらいいなあと思っています。

ソフトウェアの「ふつう」

こないだ Web アクセシビリティのアドベントカレンダーに寄稿した NVDA 日本語版の現状の記事 ですが、途中から支離滅裂で勢いだけの駄文になってしまったので、もうすこし具体的に「アクセシビリティから考える本質とか品質とか」について書いてみます。

NVDA の UI ウィジェットに wxPython が使われていることは PyCon mini でお話しましたが、おそらく NVDA の開発者たちはこのツールキット選びをかなり慎重に行ったはずです。

wxPython のさらに土台になっている wxWidgets のレベルで、すでに Microsoft のアクセシビリティ API に対応する作り込みが行われていることが、ちゃんとドキュメントになっています

マルチプラットフォーム開発のための UI ツールキットはいろいろありますが、それぞれのプラットフォームのネイティブなアクセシビリティ API に対応した実装が施されているものはなかなかありません。
画面を Windows っぽく描画したり Mac っぽく描画したりすることだけできても、それが「ボタン」なのか「テキストフィールド」なのか、といった情報を OS のアクセシビリティ API に正しく渡すことができないフレームワークは山ほどあるのです。。

モバイル開発についてはどうでしょうか。
マルチプラットフォームといえば HTML で UI を作る「いわゆる PhoneGap」アプリを真っ先に思いつきます。

あまりよいユーザー体験を実現できない、ということで、ここ数年は敬遠されてきたような印象ですが、最近あらためて調べてみたら、Apache Cordova と Angular.js という組み合わせの新しいツールがいくつか登場していました。

ここでは Ionic Framework について最近私が調べたことをちょっと紹介しておきます。

この Ionic フレームワークは単なるライブラリではなくコマンドラインインタフェースのツールが用意されています。
ionic start コマンドで生成されるひな形の「タブ UI」アプリを Xcode でビルドして iPad にデプロイしてみたら、かなり VoiceOver でちゃんと使える、ということに気づきました。
フォーカスの移動順序にやや不自然なところはあったもののの、多くの要素が理解可能、アクセス可能でした。

Web技術はちゃんと「ユニバーサルにアクセシブル」に向かって進歩してるんですね。。

残念ながら完全に VoiceOver に無視されてしまったのは ion-toggle でした。

調べてみたらこのトグルスイッチの記述方法が他にも見つかったので、いわゆる WAI-ARIA の勉強がてら書き直してみたら、VoiceOver でちゃんと操作できて状態を読み上げられるトグルスイッチになりました。

修正前:

 <ion-view view-title="Account">
   <ion-content>
     <ion-list>
-    <ion-toggle ng-model="settings.enableFriends">
-        Enable Friends
-    </ion-toggle>
     </ion-list>
   </ion-content>
 </ion-view>

 

修正後:

 <ion-view view-title="Account">
   <ion-content>
     <ion-list>
+    <li class="item item-toggle">
+      <span role="label" id="enableFriendsLabel">Enable Friends</span>
+      <label class="toggle">
+        <input type="checkbox" ng-model="settings.enableFriends" />
+        <div class="track">
+          <div tabindex="0" class="handle" aria-labelledby="enableFriendsLabel" role="checkbox" aria-checked="{{ settings.enableFriends }}"></div>
+        </div>
+      </label>
+    </li>
    </ion-list>
   </ion-content>
 </ion-view>

 

role とか aria-checked とかこうやって使うんですね。勉強になりました。

これ Web 標準を使ってアクセシビリティを確保したので、たぶんプラットフォームごとの実装さえちゃんとしていれば「普(ユニバーサル)」に「通(アクセシブル)」なモバイルアプリになるはずですね。。

Ionic のテンプレートは Visual Studio 2015 にも入ってます。
Universal Windows Platform でもいけそうです。

アクセシビリティを「品質」と捉えると、技術を見極めたり、新しいことを勉強したりできますね。

「ふつうの広島」を目指して、開発者向けのアクセシビリティ勉強会をやったらいいですね、と提案しつつ、この記事を締めくくりたいと思います。

以下、参考書:

コーディング Web アクセシビリティ

わかりやすい「WAI-ARIA 1.0」仕様解説書 Kindle版

スクリーンリーダー NVDA 日本語版の現状

この記事は、Web Accessibility Advent Calendar 2015、4日目の記事です。

Web Accessibility Advent Calendar に参加するのは初めてなので、自己紹介をします。

広島出身、東京と京都を経て、現在また広島在住。
2012年4月から NVDA 日本語チーム の代表としてオープンソースの Windows 用スクリーンリーダー NVDA の翻訳と日本語版開発を担当しております。
今年の夏 AccSell ポッドキャスト 第75回に出演して喋ったので、よろしければ聞いてみてください。
非営利法人 ATDO(支援技術開発機構)主任研究員として電子書籍のアクセシビリティ(EPUBやDAISY)に従事することもあります。
Web アクセシビリティに関することでは、今年から WAIC WG2(ウェブアクセシビリティ基盤委員会 実装ワーキンググループ)に参加しています。
NVDA の開発に Python が使われているというつながりで、広島で Python のイベント PyCon mini Hiroshima の実行委員長をやりました。
その他の仕事としては、某ステルスモードのスタートアップでソフトウェア開発に従事しています。

この記事では今年ポッドキャストやイベントで喋り足りなかった NVDA の実情をまとめてみたいと思います。

まず、ユーザー数や市場占有率について。

日本でよく参照されている「視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・ パソコン利用状況調査 2013」(新潟大学)によると、スクリーンリーダー利用者全体における NVDA 利用者の割合は6パーセントとされています。
このことから「NVDA でしかちゃんと動かないWeb標準を実装しても、大半の視覚障害ユーザーには届かない」と判断されがちです。

私は、話はそれほど単純ではないだろうと考えています。
理由のひとつは、この調査が実施された2013年秋から現在までに、NVDA 日本語版のユーザーはおそらく2倍以上に増えているであろうこと。
もうひとつは、同じくこの2年のあいだに「視覚障害者の Windows 離れ」が進んだと思われること、です。

まずは NVDA 日本語版の普及状況から。
NVDA には「更新の自動チェック」機能があり、24時間ごとにサーバーと通信をしています。
サーバー側で「自動チェック」のアクセス数を数えることで、1日ごとのユーザー数を把握しています。
ちなみに NVDA 本家版のユーザー数調査結果によると、1日あたり平均23775人が一番新しい数字になっています。
(1週間のアクセス数を1日平均に直しているのは、曜日によってユーザー数が異なるからでしょう。詳しくは後述)

NVDA 日本語版は2013年12月15日にリリースした 2013.3jp から、更新チェックを独自に運用していて、NVDA 日本語チームのサーバーでアクセスを数えています。
2014年1月5日ごろの1日あたりの平均ユーザー数は64人ですが、これは 2013.3jp よりも古いバージョンを把握できていないので、すこし控えめな数字になっているはずです。
その後、2014年3月20日に 2014.1jp を、6月2日に 2014.2jp をリリースしました。
大半のユーザーが 2013.3jp 以降を使っていると考えられる2014年5月上旬で、NVDA 日本語版の1日平均ユーザー数は176人でした。
そして2015年12月上旬、現在の1日平均ユーザー数は424人になっています。

NVDA 日本語版の1日平均ユーザ数。2014年5月から2015年12月最初まで。バージョンごとに色分けされている。最初は176人、最新は416人。

単純に伸び率を掛けると、6パーセントだったシェアは少なくとも15パーセントにはなっているでしょう。

一方で、パソコンを利用する視覚障害者、つまりこのシェア計算の母数は、この2年でどうなっているでしょうか。

はっきりとは分かりませんが、私は「期待したほど NVDA 日本語版のユーザー数が増えていない」ことと、視覚障害者コミュニティの「空気の変化」から判断して、「日常的なコミュニケーションや情報アクセスは iPhone の VoiceOver でやってしまう」というライフスタイルが急速に広まりつつあると感じています。

ひとつの根拠は、NVDA 日本語版のユーザー数が2014年年末から2015年年始にかけての1週間に大きく落ち込んだ、というデータです。
また、今回この記事を書くために、この3週間くらいの曜日ごとのユーザー数を調べてみたのですが、やはり土曜日と日曜日のユーザー数が少ない、という結果になりました。

曜日ごとの NVDA 日本語版ユーザ数の比較。日曜日364人、月曜から金曜の426人、土曜372人

視点を変えると、日本における NVDA は「日常生活を支援する道具」の座をスマートフォンに明け渡しつつあるかわりに、平日に職場で使われる「視覚障害者の就労支援ツール」になりつつある、という可能性を感じています。

就労における NVDA というテーマでは、今年9月のイベントでも IT 技術者として働いている NVDA ユーザーによる発表がありました。
また技術者ではない人からも、マッサージの仕事の予定管理にイントラネットが使われていて、そのWebサイトにアクセスするときに NVDA を使う、といった話を聞いたことがあります。
日本盲人職能開発センター(東京都新宿区)ではNVDAの講習会が定期的に開催されているようです。
(私は2014年の秋にこの施設で最初のNVDA講習会をお手伝いしました)

何度か書いたり喋ったりしたことですが、NVDA は「スクリーンリーダーの本来果たすべき役割分担」に忠実な、初心者には取っつきにくい、不親切なスクリーンリーダーです。
しかしそれはベンダーや開発者に「Web標準への準拠」「アクセシビリティAPIへの準拠」を促すための NVDA の戦略によるものです。
また一方で、たった2人のコア開発者が膨大な開発を効率よく行うための、プロジェクト生き残りの手段であるとも言えます。

NVDA の強みを手短に語ってほしい、NVDA でなければできない作業をアピールしてほしい、と言われるたびに複雑な気持ちになります。

正しく迅速に「標準」に準拠するスクリーンリーダーよりも、「特定のコンテンツやアプリケーションに特化したスクリーンリーダー」のほうが、どうしても「すごいソフトウェア」「お金を払うに値する製品」に見えてしまうのです。

開発中のアプリやコンテンツが NVDA でちゃんと動くようにするにはどうしたらいいか、という質問も、似たような状況です。
「特定のスクリーンリーダーに特化したコンテンツやアプリケーション」の開発を促したくない、ということも NVDA のポリシーだからです。

NVDA 本家の開発は最近、GitHub に移行しました。
この GitHub Issues では WAI-ARIA をどう解釈して NVDA でどう実装しているのか、といったやりとりも 頻繁に 交わされています。

NVDA に関わる前から「アクセシビリティ」にこだわっていた私にとって、アクセシビリティとは「物事の本質」であり「コンテンツの品質」であり「イノベーションの源泉」です。
日本では Web アクセシビリティのコミュニティにとっても、スクリーンユーザーのコミュニティにとっても NVDA はまだまだメジャーな存在ではありません。
Web アクセシビリティは「情報産業というエコシステムの傍流」かも知れませんが、しかし「技術ロードマップのど真ん中」だと信じています。

開発者とユーザーがお互いに「Web標準を考慮して頑張っても、相手が使いこなせないから無駄」と思うのではなく、双方が「互いに歩み寄れる妥協点」を見つけてほしいと思っています。
日本のユーザーに NVDA をリアルタイムに届けることで、まもなく始まるであろう「合理的配慮」をめぐる当事者たちと事業者たちの「戦い」を支えたいと考えています。

告知:
2016年1月9日(土曜)に大阪で開催される LibreOffice mini Conference 2016 Japan に参加します。
それから1月16日(土曜)に東京で(久しぶりの) NVDA ミートアップを開催します。
NVDA について質問したい人、一緒に NVDA コミュニティを盛り上げたい人のご参加をお待ちしております。

OSC広島, DB勉強会

9月19日 オープンソースカンファレンス 2015 HiroshimaNVDAユーザ会広島として出展しました。

オープンソースカンファレンス2015 Hiroshima #nvdajp #osc15hi

Posted by Masataka Shinke on 2015年9月19日

今年はセミナーの時間を作らず、出展だけにしました。
そのかわりに NVDA日本語版 のサイトに 開発者のためのNVDA というページを作りました。
アクセシビリティのチェックのために NVDA を使ってみたい、というかたに向けて、9月13日に東京で開催した講習会「Web制作者のためのNVDA入門」の資料をまとめて、最低限知っていただきたいインストールのコツなどを書いています。

聞きに行ったセッションではOSC広島特別企画「IT企業で働くということ」と題して行われたパネルディスカッションが盛り上がっていました。
学生時代に広島の勉強会コミュニティで活躍してくださり、社会人になった若手の人たちが登壇。

ライトニングトーク&閉会式で、PyCon mini Hiroshima (11月22日)の告知をしました。

この日はサイトしか紹介できませんでしたが、本日 connpass での参加者・発表者の募集も開始しました。

翌日の9月20日は同じ場所で第11回中国地方DB勉強会に参加。

自分はデータベースに関しては「自分の技術レベルを自覚する」ために勉強会に来ているという感じでしょうか。。

技術的な話、技術者が意識するべきビジネスの話、勉強会コミュニティを通じて人脈や仕事を得たり成長したりする話、など、幅広く盛りだくさんでした。

懇親会の「町家風古民家で穴子料理」がなかなか良い雰囲気でした。

NVDA 2015.3jp と NVDA ワールド 2015 東京 (9月12日)

NVDA 日本語チームから NVDA 2015.3jp のリリース、そして NVDA ワールド 2015 東京 (9月12日) の最新情報です。

無料(オープンソース)の Windows 用スクリーンリーダー NVDA (NonVisual Desktop Access) の日本における開発コミュニティである NVDA 日本語チームは、2015年8月25日に NVDA 2015.3jp をリリースしました。

ダウンロード
http://i.nvda.jp/

NVDA日本語版 ダウンロードと説明
https://www.nvda.jp/

Windows 10, 8.1, 8, 7, Vista, XP(SP3) の32ビット版および64ビット版に対応しています。
Windows 8 以降ではタッチ操作が利用できます。
NVDA 日本語版のライセンスは GPL v2 です。

NVDA は多くのアプリケーションに対応し、インストール不要で利用できるポータブル版、アドオンによる機能拡張など、さまざまな特長を備えています。

NVDA 日本語チームがリリースする NVDA 日本語版は、オーストラリアの非営利法人 NV Access がリリースする NVDA 本家版に日本語の音声エンジンと点訳エンジンを追加するなど、日本語 Windows 環境のための改良を行っています。

NVDA 本家版 2015.3 の主な改良点は、Windows 10 への暫定的な対応、ブラウズモードで1文字ナビゲーションを無効にできる機能(NVDA+Shift+スペース)、および不具合の修正です。

NVDA最新情報(本家版のバージョンごとの変更点)
https://www.nvda.jp/nvda2015.3jp/ja/changes.html

NVDA日本語版 2015.3jp の変更点
https://www.nvda.jp/nvda2015.3jp/ja/readmejp.html#toc65

Windows 10 の多くの機能について、NVDA は 7 や 8.1 と同等に機能しますが、現時点では一般的な NVDA ユーザーには Windows 10 の利用を推奨しません。

NVDA の Windows 10 対応に関する NV Access からの告知の日本語訳
http://d.nishimotz.com/archives/1833

最後に、開催日が近づいてきた「NVDAワールド」の最新のご案内です。

(ご案内 ここから)

NVDAワールド 2015 東京

2015年9月12日(土曜)

無料で使えるパソコン用スクリーンリーダーの導入から最新情報まで

NVDA (NonVisual Desktop Access)とは、無料で使えるオープンソースのWindows用スクリーンリーダーです。
合成音声や点字によるフィードバックを通して、視覚障害者が特別な出費をしなくてもWindowsパソコンを使えます。

NVDAは、世界中の各地域の個人・団体などの援助によりNV Access(視覚障害者であるMichael Curran氏を中心に作られた非営利組織)が開発しています。

NVDA日本語チームはこれまで、グローバルなNVDA開発コミュニティにおける日本語対応を担当しつつ、日本のユーザーに必要な機能を追加したNVDA日本語版の開発、日本国内におけるNVDAの普及啓発活動を行ってきました。

2015年7月に Windows 10 がリリースされ、無料アップグレードの提供が始まりました。
めまぐるしく変化するコンピューターとインターネットの世界、その中で挑戦を続ける NVDA の世界を、より多くの人にお知らせするために、昨年に引き続き「NVDA ワールド」を開催します。

今年の NVDA ワールドでは、最新の NVDA 日本語版 2015.3jp を使って、Windows や Web アプリなどの NVDA の操作の基本、NVDA にいろいろな機能を付け加えるアドオンの最新情報、職場における NVDA の活用方法を紹介します。

特別講演では、無料で利用できるオープンソースのオフィス統合環境 LibreOffice をご紹介します。
LibreOffice はワープロ、表計算、プレゼンテーションなどの機能を備え、Microsoft Office との相互運用性が高く、世界中からボランティアが参加するコミュニティによって活発な開発が行われています。
開発スタイルが NVDA と似ているだけでなく、LibreOffice の主要な機能はNVDA から使うことができます。

今回は LibreOffice の概要、 LibreOffice のアクセシビリティ、日本の翻訳チームの状況などについて、デスクトップ環境、印刷環境、国際化、翻訳を含むオープンソースソフトウェアの
幅広い分野で活動、著述、講演をしておられる、LibreOffice 日本語チームの おがさわら なるひこ 様にご講演いただきます。

NV Access に支援をしておられる日本財団様に、今年は日本のコミュニティのイベントにもご協力いただけることになりました。
NVDAにご興味・関心のある個人・団体・企業の皆様、ふるってご参加いただきますよう、ご案内申し上げます。

■ NVDAワールド 2015 東京 の概要

主催:NVDA日本語チーム
協力:日本財団 / 神奈川県ライトセンター視覚障害援助赤十字奉仕団 / 特定非営利活動法人 神奈川県視覚障害者情報雇用福祉ネットワーク
日時:2015年9月12日(土曜) 10時から17時
問合せ先: nvdajp@nvda.jp
会場:日本財団ビル (東京都港区赤坂1-2-2)
参加費:無料
定員:100人(予定)
参加方法:会場準備のため事前にお申し込みをお願いします。
後述の「募集」をご参照ください。
参加申込者が多数になった場合は受付を終了する場合があります。
開始時の誘導:9時30分から10時30分まで、東京メトロ 溜池山王駅 溜池交差点方面改札(銀座線の出口)からの誘導を行います。
終了時の誘導:イベント終了時に会場から東京メトロ 溜池山王駅への誘導を行います。(16時30分ごろと17時00分ごろの予定)
主催者から昼食の提供はありません。

■ 参加申し込み受付と募集

参加申し込みの受付および以下の募集を行っております。

NVDA日本語チームの connpass
http://nvdajp.connpass.com/event/18105/

または nvdajp@nvda.jp 宛のメールにてご連絡ください。

・一般参加者(誘導のご希望の有無をお知らせください)
・ライトニングトーク登壇者(一般参加者としてお申し込みください)
・当日の運営をお手伝いいただけるボランティアスタッフ
・ブース出展者(非営利活動グループ)

・ブース出展を伴う企業等のスポンサー(詳細は下記をご参照ください)
https://www.nvda.jp/2015/nvda-world-2015-tokyo-sponsors.html

■ プログラム

1. NVDA 日本語版 2015.3jp と Windows 操作の基本
講演:西本 卓也(NVDA 日本語チーム)
概要:NVDA 日本語版の最近の改良点と、Windows での文字の読み書きなど基本操作を紹介します。
時間:10時15分から11時00分

2. 就労における NVDA の活用
講演:村松 謙(ブラインドパソコンサポート)
概要:業務利用での NVDA のメリットや活用方法を紹介します。
時間:11時00分から11時30分

お知らせ
時間:11時30分から11時45分

昼休み
時間:11時45分から13時00分
主催者から昼食の提供はありません。近隣のお店をご利用頂くかご持参下さい。

3. NVDA による Web アプリの操作
講演:西本 卓也(NVDA 日本語チーム)
概要:Gmail などの Web アプリの操作を最新の NVDA を使って説明します。
時間:13時00分から13時45分

4. 特別講演:LibreOffice のアクセシビリティとコミュニティ
講演:おがさわら なるひこ(LibreOffice 日本語チーム)
概要:オープンソースのオフィス統合環境 LibreOffice の概要、アクセシビリティ、日本の翻訳チームの状況などについてご紹介します。
時間:14時00分から14時45分

5. NVDA アドオンの紹介
講演:野々垣美名子(NVDA 日本語チーム)
概要:インターネットを介して他のパソコンを遠隔操作できる「リモート」など、NVDA にいろいろな機能を付け加えるアドオンの最新情報です。
時間:15時00分から15時30分

6. 質疑応答
概要:NVDA日本語チームがNVDAについてのご質問にお答えします。
時間:15時45分から16時15分

7. ライトニングトーク
概要:5分程度の短い講演を4件程度募集します。登壇者は当日決定します。
時間:16時15分から16時45分

■ インターネット配信

インターネット配信を実施する予定です。
詳細はウェブサイト等でご案内します。

NVDA ワールド 2015 東京 の最新情報は下記でご確認ください。

https://www.nvda.jp/2015/nvda-world-2015-tokyo.html

■ 関連するイベント

このイベントの翌日の9月13日 (日曜)には AccSell Meetup 010 『Web制作者のためのNVDA入門』(主催:AccSell) が開催される予定です。
Web制作者の立場からNVDAに興味があるという方は、こちらのイベントもぜひご検討ください。

http://accsell.net/info/accsell-meetup010.html

(ご案内 ここまで)