写真 青い空と雲と建物と木々の緑

nishimotzの日記

  • 第50回研究会発表募集中

    発表申込締切:2009年8月12日(水)です。招待講演・懇親会などが予定されています。

    第50回(平成21年度第3回)福祉情報工学研究会

    • 日時:2009年10月29日(木)~30日(金)
    • テーマ:福祉と音声処理,一般
    • 共催:音声研究会(信学会・日本音響学会)
    • 場所:青森県観光物産館アスパム(青森県青森市)
    • 世話役:神山 博 先生(青森公立大学)
    • 発表申込締切:2009年8月12日(水)
    • 発表申込:電子情報通信学会の研究会発表申込システムをご利用ください。
  • twtr2src による第49回WIT研究会報告

    一昨日の日記を書きながら「twitterの特定の日の発言をまとめる」というツールが欲しいと思ったら、ありました。

    改めて、7月24日の第49回WIT研究会

    の報告です:

    • 07:00 今日は山梨 http://www.ieice.org/~wit/
    • 10:09 WIT2009-48 山梨大学 大瀧さん発表。西本は座長。
    • 10:15 WIT会場の無線LANに接続。
    • 10:19 大瀧さん:移動行動推定と生理心理計測の統合。前者は加速度センサなど、後者は発汗(皮膚インピーダンス)
    • 10:36 大瀧さん質疑。行動判別は複数の特徴量の分布を利用。歩行は精度90%以上。課題は実験条件、地図情報と連携
    • 10:38 WIT2009-49 国リハ 中山さん発表。高次脳機能障害の実態調査
    • 11:09 中山さん質疑。もっと携帯電話の機能活用を。調査結果はキャリアや各団体に提供。高次脳機能障害に対する認知度が低い
    • 11:11 WIT2009-50 新潟大学 矢島さん発表 汎用シングルスイッチ まばたき検出
    • 13:08 矢島さん質疑:フォトセンサーを3つ使う理由?横ではなく縦に配置すべき?指入力とまばたきを同時に使えるとよい?まばたきは白目・黒目ではなく、まぶたの盛り上がりで検出。
    • 13:09 昼食(専門委員会)終了。これから WIT2009-51 伊藤さん(新潟大) マルチエージェント生産経済モデルのダイナミクスの評価
    • 13:12 伊藤さん:マルチエージェントの強化学習。社会格差のシミュレーション。
    • 13:38 伊藤さん質疑。評価尺度はなぜ経済効率と所得格差の2つ?経済活動はもっと複雑では?背景説明と実験結果がなぜ逆に?マルコフ性の仮定は妥当?なぜマルチエージェントを使った?
    • 13:39 WIT2009-52 発表者:小谷さん(山梨大) 視覚障害者向け自己位置推定システムにおける装置の研究開発
    • 14:06 小谷さん質疑。GPSは将来併用する。コストは低い。UIとして音声よりも振動を。センサの回転は3軸加速度センサと重力方向で補正可能。白杖にデバイスを付けたくない視覚障害者も?閾値の動的更新の精度?実験結果のルートと道路のずれ?気圧の変化で坂道がわかる
    • 14:07 第49回WIT。午後最初のセッション終了。休憩。
    • 14:16 WIT2009-53 前田さん(新潟大) 発表 新潟大学における視覚障害者のためのパソコン講習
    • 14:17 前田さん:地域貢献の取り組み。支援技術の開発に加えてリテラシー、人材育成。
    • 14:48 前田さん講演:学生TAが班に分かれて視覚障害者を指導する。質疑:TAの仕事は教えること。教員は直接は教えない。引き継ぎカルテが重要。質の評価をすべき?
    • 14:48 WIT2009-54 森さん(ロッタ) 次世代インテリジェント車いす「ひとみ」のメンテナンス
    • 14:50 森さん:ベンチャー企業で実用化した「盲導犬ロボット」がなかなか売れない。
    • 14:58 森さん:道路交通法をクリアするために「次世代インテリジェント車いす」を正式名称とした。既製品の電動車いすをベースに使用。さまざまな問題を克服。
    • 15:00 森さん:方位計測のためにシリコンジャイロ。ドリフト回避に起動後5分かかる。
    • 15:04 森さん:光電センサー2個による環境認識。取り付ける場所が難しい。
    • 15:08 森さん:対象とするユーザは白杖や盲導犬を使えない人。9割の人は家にこもっている。散歩に出かけたい。近所の人と交流したい。
    • 15:09 森さん:のちほど別会場で実演。走行中の画像処理表示、デモコースのティーチング、樹木の影や落ち葉などに対するロバスト性実験。
    • 15:18 森さん質疑:使っている人が周りにいないと理解できない?車と同じでブレーキやクラッチなど操作が必要。自治体に支援を依頼したい
    • 15:18 以上。WIT49終了。これからデモ。懇親会。
    • 20:15 WIT懇親会に参加せず特急で帰宅しました。

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  • 出版と放送とTwitter

    最近 Twitter にどんな機能があり、どんな使われ方をしているかを学ぶにつれて、Twitter を「放送的なメディア」だと感じるようになりました。

    2001年に私と共著者は下記の発表

    において

    • 我々は「放送」を、不特定の人に対して合理的かつ同報的に情報を伝達しようとする「通信の編集形式の一つ」と定義する

    と主張しました。この主張を発展させた議論は http://radiofly.to/wiki の中でも続けられているのですが、「放送」の議論を進める前にまず「出版」についてお伝えしたいと思います。

    今日もまた、全視情協(全国視覚障害者情報提供施設協会)さんの会議に、スーパーバイザーとして参加してきました。以前この日記で御報告しましたが、改正著作権法の施行(2010年1月)によって「点字図書館」の可能性が広がろうとしています。

    視覚障害に対応する点訳・音訳の図書だけでなく、高齢者・ディスレクシア・聴覚障害など、さまざまな読書障害・情報障害に対応できる「出版のユニバーサルデザイン」として「マルチメディア DAISY」が期待されています。海外ではBOOKSHAREプロジェクトが積極的に活動をしており、例えば以下の関根さん(ユーディット)の記事で報告されています:

    たとえ合成音声での読み上げを想定した「単なるテキストファイル」であっても、マルチメディアDAISYの一要素として(テキストDAISYとして)作られれば、読み手にとって「情報の構造に基づくナビゲーション」が可能になるだけでなく、図書館においても「電子的な奥付」が付与された「書籍」として扱えます。

    さらに「テキスト版」「点訳版」「音訳版」などの書籍を「一つのマルチメディアDAISY書籍のサブセット」として扱えれば、同じ書籍の点訳版や音訳版の検索性を高めるメタデータとしても利用できます。点訳データには点字に対応する読み情報だけが、音訳データには音声ファイルだけが含まれており、検索は容易ではありませんが、テキスト版とリンクしていれば、読みたい本の読みたい場所を簡単に探すことができるわけです。

    全国の点字図書館がとりまとめをしておられるボランティア活動の支援も、全視情協さんの検討課題となっています。私としては「点字版を作る」「音訳版を作る」という個別の作業の垣根を越えて「電子書籍の可能性」を広げていただける活動のお手伝いができればと感じています。

    こうした議論を通じて私は、DAISY があくまでも「書籍の出版」のメタファを逸脱しないように注意深く活動を進めておられると感じています。それに対して、全視情協さんがもう一つ検討しておられるのは「書籍というメディアを超えた地域密着型の情報サービス」です。

    私は意見を求められて「地域情報の件は、DAISY技術による「出版サービス」ではなく、むしろ「放送」だということを意識していただきたい」と発言しました。

    そして、会議終了後に、いま私が「放送的なサービスの代表格」だと考える Twitter の紹介を(私の理解した範囲で)させていただきました。

    正直なところ Twitter が現状の仕様のまま万人に広まるかどうかはわかりません。しかし既存の Web 上のサービスが持つ「出版的な部分」を徹底的にそぎ落とした結果生まれた「放送的なサービス」であると思います。

    例えば Twitter では「ある構造を持ったひとまとまりの情報を『何月何日付け』として発信する」のは不得意です。(だから先ほど私は Twitter での発言の「まとめ記事」をブログに書いたわけです)

    Twitter は「時間を超えるメディア」ではありません。時間を超えるメディアの考察は1年前に下記で行いましたが「ニコニコ動画」のような蓄積型の放送ではありません。

    Twitter はあくまでも「生放送」です。しかし、

    • 不特定の人に対して合理的かつ同報的に情報を伝達しようとする「通信の編集形式の一つ」

    という放送の定義を Twitter に当てはめると

    • 誰をフォローするか

    という単純な操作が「自分にとって合理的な情報」を選ぶことに対応しています。逆に言えば、それ以上なんの操作も必要ない(できない)ということが「放送的」です。

    そういえばミクシィで「マイミクシィ」「コミュニティ」を選ぶことで同じような感覚が得られました。私が2005年にIPA未踏ソフトウェアで採択された「ソーシャルネットワーキング型ラジオ番組のシステム開発」http://ora-be.nishimotz.com の最初の着眼はまさにこの感覚でした。

    「生放送的なメディア」である Twitter は、遠い過去の情報を検索することは得意ではなく、むしろ「フレッシュな情報」にこそ意味があるし「空間を超えた時間の共有」という感覚を強く持ちます。

    「人を選ぶこと=情報を選ぶこと」というコンセプトは決して新しいことではありませんが、特に情報システムの世界で普遍的になりつつあると感じます。例えば分散バージョン管理システム git および github.com に関する下記の記事

    はソフトウェア開発という課題において「誰もが発信者になれる時代」の情報管理術だと考えられます。

    「日記と掲示板=ソーシャルネットワーク」ではなく、具体的な目的と作業のために人と人が合理的に関わって情報を共有することこそが重要です。「ミクシィ的」なコミュニケーションにこだわらず、コミュニケーションを「出版的な機能」「放送的な機能」の諸要素に還元する発想が本質的に重要です。

    ダイレクトメッセージやReTweetといった独特の流儀は、やがてもっと洗練されたインタフェースに進化していくのではないかと思います(「引用の流儀」はまさに私が10年くらい前に研究していたテーマです)。マルチメディア化されたTwitterがもし実現するとしたら、それは素直に誰もが受け入れる可能性の高い「参加型テレビ」「参加型ラジオ」になるのでしょうが、そういう段階がありえるのか、あり得ないからこそ現在の「140文字のツイッター」の価値があるのか。

    私もイノベーションの傍観者ではなく当事者として(しつこく)関わっていきたいという思いを新たにしています。