PyCon mini Hiroshima と Python Boot Camp in 広島 のフォローアップ活動として、毎月最後の水曜日の夜に「すごい広島 with Python」を開催しています。
4月からはじめて3ヶ月やってみて、定着してきたので、やっと自信をもって報告してみることにしました。
毎週水曜日の定例の「すごい広島」は「もくもく会」なのですが、「with Python」は、なにかやってみて知見を共有する、というところに力を入れていて、いまのところライトニングトーク形式での開催が続いています。
私の提供した話題は5月は Django の環境構築、今月は某プログラミングコンテストの例題 with Python でした。
先月も今月も「Linux で Python の作業環境の構築ではまった」という話を聞いたので、情報共有サイトで言い尽くされているのに、と思いながら、繰り返し喋ったことをもう一度ここで書いておきます。
Linux のディストリビューションはたいてい Python 処理系に深く依存しています。なので、/usr/bin/python をアプリ開発に使ったり、逆に上書きしてしまうことは賢明ではありません。
パッケージで Python を入れたいという気持ちは十分に理解できますが、私は Python Boot Camp テキスト をいちど読んで、その方法を理解することをお勧めします。
このテキストでは Linux 向けの環境構築は「ソースからインストールしなさい」になっていて、不親切に見えるかも知れないのですが、実はデプロイ環境を作る手順として一番つぶしがきくというのが私の実感です。
つまり、ソースから素直にコンパイル・インストールして、例えば /usr/local/bin/python3 が存在する状態を作り、その python3 に紐付いた環境で作業をするということです。
丁寧にやるなら
/usr/local/bin/python3 -m venv env
で環境を作れば、ちゃんとその venv 環境では、自分がインストールした実行ファイルがパス指定なしに python や pip になってくれます。
(コマンド名が python3 か python かも気にしなくていい)
自分は /usr/local/bin しか使わないことにすれば、OS 環境への影響を心配する必要がありません。
デプロイ環境でも、面倒がらずに最初に env/bin/activate するのが安全と思います。
応用として、この手順は 2.7 系と 3 系を安全に切り替えたりするときにも有効です(詳細は省略)。
Windows では複数のバージョンの Python を使い分けるときに、まず最新の Python 3 系をインストールして、ランチャー(py.exe)と venv (virtualenv) を使えば、どの処理系にも事前に PATH を通す必要がない(はず)です。
上述した私の Django セットアップは「Boot Camp 方式」で仮想マシンの環境構築をしていますし、例題 with Python でも py.exe をちょこっと紹介しています。
ふだんは私は個人的な技術メモは別のサイトにこっそり書いていますが、この件は、きっと同じようなことをいろんな人がしつこく書かないといけないのだろうと思って、めずらしくブログに技術ネタを書きました。
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「つくれば工房」で MicroPython 体験会
この記事は たまに広島 Advent Calendar 2016 20日目の記事です。
広島で Python のカンファレンスを開催してきた PyCon mini Hiroshima 実行委員会の西本です。
その他に、オープンソースの Windows 用スクリーンリーダー NVDA の日本の開発者コミュニティ、NVDA日本語チーム、そして広島のコミュニティNVDA ユーザ会広島などをやってきました。
11月12日の PyCon mini Hiroshima の報告は PyCon JP のブログに書きました。
また 11月27日 OSC 2016 Hiroshima のセッション『jus研究会広島大会「ITコミュニティの運営を考える」』で NVDA のコミュニティについて喋らせてもらいました。開催レポートで詳しく紹介していただいています。つくれば工房
広島で「電子工作やLED手芸など自分で自由に作るものづくりの場」=「つくれば工房」を運営しておられる遠藤さんが PyCon mini Hiroshima 2016 に参加され、私が紹介した MicroPython について興味を示してくださったので、MicroPython 体験会を提案しました。
事前に見学をさせていただきました。
会場は広島市西区楠木町のアドウィンテクノ塾です。
お子さんから年配のかたまでいろんな人がいらっしゃって、Arduino や 3D プリンタなど、いろいろなことにそれぞれ取り組んでいらっしゃいました。
毎週土曜日に欠かさず開催されているそうです。ものづくりの「もくもく会」だと思いました。MicroPython体験会
ということで12月10日の「つくれば工房」にて「MicroPython体験会」を開催していただきました。
つくれば工房のウェブサイトに報告を掲載していただいているので、自分用の記録をここにまとめます。- 参加者 17人くらい。やはり年配の方からお子さん(お母さん同伴)まで。マイコン開発経験者もPython経験者もいらっしゃった。Windowsパソコンを持ってきたけどプログラミング未経験、というかたもいらっしゃった。
- スイッチサイエンスの ESPr One の持参を推奨したが、他の ESP8266 基盤を持参された方もいた。機材によってはLED点滅の実験のためにLEDをGPIOポートにつないでいただく必要があった。
- ファームウェアの書き込みのためにPCとMicroUSBケーブルで接続していただいた。充電はできるけど通信はできないMicroUSBケーブルもあり、サポートに手間取った。
- 西本が事前に確認したのは PC 側に Python 2.7 + esptool.py をインストールして書き込みをする手順だった。体験会をした部屋で WiFi がうまく使えなかったため、USB メモリで ESP8266 Flasher と MicroPython のバイナリ、ESPr One のUSBシリアルドライバなどを回覧してセットアップしていただくことになった。
- Windows に TeraTerm をインストールしていただいたら、バージョン 4.93 に文字化けの不具合があり、4.92 を入れ直していただいた。
説明したこと:
- nishimotzのサイトで紹介したLED1の点滅を、ターミナルから逐次入力でやってもらった。
- コンマとピリオド、コロンなど、文法を説明した方が間違えにくいということに気づき、基本的な Python の文法の説明をした。
- ペーストモードの説明をして、このLEDの点滅を def blink() のように関数として「メモ帳」に書いてもらって、ペーストモードで貼り付けてもらった。そうすると blink() だけで点滅を実行できる。
- 早くできた人は PWM でだんだん明るくなるコードを自分で試していた。
- トラブルシューティング:ペーストモードで改行が余分に入る。TeraTermの改行設定を送受信ともにCRにしてもらう。
- WiFiを触ってもらうと面白いのだろうが、いろいろ難しそうだったので今回は説明を見送り。
質問されたこと:
- WebREPL が動いてない:MicroPython 1.8.6 から初期化を実行しないと WebREPL が動かない仕様になった。
- 割り込みは?:ユーザーボタンを押すとメソッドを実行する、といったコードは動作を確認している。
- 起動すると自動的に実行するコード(main.py)をどうやって書き込むの?:WebREPLでアップロードするか、プログラムをファイルシステムに書き込むためのプログラムをターミナルで実行する。
- 本格的に使えるの?:処理系を自分でビルドすれば、C言語拡張モジュールを組み込むことができる。CQ出版「インターフェース」2016年10月号に情報あり。
私はいろいろ準備不足でしたが、ベテランのかたが気を利かせてサポートしてくださったおかげで、無事に体験会を行うことができました。
ふだん Arduino でマイコン開発を楽しんでおられるかたも何人かいらっしゃいましたが、MicroPython のメリットや面白さをなにか感じていただければと思います。
広島に Python Boot Camp を誘致する計画も進んでいますが、広島で MicroPython 体験会、いかがでしょうか。こんどやるときはもっと上手にやれると思うので、ご連絡ください。
自分が映ってる写真を撮り忘れたので、「つくれば工房」さんのサイトからお借りしました:
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電子工作のためのPython: MicroPython on the ESP8266
2016年11月12日に PyCon mini Hiroshima 2016 を開催しました。
開催報告記事は準備中ですが、まず私の発表を紹介しておきます。
作ったプログラムと回路図
準備のためにいろいろ実験していた記録
過去のIoTLT広島での私の発表の記録
録画(YouTube)
質疑応答の時間に「産業界での利用状況は?」というコメントがあり、産業界というよりも教育分野での盛り上がり(BBC micro:bit 対応など)のことしか触れなかったのですが、Damien George さんの講演(YouTube GOTO2016 の動画)では「宇宙開発への応用のための SPARC 移植版」などに言及されていました。開発者がもともとそういう分野の出身なのだそうです。思い出せなくてすみませんでした。。
私の発表では ESP8266 での動作状況だけをお話しましたが、もともとのターゲットである PyBoard などの ARM 系 CPU については、実行時にバイトコードではなくCPUのネイティブ命令を生成する機能など、性能を上げる処理がいろいろ実現されています。
西本さんの光線銃ゲーム、ディスプレイも付いてた #pyconhiro pic.twitter.com/hZFhFl0Fqh
— むじん@webエンジニア (@mu2in) 2016年11月12日
このブログ記事では、今回の発表をどのように準備したかを簡単に振り返っておきます。
まず9月末に ESPr One を入手し、MicroPython の書き込み、動作確認をしました。
そして手頃なセンサーやデバイスをいろいろESP8266の入出力につないでMicroPythonで動かしてみました。
明るさセンサー(NJL7502)は「IchigoJamではじめる電子工作&プログラミング (I・O BOOKS)」で紹介されていて、いずれ遊ぼうと思って入手していました。
また圧電サウンダ(ピエゾ圧電ブザー)は IchigoJamU に付属していたものをそのまま拝借しました。すでにモデルチェンジしているようなので、現在購入できるモデルにブザーがついているかどうかはわかりません。
超音波センサーHC-SR04は5月にソラコムのハンズオンをやった(IoTLT広島で紹介済み)ときのパーツです。
ESPr Oneからは5Vと3.3Vの両方の電源をとることができます。
HC-SR04は5V駆動で、ESP8266のGPIOは(Arduinoと同じ)3.3Vとのことなので、ECHO の入力側は抵抗で分圧しています。
こういうのは “Arduino 3.3V HC-SR04” で検索すると見つかるので、人気のあるパーツを選ぶと便利ですね。
MicroPython for ESP8266 の Quick Reference にはデジタルの入出力方式として SPI, I2C, OneWire が紹介されています。
今回 SPI は手頃なパーツがなかったので実験しませんでした。
I2C でつないだのは小型のディスプレイ(OLED)です。
MicroPython のライブラリや Adafruit のサイト記事や動画を見て SSD1306 というドライバーのものが簡単に使えると知ったので安価なものを Amazon で探しました。
TonyDさんは ssd1306.py を組み込んでビルドし直していますが、MicroPythonのソースに入っているドライバーファイルをWebREPLでアップロードすればそのまま動きました。メモリを節約したかったら組み込んでビルドしたほうがいいと思います。
OneWire は Quick Reference に書かれていた温度センサー DS18B20 をすでに入手していました。
Arduino や Raspberry Pi などの書籍や記事でよく出てくるパーツだったので買っておいたのでした。
手で触ると体温で温度が上がるのはわかるのですが、実際に組み合わせて使い道を思いつかなかったので、マイコンの起動直後に温度を表示して、18度から20度までの範囲だったら “good condition” と表示する、みたいな「しょうもない」使い方しかしていません。
OneWire はプルアップの抵抗が必要なのですが、ESPr One のボード内の(おそらくは Arduino のプログラミングモード切り替えのための)抵抗をそのまま使えるように GPIO のポート番号を選びました。
ESPr Oneにはスイッチがあって GPIO で値を読むことができますが、ボードをケースに入れてしまったせいで、細い棒のようなもので突かないと押せません。
じゃあ光センサーと超音波距離センサーをスイッチの代わりにするか、ということで、全体を「光線銃ゲーム」に仕立てることに決めました。
光センサーを「懐中電灯を当てたときに閾値を超える」ように AD 変換で使う抵抗の値を選び、超音波センサーは「距離測定を3回実行して80センチ未満が1回以上あったかどうか」を判定することで誤判定をなるべく回避するように実装しました。まあ誤判定しますけど。。
ゲームにつきものの乱数は MicroPython の math にはなくて os.urandom で得られるランダムなバイト列を使いました。
MicroPython の PWM は LED の明るさを変える目的で使われると思いますが、ここでは LED と圧電ブザーを並列につなぎ、メロディを流すのに使いました。
性能が足りないのか精度が足りないのか、高い音は綺麗に出ません。
音が出ているときはLEDも光ります。音を止める時は duty=0 にして信号が0になるようにしています。
ゲームそのものの実装とデバッグは本番直前の2〜3日でやりましたが、よく考えると(電子工作やマイコンに親しんでいた子供時代を含めて)人に見せるために電子工作やミニゲームを開発したのはこれが初めてだなあ、と思いました。
私が子供のころの電子工作はハンダ付けで組み立てるのが普通で、ブロックを組み合わせるような電子工作実験回路を羨ましく思ったものでした。
いま、こういう回路がブレッドボードで簡単に組み立てできて、入出力デバイスもモジュール化されて、マイコンとデジタルで繋がって、しかもPythonで対話的に開発、実行できる。
いい時代になったんだな、と素直に思った、そんなこの数日間でした。
私に懐かしい世界を思い出させてくれた IchigoJam も好きですが、MicroPython と ESP8266 も、教材が充実してくれば、子どもの遊びやプログラミングの教育に使えるのではないでしょうか。