投稿者: nishimotz

  • 国際会議への参加

    1日から12日まで出張し、フランスのパリとオーストリアのリンツで行われた国際会議に参加してきました。メール対応が滞ってしまったことなど、皆様にご迷惑をかけたことをお詫びします。発表内容はここ何年か東京女子大学と共同で行ってきた視覚障害者支援技術に関する研究でした(西本の発表リスト)

    Acoustics ’08 Paris では私はポスター発表で早口音声の知覚に関する報告をしたところ、du Poux 先生のグループの研究(文献など)を教えていただいたり、Univ. Washington の Richard Wright 先生に興味を持って聞いていただくなど、貴重な情報を得ました。

    ICCHP 2008 Linz は障害者支援技術に関する隔年の国際会議で、私が幹事をやっている福祉情報工学研究会に近い雰囲気でした。私は視覚障害者と対面朗読者の対話についての発表をして、座長を含む何人かの視覚障害者にも聞いていただきました(論文へのリンク)。発表者はヘッドセットをつけて音声をストリーミング配信。他には国際手話言語の通訳つきセッションもありました(ストリーミングのページへのリンク)

    予稿集は約1300ページで、支援技術の実践的な事例、プロジェクト紹介、各国の行政の取り組みなど幅広い内容です。擬人化エージェントによる高齢者や知的障害者の支援、視覚障害者のための音楽教育、といった発表もありました。

    様々な場面でフランス語やドイツ語がわからなくて不便な思いをしました。一方で、観光地や料理店などでは日本語の看板をちらほら見かけました。書店では日本のコミックがたくさん売られていました。もっと世界中のことを考えて仕事をしなくてはいけないなあと改めて感じました。

    以上、今後の活動や研究に行かしていきたいと思います。

    • [追記 2008-07-15] ICCHPの論文へのリンク(Springer)を追加しました。
  • C++Builder 2007 でのウィンドウメッセージ処理

    エンバカデロによる買収が決まったCodeGearですが、個人的には応援しています。

    Delphi は使いやすく、情報も豊富なのですが、私はとっくに Pascal よりも C++ に慣れてしまったので、できれば C++ Builder をメインに使いたいところです。

    Delphi の参考書や資料の多くは VCL について説明しているので、そのノウハウのかなりの部分は使えます。

    しかし C++ Builder に固有の話題についての情報はとても少ないのが現状です。

    Windowsプログラミング逆引きクロス大辞典

    Windowsプログラミング逆引きクロス大辞典

    「Windowsプログラミング逆引きクロス大辞典」にはTurbo DelphiとTurbo C++というかたちで、VB6 や .Net との比較がなされています。

    Turbo C++はC++Builderだと思って読むことができるので、CodeGear RAD Studio 2007を使う上で重宝しそうです。

    Delphi で「メッセージメソッド」と呼ばれている機能の実現方法が今日やっとわかりました。忘れないように書いておきます。

    mciSendString を使って mp3 ファイルを再生して、再生終了のメッセージを MCI から受け取る例です。

    VCLフォームアプリケーションにボタンをひとつ貼り付けて、以下のように記述。

    mmsystem.h をインクルードしないと MM_MCINOTIFY が未定義になります。

    C:\tone_a.mp3 を用意してボタンを押すと、音声再生が終了したらメッセージボックスが表示されます。

    //---------------------------------------------------------------------------
    // Unit1.h
    #ifndef Unit1H
    #define Unit1H
    //---------------------------------------------------------------------------
    #include <Classes.hpp>
    #include <Controls.hpp>
    #include <StdCtrls.hpp>
    #include <Forms.hpp>
    //---------------------------------------------------------------------------
    // by nishimotz
    #include <mmsystem.h>
    //---------------------------------------------------------------------------
    class TForm1 : public TForm
    {
    __published:	// IDE 管理のコンポーネント
    TButton *Button1;
    void __fastcall Button1Click(TObject *Sender);
    private:	// ユーザー宣言
    void __fastcall MMMCINotify(TMessage &Msg);
    BEGIN_MESSAGE_MAP
    VCL_MESSAGE_HANDLER(MM_MCINOTIFY, TMessage, MMMCINotify)
    END_MESSAGE_MAP(TForm);
    public:		// ユーザー宣言
    __fastcall TForm1(TComponent* Owner);
    };
    //---------------------------------------------------------------------------
    extern PACKAGE TForm1 *Form1;
    //---------------------------------------------------------------------------
    #endif
    
    //---------------------------------------------------------------------------
    // Unit1.cpp
    #include <vcl.h>
    #pragma hdrstop
    #include "Unit1.h"
    //---------------------------------------------------------------------------
    #pragma package(smart_init)
    #pragma resource "*.dfm"
    TForm1 *Form1;
    //---------------------------------------------------------------------------
    __fastcall TForm1::TForm1(TComponent* Owner)
    : TForm(Owner)
    {
    }
    //---------------------------------------------------------------------------
    void __fastcall TForm1::Button1Click(TObject *Sender)
    {
    mciSendString("open \"c:\\tone_a.mp3\" type Mpegvideo alias mp3", NULL, 0, 0);
    mciSendString("play mp3 notify", NULL, 0, Form1->Handle);
    }
    //---------------------------------------------------------------------------
    void __fastcall TForm1::MMMCINotify(TMessage &Msg)
    {
    ShowMessage("done.");
    mciSendString("close mp3", NULL, 0, 0);
    }
    

    END_MESSAGE_MAP(TForm) の後ろのセミコロンを忘れて、しばらくはまりました。

    VCL_MESSAGE_HANDLER に関する情報は RAD Studio のヘルプでも CodeGear のサイトでも見つけることができず、個人の方のウェブサイトを参考にさせていただきました。

  • 神戸アイライト協会見学会

    2008年5月31日(土)福祉情報工学研究会(電子情報通信学会SIG-WIT)では、NPO法人・神戸アイライト協会(兵庫県神戸市中央区)の視覚障害者通所施設およびIT支援施設の見学会を行いました。

    参加者は私を含めて5名。理事長の森さまをはじめ、多くの方に快くご対応いただいたことを感謝します。私は1月の島根での見学会に続いて、ここでも様々なことを学ばせていただき、たいへん貴重な時間になりました。

    以下、忘れないうちに私のメモを書き起こしてみました(文責は私にあります。誤りやお気づきの点がありましたらお知らせください):

    • この建物(中山記念会館)は1年前に改装された、視覚障害関連の6つの団体(NPO法人およびボランティア団体)の活動拠点「神戸ライトセンター」の建物。
    • 中山記念会館は「財団法人 中山視覚障害者福祉財団」の財団事務所でもある。
    • 明日は「第2回 神戸ライトセンターまつり」で多くの団体の関係者が集まるとのこと。

    神戸アイライト協会について。

    • 神戸アイライト協会さんは歩行訓練などの通所施設(アイライト新神戸)と、視覚障害者のPC利用支援施設「アイライトITファーム」を運営。他にも訪問サポート、社会参加支援、講習会の指導、イベント、ガイドボランティア養成など、さまざまな活動。
    • 特徴は「地域に密着した活動」「行政や特別支援学校では対応できない曖昧な(漠然とした?複雑な?)要求や悩みに関する相談や対応」。昨年度は500件の相談に対応。
    • 近いうちに仕事を作って就労支援をしたい。

    中山記念会館の各フロアの見学。

    • 「アイライトITファーム」では主に音声でのPC利用を指導。数人が個人指導を受けておられた。レベルはさまざま。講習会も実施している。
    • 視覚障害者のための便利グッズを紹介するコーナー。音声読み上げの時計や電卓、弱視者向けの文房具や調理器具、さまざまな白杖の見本も。
    • 音楽や手工芸などの教室。拡大ルーペでビーズ作品作りに取り組んでいる。晴眼者より器用な方もおられる、とのこと。
    • 神戸アイライト協会さん以外の、音訳ボランティア、点訳ボランティア、伴走者などの団体の活動場所も。さまざまな大きさの会議室、集会スペース、対面相談室など。

    質疑応答、意見交換など。

    • 理事長の森さんは目の病気になったことがきっかけで盲学校勤務。歩行訓練士の資格取得中に、日本ライトハウス(大阪)や京都ライトハウスのような施設がなく、訪問事業が神戸にないことを知る。1999年、自身で設立されることを決意。2年目からPC支援にも取り組む。
    • 視覚障害者のニーズは多岐にわたる。多様なニーズに1つの施設で対応できれば当事者に便利である。そのような考えから、中山財団と協力して神戸ライトセンターを開設。
    • この施設ができて、相談や歩行訓練のニーズは増えたが体制が追いつかない。スタッフを増やす努力をしている。
    • 研究者・技術者との連携は? 試作されたソフトウェアのモニター依頼はある。協力はできる。可能ならばモニター協力費など金銭的支援があれば、ありがたい。
    • 視覚障害者の外出支援をする地域組織。全国ネットワークがある。電子メールで申し込みができる。

    「アイライトITファーム」担当の方に同席していただき、視覚障害者のPC利用について伺う。

    • PCを購入した後で「最低限の設定」が自分でできなくて困る方が多い。3D視覚効果をオフにするなど。買ったあとで困ってやってくる方が多い。最低限のサポートをしてくれるお店で買うのがよい。
    • PCやソフトを購入する前に情報を得る場がない。
    • 企業で購入する場合は「助成を得ること」しか考えておらず、必要なものが足りない、ということも多い。例えばタイピング練習ソフトは視覚障害者には必須だが買われていない、など。
    • インターネット利用で最近お困りなのは画像認証。介助者が代行している。
    • PCがフリーズする頻度は昔も今もあまり変わらない。ただ諦めるのではなく、「開いているウィンドウの数だけでも読み上げられないか」など、何か情報を得るように指導している。
    • PC利用ニーズは多様。全盲でも写真を楽しむ方がおられる。名刺やはがきに写真を入れて印刷したい、など。プレゼン資料作成に使えるスクリーンリーダーは限られる。
    • 「ITファーム」では生活支援利用が中心なのでビジネス向けソフトの支援はあまり行われていない。
    • PCではないが、携帯電話(らくらくホン)の相談も時々ある。

    帰りに私は、

    • 「視覚障害被災者の10年 阪神・淡路大震災メモリアルイベントの記録」神戸アイライト協会・編(2005) ISBN4-86055-242-3

    を購入。私は先ほどまで東京に戻る新幹線の中で、この本を読んでいました。

    ゆうべメリケンパークで見た神戸港の震災の傷跡を思い出しました。

    私は1996年に京都に移ってから「1995年の震災をきっかけに人生が変わった」という方と何人も出会いました。そんな出会いがなかったら、私は「ウチコミくん」を開発することもなく、いまこうやって障害者支援に関わっていなかったと思います。

    これまでにも何度か神戸を訪れたことはあるのですが、今回やっと、私はこの街のことをまともに知る機会を得た、そんな気がします。

    神戸の街を少しだけ歩いていて、高層マンションやショッピングモールがあちこちに建ち並ぶ街を「きれいだなあ」「きれいになったんだなあ」と思いました。

    しかし森さんにその私の感想を言うと、森さんは「昔は高い建物がなかったから、今の方が汚くなったと思います」とおっしゃいました。

    その「高層ビルがあることを汚いと感じる感覚」にも、私には頷けるところがあります。

    偶然なのか、運命なのか、7月のWIT研究会は、やはり大きな地震を経験した「新潟」での開催です。

    ■追記(2008-06-02) 写真を下記「はてなフォトライフ」に登録しました。

    ■追記(2008-06-04) 神戸アイライト協会さまから御教示いただき、一部の記述を訂正しました。