NVDA 日本語版スナップショット 120206 + 雑感

nvdajp プロジェクトから NVDA 日本語スナップショット jpdev120206 を公開しました。
本家の 2012.1beta1 よりも少し新しいバージョンがベースになっています。
日本語入力に関する改良に手間取っていたのですが、やっと安定してきました。
Microsoft Word 2010 での日本語入力の読み上げが私の環境で動いています。
まだいろいろ不具合はあると思うので、ご報告いただければ幸いです。
一般的なご利用のときは安定版 2011.3j をお使いください。

日本の NVDA コミュニティを支援したい、あるいは NVDA 開発者の協力を得たい、というお話をいただくようになってきました。
たいへんありがたいことですが、まだまだNVDA日本語版はソフトウェアとしても組織としても未熟、実力不足です。

いろいろな方とお話を重ねるうちに、下記のことを大事にしたい、と思えてきました。

(a) オープンソース開発者が楽しんで活動できる場を作る

オープンソースソフトウェアのコミュニティは、金銭的な報酬とは異なる価値を求めて行動する人たちの集まりです。
NVDA日本語化プロジェクト(現在は nvdajp プロジェクトと名乗っています)、そして NVDAユーザ会広島 は、オープンソース関係者の交流会や勉強会を通じて、技術を共有しお互いを高め合う楽しさと喜びを学んできました。

NVDA日本語版の技術課題のひとつは「日本語」です。日本語の音声合成や自動点訳を継続的に改良する必要があります。そのために必要な知識を共有したいという思いから、NVDAユーザ会広島NLTK (Pythonによる自然言語処理のツールキット)の勉強を始めます。
2月25日から行いますので、ご興味があれば(NVDAにこだわらず)ご参加いただければ幸いです。

なお、次回の開発者Skype会議は2月8日(水曜日)21時から23時です。id: nishimotz にメッセージいただければ対応します。

(b) オープンソース中心の支援活動を行う

視覚障害をお持ちの方のための支援技術として、さまざまな製品が開発され、色々なサービスが提供されています。
NVDA 日本語版のコミュニティは、こうした分野における既存の市場を破壊したいわけではありません。
ただ NVDA 本家の目標である「晴眼者と同じコストでコンピューターを使える環境」が「日本でだけ実現されない」という事態を回避したいと考えています。
そして、オープンソース活動を通じて「ヒューマンインタフェースの技術革新」を促進したいと思います。
そのためにも、オープンソースのアプリケーション(Firefox, Thunderbird, OpenOffice.org, LibreOfficeなど)のサポートを最優先にしたい、と考えています。
有償のアプリケーション、特別なハードウェアを NVDA で活用するためのサポートは、基本的にその製品のベンダーや販売店の方々にお任せできるような、そんな状況を作りたいと考えています。

(c) 視覚障害支援コミュニティとの信頼関係を築く

私個人はNVDAユーザ会広島と並行して VIC(広島市視覚障害者情報支援センター) の会員として活動をはじめました。
最初は「PC-Talker も JAWS もちゃんと教えられませんよ」と言い訳をしながら例会に出席していたのですが、ただ「目をお貸しする」だけでも「役に立った」と言っていただけて、嬉しく感じました。
そして昨年10月には VIC のステップアップ講習会で NVDA を取り上げていただきました。
一方で私もスクリーンリーダーの利用者がどのような要望をお持ちで、どのような問題に困っておられるか、そしてどのようなツールが現状の解決策なのか、謙虚に学ばせていただいています。

私がこの分野に関わるきっかけは10年以上前の「ウチコミくん」(タイピング練習ソフト)の開発でした。
そのときも「視覚障害者のためのWindowsパソコン教室」を実際に見学させていただいたり、講師を努めておられる方のニーズを仕様に反映させたり、といったことを行いました。

日本のあちこちで NVDA に関わるコミュニティが立ち上がりそうな気配があります。
私はやがて「地域のNVDAユーザ会」があちこちで産声を上げたときに、それらを取りまとめる大きな枠組のあり方を、そろそろ模索したいと考えています。

最初に「視覚障害の支援に関わっておられるコミュニティ」の方々と十分にお話をすることが必要です。
どのような体制と活動であれば皆様のお役に立てるのか、どのような組織であればそれが実現できるのか、慎重に検討しなくてはならないと思います。

もう一つ、ユーザーの方々の相互の支援は大事ではあるのですが、目的や技術レベルの異なる方々が「単にメーリングリストやフォーラムで発言をやりとりする」だけでは、うまくコミュニティを築くことは難しいと思い始めました。
きちんとコーディネートされた双方向メディアを作りたい、そんな構想もいまNVDAユーザ会広島で進めています。

NVDA日本語版は実力不足、と言いつつも、日本語入力の読み上げ処理はだんだん「APIを正しく使った実装」に近づいています。
もう少し整理すれば、「日本語以外の言語にも対応したIME読み上げ機能」として、本家へのマージを提案できると思います。

昨年末、ソフトウェアのリリースに日本語と英語のリリースノートをつける努力を始めたところです。
日本のNVDAコミュニティの活動は、今後もできるだけ日本語と英語の両方で発信していきたいと考えています。