NVDA 2018.4jp と FocusHighlight の現状

無料(オープンソース)の Windows 用スクリーンリーダー NVDA (NonVisual Desktop Access) の 日本における開発コミュニティである NVDA 日本語チームは、 2018年12月17日に NVDA 2018.4jp をリリースしました。

インストーラーのダウンロードはこちらからどうぞ:

https://i.nvda.jp/

GitHub リリースも利用できます:

https://github.com/nvdajp/nvdajp/releases/tag/release-2018.4jp

Windows 10, 8.1, 8, 7(SP1) の32ビット版および 64ビット版に対応しています。
Windows 8 以降ではタッチ操作が利用できます。
NVDA 日本語版のライセンスは GPL v2 です。

NVDA は多くのアプリに対応し、 インストール不要で利用できるポータブル版、アドオンによる機能拡張など、さまざまな特長を備えています。

NVDA 日本語チームがリリースする NVDA 日本語版は、オーストラリアの非営利法人 NV Access がリリースする NVDA 本家版に日本語の音声エンジンと点訳エンジンを追加するなど、日本語 Windows 環境のための改良を行っています。

NVDA 2018.4 のハイライト

・Mozilla Firefox の最近のバージョンにおける性能の改善
・音声エンジンに依存せず絵文字を読み上げる機能
・Outlook の返信済みや転送済みなどの報告
・Microsoft Word でカーソル位置からページの端までの距離を報告する機能

設定ダイアログの主な変更点

「音声」カテゴリ
「記号と絵文字の説明にUnicodeコンソーシアムのデータを使用」
が追加されました。

「オブジェクト表示」カテゴリ
「バルーン情報の報告」が「通知の報告」に変更されました。

NVDA 日本語チームによる 2018.4jp の主な変更点

・Excel でテーブルの行列の見出しが点字ディスプレイに表示されない不具合の修正
・単独で使われるアットマークの点字表記を「56-246」に変更
・「ヘルプを独自のウィンドウで開く」の既定値をチェックなしに変更

詳細

下記を参照してください。

NVDA 2018.4 最新情報
https://www.nvda.jp/nvda2018.4jp/ja/changes.html

日本語版 2018.4jp の更新内容
https://github.com/nvdajp/nvdajp/milestone/16?closed=1

Focus Highlight の現状

NVDA 2018.4 で行われた変更の影響で、Focus Highlight アドオンで Firefox や Chrome を使う場合に、ブラウズモードでフォーカスの位置しか表示されません。

以前は見出しジャンプで移動した見出し要素を緑の点線で確認できたりしていました。

調査したら、ナビゲーターオブジェクトが取得できないのではなく、ナビゲーターオブジェクトが移動したというイベントが取れなくなったため、画面表示が更新されないようです。

(ためしに、ハイライト位置を更新するキーコマンドを作って実行すると、うまく表示できている)

回避方法をいったん見つけたものの、 NVDA の再起動や終了が不安定になってしまったため、リリースに至っていません。

本来 NVDA に備わっていてほしい API が足りないことを、アドオン側で無理やり補ってきたのですが、いまや本家がAPIを整備してハイライト機能を実装しようとしているので、そちらに協力するほうがよさそうです。

そろそろ私のアドオンは潮時なのかも知れません。

NVDAのこれから

このエントリーは Webじゃないアクセシビリティ Advent Calendar 2018 の12日目の記事になります。

NVDA日本語チーム の西本です。ふだんは広島県広島市にいます。オープンソースのスクリーンリーダー NVDA の日本語対応に関わりながら、NVDA 日本語版のリリースを続けています。ウェブアクセシビリティ基盤委員会 WAIC WG2 にも参加しています。

今年は自分の会社 シュアルタ を設立しました。
NVDA に関するコンサルティングや受託開発を、株式会社シュアルタでお受けするのでよろしくお願いします。

後述するように NVDA と Windows アクセシビリティを取り巻く環境は2019年にも大きく変化します。
視覚障害者の雇用などで NVDA を活用したい企業や団体などの法人に向けて、コンサルティング契約により NVDA の技術サポートを提供します。
現在は申込受付の準備中です。
詳細は info@shuaruta.com にお問い合わせください。

Windows と Edge のこれから

Webアクセシビリティ Advent Calendar 2018 の4日目として NVDAのブラウズモード という記事を書いて、「Microsoft が Chromium 技術で作ったデスクトップアプリ」の紹介をしたら、直後に Microsoft Edge が Chromium に移行するという発表がありました。
momdoさんの日本語訳

そこまで Chromium 大好きになってたのか。。

Windows 10 がリリースされた直後に NVDA は Microsoft Edge をちゃんとサポートできていない、という宣言をしたのが懐かしいですね。
最大の理由は Internet Explorer 11 がサポートしてきたアクセシビリティAPIを Edge が廃止して UI Automation という技術に移行してしまったから、なのですが、その後、長い間をかけて Microsoft と NV Access は Edge が NVDA でちゃんと動き、性能的にも問題がないようになった、というのが2017年の終わりごろでした。

Chromium になった Edge は、もはや Chrome や VS Code や Skype のようにきちんと NVDA で操作できるようになるのだろうな、と思ったら、今度は Microsoft が Chromium の UI Automation 移行を進める、という話になっています。ということは Edge と Chrome にちゃんと対応できたばかりの NVDA は、また新たな作業が必要になるかも。。

Windows スクリーンリーダーのワクワク・ドキドキ・ハラハラの日々はなかなか終わりそうにありません。

NVDAのこれから

Python 2 のサポートが2019年末に終了する、ということがわかっていたにも関わらず NVDA はいまだに Python 2.7 に依存しています。

あれやこれやのアップデートに対応する作業に NVDA が追われることがなければ、もっと前向きな作業ができたのではないか、と言われそうですが、私は「もともとスクリーンリーダーというのはそういう運命のもの」だと思っています。

つまり OS やアプリやコンテンツが「理想的に作られていない」ことで起きる不具合を「取り繕う」のが、スクリーンリーダーの(本質とまでは言わないけれど)「重要な価値」になってしまっています。

なので「スクリーンリーダーの未来は?」と聞かれると、「スクリーンリーダーがなくなる」は言い過ぎとしても「スクリーンリーダーが単純になるのが理想の未来」と私は答えます。

話を戻すと、NVDA は来年 2019.1 から 2019.4 までの4回のリリースを行うあいだに、互換性を切り捨てて大きく変わり、Python 3.7 あるいは Python 3.8 を積んでパワーアップした NVDA に生まれ変わります。

ですが、そのパワーアップは、ユーザーには「何の得にもならない」と思われる可能性が高いです。

Windows XP のサポートが終わったときにも、Firefox で WebVisum が動かなくなったときにも、ガラケーで Web サイトが閲覧できなくなったときにも、むかしの Visual Basic で書かれたアプリが動かなくなったときにも、同じような話がありました。

今度は NVDA にその試練が降りかかる番ですね。。
たぶん NVDA 2018.4 やその日本語版を、アップグレードしないで何年か使い続けたい、という要望が出るだろうなあと覚悟をしています。
まあ、そういう使い方をする PC を割り切って温存するのは「アリ」かも知れません。。

ユーザーが直接得をしない「新しい技術への移行」は、そうは言っても、標準化、ソフトウェア開発、セキュリティ、オープンソース、など多くの企業やコミュニティの活動が関わって作られた「大きな流れ」であり、逆らうことは「孤立」を意味します。

そして「孤立」は「コンピューターとインターネットを学びたい、楽しみたい、活用したい」というスクリーンリーダー利用者には「残念な」選択だと思います。

実はまだ NVDA コミュニティは NVDA を Python 3 に移行させるための技術的課題を完全にはクリアできていません。

私の手元で動いている Python 3.7.1 版 NVDA は、今日やっとフォーカスハイライトが動いたところですが、まだ重要な機能がボロボロと欠けている状態です。

大丈夫なのか、ほんとにやれるのかよ、と心配しています。

来年は NVDA 日本語版よりも、まず本家 NVDA コミュニティのチャレンジを支えたい、と思っています。

NVDA 日本語アルファ版の新しい仕様

ここからはメーリングリストに投稿した内容です。

現在 NVDA 2018.4 のリリース候補版が出ていて、NVDA 日本語ベータ版 nvda_2018.4jp-beta-181210j はその変更が反映された、事実上の日本語リリース候補版になっています。
来週中に 2018.4jp の正式版もリリースできると思います。

本家は NVDA 2019.1 に向けた作業を進めており、日本語アルファ版では 2019.1 に向けた変更をテストしています。

最新の日本語アルファ版で、NVDA のアドオンについて大きな変更があるので、お知らせしておきます。

以下の説明を読んで、不都合と思う場合は、前もってリリース版やベータ版に移行することをお勧めします。

2019.1 以降の NVDA は、原則として、アドオン開発者によって互換性が確認されたアドオンだけをインストールできます。

アドオン開発者は、互換性を確認していることを知らせるために、アドオンを作り直して公開する必要があります。
先日リリースした focusHighlight 5.4 ではこの問題を修正しています。

NVDA 2019.1 系の日本語アルファ版をインストールするときに、従来のアドオンがインストールされていると、
「アドオンの互換性について了解しました」
というボタンが表示される場合があります。

ですが、そのボタンを押してインストールを実行するだけだと、互換性のないアドオンはすべて無効化されてしまいます。

インストールを実行する前に「アドオンの互換性の確認」というボタンからダイアログを開き、それぞれのアドオンについて「有効にする」のチェックボックスをチェックすれば、従来のアドオンを使い続けることができます。

この作業は、すべてのアドオンについて必要です。
(NVDA をインストールし直すたびに必要かどうかは再調査中です)

アドオンをたくさんインストールしている場合や、頻繁に NVDA 日本語アルファ版を更新している人には、かなり面倒ではないかと思います。

場合によってはベータ版や安定版に切り替えたほうがよい、というのはそういう理由です。

この数日、本家では、この仕組みのリリースで大きな混乱がありましたが、メーリングリストなどの議論を読んでいるかぎりでは、アドオンの互換性チェックを見直すつもりはなさそうです。

NVDA が依存している Python を2019年末までに 2 から 3 に切り替えて、そのほかの NVDA の内部の改良を進めるために、アドオン開発者に対応をしてもらう必要があり、その準備としてこの機能が必要だと考えられているためです。

NVDA 日本語版についても、こういう仕組みになったことを早く知っていただこうと考えています。

インストール時のアドオンの操作についてのメッセージは、日本語アルファ版では日本語に翻訳しました。
通常よりも早いタイミングで翻訳作業をしたので、不完全な部分があるかも知れません。

従来動いていたアドオンが「手動で有効化」すれば動くかどうかは、アドオンごとに状況が異なりますが、2019.1 で動いているとしても、アドオンそのものが更新されなければ、2019.4 や 2020.1 で動かない可能性が高いです。

新しい日本語アルファ版を試してもらい、どのアドオンで不都合なことが起きるかを調べながら、NVDA 日本語チームの取り組むべきことを検討したいと思います。

アドオン開発者のための補足

アドオン開発者のための公式の説明は developerGuide に書かれています。

https://github.com/nvaccess/nvda/blob/master/developerGuide.t2t

具体的には manifest ファイルに

minimumNVDAVersion = 2017.4
lastTestedNVDAVersion = 2018.3

のように記載します。
前者を「最小要件の NVDA バージョン」
後者を「動作確認済みの NVDA バージョン」
と日本語では表記しています。

未来のバージョン番号を 2019.2 のように書いてもエラーにはなりません。
(が、最新のアルファ版のバージョンにしておくべきという本家のMLでの議論あり)

2019.1 と書くと本家版 2019.1 とも互換性があり、NVDA 日本語版 2019.1jp とも互換性がある、と解釈される見込みです。
(日本語版でしか動かない、みたいなチェックは想定していません)

本家のコミュニティで公開されているアドオンのテンプレート
https://github.com/nvdaaddons/AddonTemplate
こちらには
updateChannel
という項目もありますが、これは本家の addonUpdater で使われる項目で、不要な場合は None にしておきます。

focusHighlight の buildVars.py も紹介しておきます。

https://github.com/nvdajp/focusHighlight/blob/master/buildVars.py

NVDAとアドオン開発者のための補足の補足

ユーザーには何の役にも立たないように見えるであろう「NVDA の Python 3 移行」ですが、NVDA の現在と未来の開発者が幸せになれる、というメリットが、めぐりめぐって NVDA のユーザーを幸せにする、という展望があります。

例えば、いままで NVDA が日本語環境でうまく動いていない不具合の多くは「Windows で日本語の文字コードが使われている場合だけで起きる問題」の見落としでした。

Python 3 への移行で、そのような不具合が起こりにくくなる、と私は期待しています。

おまけ:今年出演したポッドキャスト(再掲)

サイトワールド2018特集 第6回 NVDA日本語チーム(日本視覚障害者ICTネットワーク JBICT ポッドキャスト)

AccSell ポッドキャスト第140回: 「こういうもの俺自分で作らなくて良い時代になったんだ」

わしポ 9: Kinsai PyCon mini Hiroshima (nishimotz)

NVDAのブラウズモード

このエントリーは Webアクセシビリティ Advent Calendar 2018 の4日目の記事になります。

NVDA日本語チーム の西本です。ふだんは広島県広島市にいます。オープンソースのスクリーンリーダー NVDA の日本語対応に関わりながら、NVDA 日本語版のリリースを続けています。ウェブアクセシビリティ基盤委員会 WAIC WG2 にも参加しています。

今年は自分の会社 シュアルタ を設立しました。以前から NVDA に関わる研究や調査・開発にフリーランスの立場で関わっていましたが、今後は NVDA に関するコンサルティングや受託開発を、株式会社シュアルタでお受けするのでよろしくお願いします。

NVDAのブラウズモード

ブラウズモードさえなければ NVDA の操作は基本的に Windows の操作です。Windows やWebブラウザに備わっている機能の不足を補っているのがNVDAの「ブラウズモード」です。

一方でブラウズモードが理解できないと「Windows がおかしくなった」ようにさえ思えます。

NVDA のブラウズモードについては、講習会用の教材として(図がなくて申し訳ないですが)「NVDA日本語版ガイドブック」を公開しています。

ブラウズモードの理解に「フォーカスハイライト」アドオンが役立つという話は2016年の記事に書きました。

今年「アクセシビリティの祭典」にあわせて作った「NVDAチートシート」も「ブラウズモードの仕様をいかに可視化するか」が大きな目的でした。

NVDAチートシートの一部

11月にサイトワールド2018で開催した「NVDA体験会」でも、ブラウズモードの説明のセッションを担当しました。そのときに、他のスタッフから「最近の Skype は NVDA のブラウズモードで操作すると便利だ」と教えてもらいました。

ご存知のとおり、最近はデスクトップアプリを Web 技術(いわゆる Electron )で開発することが増えています。

NVDA では「ブラウズモードは Web コンテンツだけではなく PDF や HTML メールや電子書籍なども対象にしていて、それらをできるだけ一貫性のある方法で操作できる」ことを目指しています。

ここでは「Webアクセシビリティ」とはちょっと離れてしまいますが、ブラウズモードで覗いてみるとちょっと興味深いアプリを2つ紹介します。

Visual Studio Code 1.29.1

最初は Visual Studio Code です。

Visual Studio Code

Electron が使われていること、オープンソースで開発されていること、などが知られています。また、アクセシビリティに配慮されており、NVDA に対応しています。スクリーンリーダーで使いこなすのはなかなか大変と思いますが、まあ私も使いこなせてるとは言えませんね。。

VS Code には「スクリーンリーダー互換モード」のようなスイッチがあります。これが有効になっていないと、テキストエディタの行単位の読み上げがあまりちゃんと動きません。モードが自動切り替えに設定されている場合は、NVDAが動いているかどうかを判断して、モードを切り替えますか?みたいに聞いてきたりします。

スクリーンリーダー互換モードをずっと有効にしていると、行の折り返し表示が期待通りに機能しません。どうやら、論理行と物理行を一致させることを前提にスクリーンリーダー対応を実現しているようです。

さて、その設定ですが、Settings の画面の中にコンボボックスがあります。

フォーカスハイライトが赤くなるのは、ブラウズモードだからですね。。

Visual Studio Code の「アクセシビリティ サポート」設定

ブラウズモードなら「要素リスト」が使えるはずなので NVDA+F7 を押してみます。フォームフィールドの表示に切り替えると、

Editor Accessibility Support コンボボックス・折りたたみ on

のように、この設定項目が現れます。

Visual Studio Code の設定画面で NVDA の「要素リスト」ダイアログから「フォームフィールド」を表示

この要素リストで「ランドマーク」に切り替えると、「コンテンツ情報」「ナビゲーション」「メイン」のランドマークがあり、メインの中にさらに「Settings フォーム」という項目も見つかります。ランドマークの「フォーム」は解説に書いてあるけど、あまり見たことなかったです。。

Visual Studio Code の設定画面で NVDA の「要素リスト」ダイアログから「ランドマーク」を表示

VS Code はフォルダーを開くとその中のファイルを複数開いて切り替えながら編集ができます。そのファイルを探したり切り替えたりする画面要素はテキストを編集する部分の左側にあり、「エクスプローラー」という名前になっていて、ツリービューのような表示になっています。その状態で「要素リスト」を開くと、下記のような画面になります。

種別「見出し」では「開いているエディタ」「フォルダ名(その内容を表示できる)」「アウトライン(プログラミング言語のクラスやメソッドや変数の定義などをツリー表示できる)」の項目が見つかります。ということは、見出しジャンプできたり、要素リストから移動できるわけですね。。

Visual Studio Code のファイルエクスプローラーで NVDA の「要素リスト」ダイアログから「見出し」を表示

Skype 8.34.0.78

Skype for Windows も最近のバージョンは Electron で作られています

たしかに NVDA+スペース でブラウズモードとフォーカスモードに切り替わるし、テキスト入力のところに移動すると「ガシャ」と音がして、自動的にフォーカスモードに切り替わったりします。

Skypeチャット画面 全体がフォーカスハイライトの赤い枠で囲まれている

要素リストで「見出し」を確認すると、チャット画面の日付が見出しになっていました。この例では「2017年5月7日」と「今日」という2つの見出しがあります。

要素リスト「見出し」

ブラウズモードで H と Shift+H を押すと、日付の区切り線のようなところにジャンプできます。

以下は「2017年5月7日」に移動したところ。

Skypeチャット画面 日付2017年5月7日のところがフォーカスハイライトの赤い枠で囲まれている

以下は「今日」に移動したところ。

Skypeチャット画面 今日のところがフォーカスハイライトの赤い枠で囲まれている

Web コンテンツであれば「見出し」にはレベルがあって、レベル2の見出しには数字 2 を押すとジャンプできるのですが、この Skype チャットの日付は「レベル1から6」のどれにも当てはまらない「レベルなしの見出し」でした。いずれ詳しく調べてみたいと思います。興味深いですね。。

ブラウズモードで E を押すと「エディットフィールドにジャンプ」ができるので、この Skype のチャット画面では、チャット入力コントロール(ここに入力と書かれている場所)にジャンプできます。

Skypeチャット画面 ここに入力という箇所がフォーカスハイライトの赤い枠で囲まれている

文字を実際に入力するためにはフォーカスモードに戻す必要があります。

Skypeチャット画面 ここに入力という箇所がフォーカスハイライトの青い点線の枠で囲まれている

上下の矢印キーでエディットに移動するとフォーカスモードに自動的に切り替わるのですが、1文字ナビゲーションの E で移動すると、ブラウズモードのままになりますね。。

以上、ブラウズモードで Web コンテンツっぽい操作ができるアプリの実例を紹介しました。

仕事では iOS で WebView を使うアプリの開発もするのですが「Web 技術をアクセシブルに使う」と VoiceOver でだいたいちゃんと使えます。

見えないところも、きれいに正しく作れたらいいですよね。。

アプリやコンテンツのアクセシビリティ検証に NVDA を使ってくださる皆様、イベントのサポートや寄付などのご支援をしてくださる皆様、ありがとうございます。これからも NVDA 日本語チームをよろしくお願いします。

おまけ:今年出演したポッドキャスト

サイトワールド2018特集 第6回 NVDA日本語チーム(日本視覚障害者ICTネットワーク JBICT ポッドキャスト)

AccSell ポッドキャスト第140回: 「こういうもの俺自分で作らなくて良い時代になったんだ」

わしポ 9: Kinsai PyCon mini Hiroshima (nishimotz)

PyCon mini Hiroshima 2018 終了

PyCon mini Hiroshima 2018 が無事に終了しました。
有料イベントになったにも関わらず、60人以上の人にご参加いただくことができました。

私は実行委員長として、また企業・団体パトロンの株式会社シュアルタとして、そして「舞え!ひろしま Kaggler」講演者として、あわただしい一日でした。

まだまだ記録とか精算とか報告作成とかやっている途中です。

Togetter まとめ

いつものように最後にスタッフみんなでご挨拶した写真。

まだ広島で Python 流行ってないの?と言わせてるみたいなスローガンでしたが、今回は「広島で流行らせよう!」というテーマをすこしずつ実践できていけそうな、そんな一日でした。

今後ともよろしくお願いします。

アクセシビリティの祭典 2018 と NVDA チートシート

2018年5月17日(木曜)に神戸で開催される「アクセシビリティの祭典 2018」に、NVDA 日本語チームとして出展を行い、また「視覚障害を持つ方の最新事情」セッションに登壇します。

配布資料を準備していたのですが、もっと役に立つものを提供したいと思い、現在「NVDA Cheat Sheet」の制作をすすめています。

当日、会場でお披露目する予定で、それまで内容は公開しません。

基本的には視力のある人が NVDA の機能や操作体系をざっと把握できるような A4 サイズ1枚の資料です。
昨年のオープンソースカンファレンス広島で名刺サイズのカードを作って、ほんの少しだけ配布したのですが、どうやら A4 サイズなら、いろいろな説明が盛り込めそうです。

内容は、過去にまとめた 開発者のためのNVDA (2015) および 開発者のための NVDA (2017) の資料と、NVDA 日本語版ガイドブック で説明したことを踏まえて選びました。

目標は時代工房さんの JIS X 8341-3:2016, WCAG 2.0 早見表 なのですが、今回のイベントで配布しながら実演や説明に使ってみて、改良点を見つけて、すこしずつバージョンアップしていきたいと考えています。

セッションでは、18年前に「視覚障害者のためのキーボード練習ソフト」の開発を通じて知り合った 園 順一さんとひさしぶりにご一緒させていただきます。
お話をするのが今から楽しみです。どうぞよろしくお願いします。

NVDA 行く年くる年

この記事は Web Accessibility Advent Calender 2017 の10日目の記事です。

オープンソースの Windows 用スクリーンリーダー NVDA に関するこの1年の活動を振り返るポエムで乗り切ろうと思ったのですが、ゆうべ広島フロントエンド勉強会で喋ったら気が変わってしまいました。

11月11日 JAC Vol.1 の講演「アクセシビリティ検証ツールとしてのNVDA入門」での失敗をフォローします。

決済サイト試作の入力バリデーション画面例

アクセシブルな決済システムの試作

アクセシビリティで難しそう、めんどくさそう、スクリーンリーダーで実際に検証しないと不安なポイントはやっぱりセキュリティだろう。

試してみたくなったのがクレジット決済 API を使うサイトの開発だった。

11月11日に見せようとした試作サイトは、以下のような方針で開発した。

決済サービスの選択

  • テストモード、つまり、ダミーのカード情報を送信して実際にWebアプリのテストができること
  • カード情報を Web アプリが保存しなくてよい、できれば受け取る必要すらないこと(情報漏洩のリスクを回避)
  • Python から簡単に使えること(個人的な好みです)

実際に使った決済サービスの仕様

  • JavaScript ライブラリがあり、ブラウザが決済APIサーバと直接通信を行い、カードと紐付いたトークン情報だけが返ってくる
  • そのトークン情報を Web アプリが受け取って、実際の課金を行うことが(Python ライブラリから)できる

つまり、ブラウザの中で「ユーザーにカード情報を入力させて、決済サーバに送って、カードのトークンを受け取る」という処理を、画面遷移せずに完結させたい、ということになる。

これは、セキュリティのために「動的なコンテンツを作らざるを得ない」ということで、アクセシビリティの題材としてはよさそうだと思った。

11月11日の前に作っていたもの

コードの抜粋はこちら

環境は Google App Engine for Python + Flask

(1) ログインする前の画面

ログインしてください、という表示になり、ログインのリンクがある。
実際にログインで使っているのは Google アカウント認証。

これが使いたかったので GAE を選んだ。本人確認されたユーザーのメールアドレスを取得。Google のログイン画面はスクリーンリーダーでちゃんと使えるはず。

ログインする前とログインしたあとの画面は Jinja2 (Python のテンプレートエンジン)で分岐している。

(2) ログインした直後の画面

ログインすると最初の画面が入力フォームになっている。

上から順に、以下のものがある。

  • テキスト「カード情報を入力して「確認」を押してください」
  • 4個の入力フィールド:カード番号、有効期限(年)、有効期限(月)、CVC番号
  • 「確認」ボタン(有効状態)
  • 「購入」ボタン(無効状態)
  • 「キャンセル」ボタン(無効状態)

ただし、デモなので、入力フィールドには決済サービスのテスト用カード番号があらかじめ入れてある。

確認ボタンを押すと URL が遷移するのではなく、JavaScript の処理が実行されて、コンテンツが動的に変化する。

(3) カード情報が正しくない場合の「確認」結果

「カード番号が正しくありません」などが表示され、入力フィールドの修正と「確認」ボタンしか有効にならない。

何が正しくないかというメッセージはテキスト( aria-live=”assertive” 属性の div )として表示され、スクリーンリーダーで読み上げられる。

つまり動的コンテンツだがバリデーション結果をアクセシブルに提示できる。

(4) カード情報が受理された場合の「確認」結果

「カード情報が確認できました。「購入する」を押すと***円のお支払いが完了します。」

のように表示され、「購入」ボタンと「キャンセル」ボタンが有効になり、入力フィールドと「確認」ボタンが無効になる。

購入ボタンを押すとカードのトークンが submit されて URL が遷移する。Python アプリで決済 API をたたいて結果を取得、次のページに「購入完了」みたいな表示を出す。

「キャンセル」を押すと、入力フィールドの値がふたたび変更可能になる。

本番でやったドジなこと

確認ボタンを押して入力フィールドが無効になった状態で、「じゃあ今度は値をわざと変更して正しくない入力内容にしてみましょう」とか言いながら、無効になっている入力フィールドのテキストを書き換えようとしてうまくいかず、デモを中断してしまった。

そのあとで考えたこと

aria-live=”assertive” とか、フォーカスの制御とか、invalid とか、いろいろ盛り込んだのだが。。

そもそも「自分がうっかり間違えるような UI 設計がよくない」と考え直した。

最近作り直したもの

(1) ログインする前の画面

ログインしてください、という表示になり、ログインのリンクがある。

(2) ログインした直後の画面

ログインすると最初の画面が入力フォームになっている。

上から順に、以下のものがある。

  • テキストA「カード情報を入力して「確認」を押してください」
  • 4個の入力フィールド:カード番号、有効期限(年)、有効期限(月)、CVC番号
  • 「確認」ボタン(有効状態)

(3) カード情報が正しくない場合の「確認」結果

テキストA「カード番号が正しくありません」などが表示され、入力フィールドの修正と「確認」ボタンが使える状態のまま

(4) カード情報が受理された場合の「確認」結果

  • テキストB「カード情報が確認できました。「購入する」を押すと***円のお支払いが完了します。」
  • 「購入」ボタン
  • 「キャンセル」ボタン

その他のものは非表示になる。

「キャンセル」を押すと、テキストAと入力フィールドだけの表示に戻る。

振り返って思うこと

なんのことはない、これはひとつの HTML ファイルにダイアログAとダイアログBがあって、交互に表示・非表示になる、一種のモーダルである。

たぶん最初の「非表示・無効」だらけの画面を作っていたときには、「この操作を実際に行うと、次にどういう段階に進むのか」みたいな見通しを伝えたかった。
だから、あとから有効になるけどいま無効なものをたくさん作ってしまった。
その流れで「さっきは有効だったけどいまは無効になった」ものも、たくさん残してしまった。

だが、けっきょくのところ「ひとつひとつの段階で迷わせない」「無関係なものを見せない」ということのほうが大事だったと思われる。

カード情報が確認できたときに、もういちどカード番号を表示する、みたいなことは、本当はやった方がいいのか、やっぱり不要なのか。。

こまかいこと

今回のデモでは invalid の判定には2種類ある。

(1) HTML の required と pattern を使う処理
(2) 決済APIサーバーのエラーメッセージに基づく処理

後者の場合には、JavaScript のコールバックで

<div id="input_guide" class="alert alert-primary" role="status" aria-live="assertive"></div>
<div class="col-12">
  <label for="card_number">カード番号</label>
  <input type="text" id="card_number" class="form-control" aria-describedby="card_number_help" value="5555555555554444" required aria-required="true" pattern="[0-9]{13,16}" />
  <small id="card_number_help" class="form-text text-muted">半角数字 <span aria-hidden="true">省略できません</span></small>
</div>
if (response.error.code === 'invalid_number') {
  $('#card_number').attr('aria-invalid', true).focus();
  $('#input_guide').text('カード番号が正しくありません').addClass('alert-warning').removeClass('alert-success');
}

みたいなことをする(jQuery を使っている)。

JavaScript 2行目の最後の .focus() がなければライブリージョンの「カード番号が正しくありません」が読み上げられる。

一方で、この .focus() をつけてしまうと card_number 要素の読み上げしか聞くことができない。

NVDA 2018.1jp-beta-171206x + Firefox ESR 52.5.2 でスピーチビューアを使って確認すると:

ブラウズモード
カード番号が正しくありません 
カード番号  エディット  正しくない入力内容  必須  オートコンプリート  半角数字 省略できません
55555555555544 選択
フォーカスモード

つまり、ライブリージョンの読み上げの直後にフォーカス位置の読み上げイベントが発生して、直前の読み上げを止めてしまうのだ。

(「フォーカスモードとブラウズモードの切り替えを音で報告」はチェックなし。後述の追記2を参照のこと)

実は最初のバージョンはこれが気に入らなくて(だって live region のデモにならないから)フォーカスを移動しなかったのだが、考えてみるとライブリージョンを読むことよりもフォーカスをエラー箇所に移動してあげることのほうがずっと親切で、ユニバーサルな気がする。

さらに、フォーカスを読み上げるときに「正しくない入力内容」もちゃんと読み上げているのだ。

本当にスクリーンリーダーで検証するべき「アクセシビリティのディティール」というのはこういうことなんだろうな、と思っている。

ここから追記

追記:NVDA の live region の実装がおかしいのではないか、と言われそうな気もするので(そうかも知れないけど)ちゃんと制御できるケースも紹介しておく。

$('#card_number').attr('aria-invalid', true);
$('#get_token_btn').focus();
$('#input_guide').text('カード番号が正しくありません').addClass('alert-warning').removeClass('alert-success');

こんなふうにボタンにフォーカスを移動して、直後に live region の内容を更新すれば、「カード番号が正しくありません」をちゃんと聞くことができる。
(このテクニックは最初のバージョンで使っていた)

追記2:さらに調べたら、NVDA の「フォーカスの変化を追跡する自動フォーカスモード」をチェックなしにすると、エディットにフォーカスが移動したときに live region を最後まで読み上げて、それからフォーカスを読み上げるようになった。

ボタンとエディットで挙動が違うのだから、もしやと思ったら、やっぱりそういうことだったか。。

おことわり

勘のいい人は shop.nishimotz.net というサイトを見つけたかも知れませんが、このサイトは「本当に何かを販売して決済を行うサイト」に作り替える予定の場所です。

明日は tosssaurus さんの「社内じんわりアクセシビリティ普及活動報告」だそうです。お楽しみに。

JAC vol.1 & NVDAワールド 2017 & NVDA開発者会

もんどさんのブログを読んで、私も書くことにしました。

Japan Accessibility Conference

Japan Accessibility Conference vol.1
2017年11月11日(土曜)
会場:ヤフー株式会社 紀尾井タワー セミナールーム

にて「アクセシビリティ検証ツールとしてのNVDA入門」という講演をします。

2015年に「Web製作者のためのNVDA入門」というイベントの講師をしたのですが、今回はハンズオンでもなく、時間も限られているので、いちおう下記のような予定です。

視覚に障害があるユーザーがPCを使う上で不可欠なものがスクリーンリーダーです。
無料で利用できる Windows 用スクリーンリーダー NVDA をご紹介します。

  • スクリーンリーダーとはどのようなものなのか、
  • スクリーンリーダーで Web ブラウザをどう操作するのか、
  • アクセシビリティ検証ツールとして NVDA をどう使えばよいか

をご説明します。

この講演は5月ごろから打診をいただいていたので、このイベントにあわせて NVDA 2017.3jp に導入した新機能もありますし、お馴染みの FocusHighlight アドオンも(RubyKaigi 2017で実演に使いましたが)新しいバージョンをリリースしたいと思っています。

なので、11月11日に話を聞いてくださった人には、これまでよりもスムーズに「アクセシビリティ検証ツールとしてのNVDA」をお試しいただけると思います。

(おわかりのとおり WordPress を使っているので、私のセッションの裏番組も気になります。。)

NVDAワールド2017

一方で、前述のイベントがこの日程になることがわかっていたため、11月1日から3日まで開催されるサイトワールドの翌日ではなく前日に開催することにした

NVDAワールド2017
2017年10月31日(火曜)
会場:日本マイクロソフト
(東京都港区港南2-16-3 品川グランドセントラルタワー)

は参加申し込みの締め切り(10月23日)まであと2週間になりました。

こちらの私のセッションは「ビジネスツールとしてのNVDA」というテーマにしました。
前述のカンファレンスの発表と内容が重複しない、はずです。。

概要:2013年に NV Access が視覚障害者コミュニティの支援で PowerPoint 対応を実現して以来、NVDA は視覚に障害がある人の就労手段としてグローバルに支持されています。

本セッションではビジネスツールとしての NVDA の機能を紹介しつつ、最近の NV Access や開発コミュニティ、 NVDA 日本語チームの活動を報告します。

NVDA の Microsoft Office 対応や Windows 10 対応の最新情報を、この機会にまとめてお伝えしたいと思います。

NVDA開発者会

最後に、NVDAワールド2017開催日の午前に行う予定の「NVDA 開発者会」について補足します。

いま NVDA 本家の開発コミュニティではいろいろな新しい動きがあって、NVDA の開発に興味がある人に伝えるべきことはとても増えています。

2017.4 で Windows XP/Vista 対応を打ち切ることが決まり、新しい動きは本格化しました。

開発に使われている Visual Studio のバージョンを 2015 から 2017 に上げること、各種の依存パッケージを更新すること、そして NVDA を Python 2.7 から Python 3 に移行させる作業が、これから2019年ごろまでに行われます。

今回の開発者会では、まず Windows 環境で Python 2.7 と Python 3.6 を共存させる方法をご紹介します。
これから1年か2年くらいの間 NVDA に関わるために必要な知識だと思うからです。

それから、おそらく当日までに本家の移行が完了しているはずなので、Visual Studio 2017 Community を使う前提で NVDA (本家版および日本語版)のソースコードからの実行方法やビルド方法を紹介する予定です。

日本語に対応していないことが課題になっている eSpeak や libLouis など音声合成エンジンや点訳エンジンなどの現状、ソースコードからの実行やテストの方法、開発コミュニティの動向などの情報も、時間の制約はありますがお伝えしたいと思います。

点字ディスプレイなどふだん私が検証できない機材は、その場に持参いただければ、不具合の調査などができると思います。

開発者会には NVDAワールド 2017 の connpass 申し込みで「開発者枠」でお申し込みください。

#RubyKaigi 2017 終了

What visually impaired programmers are thinking about Ruby?

発表も終了し、オーガナイザーとしての3日間も終わりました。

参加したことさえなかった RubyKaigi のオーガナイザーを引き受けることになり、どうなることかと思いましたが、スピーカーもさせていただいて、素晴らしいチームの一員として働かせていただいたことに、満足そして感謝しています。

ウェブアクセシビリティの観点から Ruby のドキュメントツールについて指摘したので、具体的に何をどう直したらいいか、もうすこし考えてみます。それまでは私の中で RubyKaigi は終わらないような気がしています。

なぜ @24motz aka @nishimotz は #RubyKaigi で講演をするのか

いよいよ開催が迫ってきた RubyKaigi 2017 (開催地:広島)で、オーガナイザーのひとりとして活動している「にしもつ」 @24motz aka @nishimotz です。

What visually impaired programmers are thinking about Ruby? というトークもさせていただく予定です。

2015年から Python の活動を広島でやっていて、やっと Python がブレイクしてきた今年、そっちの活動を保留して RubyKaigi のお世話をすることになったのですが、私のもともとのモチベーションが NVDA 日本語版の紹介、そして「アクセシビリティ」だったので、じゃあ RubyKaigi で自分がアクセシビリティ関連の貢献をすればよいのでは、と気持ちを切り替えたのが、上記のトーク提案の背景です。

今年 PyCon JP 2017 ではスクリーンリーダー関係の発表や活動をしていません(聴講者として参加して楽しんできました)が、かわりに東京では NVDA ワールド 2017 を10月31日(火曜)に開催します。

私がアクセシビリティの委員会活動やスクリーンリーダーのコミュニティでつながっている人の何人かは、音声合成による画面読み上げや、点字ディスプレイというデバイスを PC に接続して、プログラミングやインフラ管理などをやっておられます。

その人たちに Ruby について質問してみたことをヒントに、私が Ruby のドキュメントやエディタなど主にツールのアクセシビリティを調べています。その結果を NVDAでの実演を交えて紹介します。

今年の RubyKaigi サイトにはアクセシビリティのポリシーのページがあります。
会場に託児所を用意していること、発表は録画して後日公開されること、など、いままで RubyKaigi が取り組んでいたことも「アクセシビリティ」の一環として位置づけられています。

現在まで視覚や聴覚の障害をお持ちの方から「参加するので配慮をしてほしい」というご要望はありませんでしたが、もし早い段階でなにかご要望があれば、可能なことの手配をお手伝いしようと思って構えていたのは事実です。

(すべての日本語セッションに英語同時通訳をつけるというレベルの予算と体制のイベントなので、やれば手話通訳も要約筆記もできるはず。今年なくても来年でも)

いや、いまからだと遅いといっているわけではありません。いまからできることをベストエフォートで提案するので、障害をお持ちのかたの RubyKaigi 参加を今からでも(少なくともオーガナイザーの一人である私は)歓迎します。

チケットの購入はこちらです。

本当に障害の当事者の人に参加してもらうためには「その人たちが聞きたいと思うコンテンツ」を用意することも必要だと、私は過去の学会活動やイベント運営の経験から感じています。

RubyKaigi は「Ruby プログラミングが気になる人のためのイベント」というよりも「Ruby 言語の開発者たちが集まって Ruby の未来を真剣に語り合う場」なので(たぶん)、敷居が高いのだと思いますが、そんな中で私が「Ruby の開発者にも障害の当事者にも興味がありそうな話」ということで提案したのが「視覚障害者は Ruby についてどう思ってるのか」という発表です。

なんせ私が当事者の声を代弁するだけなので、ぜひ「本当はこう思ってる」という人にフロアにいてほしい、あるいは後からでも議論のきっかけになってほしいと思っています。

実は最初は「プログラミング言語の文法の違いは、アクセシビリティに影響がある」「Ruby の文法はアクセシビリティ的に優れている」みたいな仮説を検証できるといいなあ、と思ったのですが、ちょっと考えたり調べたりして、やはり無謀な計画だと思いなおしました。

そういう話は10年くらい前に、視覚障害の学生にプログラミングを教えている先生からちらっと聞いていました。

いわく、メソッドチェーンでどんどん1行で書いていけるので、コーディングを教えやすいし、音声読み上げにも向いている、と。。

この仮説の検証はいまは無謀だと思えてきたわけですが、たとえば Python と比べて Ruby の文法が「視覚障害者に書きやすいか?」と自問自答すると、はっきり言えるのは「インデント」でしょうか。単純な問題ではなさそうです。

けっきょくは、何をやりたいのか、求められるアウトプットはどういう状態なのか、仕事なのか趣味なのか、どういう環境やツールなのか、本人のスキルはどうなのか、といった話になります。

最後に広島のグルメ情報でも書ければいいんですが、あいにく私はグルメでないし人生の半分くらい広島県外にいたので、「るびま」のリンク集にお任せします。

かわりに、視覚障害者のプログラミングについて雑談します。

彼ら(主に男性)は、スクリプト言語やドメイン固有言語(DSL)が好きな人たちだと私は見ています。

たとえば Hot Soup Processor (HSP)日本語プログラミング言語「プロデル」はスクリーンリーダー利用者にとても愛されています。

また世界的に有名なスクリーンリーダー JAWS には JAWS スクリプトという言語があって、アクセシビリティに問題のある Windows アプリの不具合を補うためにエンドユーザーがスクリプトを書いて共有しあっています。(同じようなことを汎用プログラミング言語 Python でやれるようにしたというのが NVDA の特長の一つです)

ニュースサイトをスクレイピングして簡単に音声読み上げできるようにする「視覚障害者専用アプリ」もいくつかあり、人気を博していますが、スクレイピングのためのマクロや正規表現をメーリングリストで共有する、という文化も根強く続いています。

そんな人たちが Ruby に向き合うとどうなるのか。。できるだけわかりやすく話せるように頑張りたいと思います。お楽しみに。

余談:もうすこし予習したい人には、ラックの外谷さんの記事「スクリーンリーダーの音声を聞いたことがありますか?」をご紹介しておきます。

こどもプログラミング教室(PCNひろしま)参加について

「PCNひろしま」という団体の立ち上げに参加し、こどもたちに「プログラミング専用パソコン IchigoJam」を体験していただくイベントを開催することになりました。

第1回は私が講師を担当する予定です。開催日は7月30日(日曜)午後1時開始、3時30分終了の予定です。

会場は「イノベーション・ハブ・ひろしま Camps」です。

募集開始が7月になっていますが、詳しくは connpass のイベントページをご参照ください。

経緯

ここでは、私の視点での IchigoJam の魅力、そしてこの活動に関わることになった経緯を書いておきたいと思います。

2015年の年末に「こどものプログラミング教室」について相談を受けたことがあり、ちょうど気になっていた教材候補の一つとして2016年1月に IchigoJam を購入してみました。
いわゆるビジュアルプログラミングの教材もいくつか試してみたのですが、私は IchigoJam がシンプルで扱いやすい、魅力的な教材だと感じました。

また、ある程度ハードウェアを拡張でき、しかもその扱いも簡単であることから、教育用としてだけでなく、大人のちょっとした電子回路の実験にも使えるように思いました。

とは言いつつ、最初はいろいろ不満もありました。なぜ PS/2 キーボードなのか、なぜ(アナログの)ビデオ出力なのか、などなど。。

私の作業場所にはアナログビデオ入力のディスプレイがなかったため、アナログから HDMI に変換するスキャンコンバーターを購入してみたのですが、微妙に信号の規格がずれているらしく、実用的なクオリティの画像を HDMI ディスプレイに出力できませんでした。
中国からの輸入品で購入した超小型の液晶モニタがちょうどよくて、作業環境はやっと落ち着きました。

けっきょく去年「こどものプログラミング教室」に私は関わることはなく、しばらく IchigoJam の応用例を参考にして MicroPython + ESP8266 の実験をやったりもしていました。

今年の2月の「オープンセミナー広島」に jig.jp の福野さん(IchigoJam の開発者)がいらっしゃって、それにあわせて開催された IchigoJam の体験会に立ち会わせてもらいました。

そして、この教材に対する見方がまた変わりました。
一言でいえば「こどもの教材としてよく考えて作られている」ということでした。
ご自身がちゃんとこどもたちと向き合ってプログラミングを教えながら、その経験を踏まえて仕様を改良して、現在に至っているということが理解できました。

その後、福野さんを広島に招いたり体験会を企画してくださった石崎さんを代表として「プログラミング・クラブ・ネットワーク (PCN)」の広島版を立ち上げることになり、やっといま、第1回イベントの告知にこぎ着けたところです。

広島に戻って以来、大学生にプログラミングを教えることからもしばらく遠ざかっていたのですが、私自身がこども時代に「黒い画面とキーボードだけのコンピューター」にワクワクしていた気持ちを思い出して、私が理解した IchigoJam の魅力を多くの人にお伝えしたいと思っています。

おまけ

西本はことし RubyKaigi 2017 オーガナイザーとして、全国・世界の Ruby 技術者が9月18日からの3日間広島に集まるお祭りの裏方をやっております。
現在は Super Early Bird 料金でのチケットを販売中です。
またスポンサー企業も募集しております。
そろそろカンファレンスの詳細がいろいろ発表されると思います。ご期待ください。

去年まで活動していた Python のイベントはどうなったのかというと、今年は「すごい広島 with Python」として、4月から毎月1回、定期的な勉強会として盛り上げていこうとしています。

スクリーンリーダー NVDA に関しては、VIC への参加、そして今年は秋以降に NVDA 日本語チームとして東京圏での活動を計画中です。

あわせて今後ともよろしくお願いします。