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おいしい広島 Advent Calendar 2012 (12月3日)

おいしい広島 Advent Calendar 2012の3日目を担当させていただきます。@24motz の中の人です、こんにちは。

広島に関するアツイ思いをつなげていこうぜ。
※内容は技術系とか関係なくご自由にどうぞ 例 俺の一番オススメなお好み焼きとか 俺が考えた最強の広島弁ネタとか

ということで、2011年から活動している「NVDAユーザ会広島」について書きます。

自己紹介

広島出身。2011年3月まで東京で大学教員をしていました。広島に転居して、NVDA日本語版(詳しくは後述)の開発を続けながら、技術コンサルティングや受託開発をしていたのですが、2012年10月から特定非営利活動法人 支援技術開発機構の主任研究員として働いてます。明日からまた海外出張なので、今日書かせていただくことにしました。

NVDAとは

NVDA (NonVisual Desktop Access) はオープンソース(無料)のスクリーンリーダーです。スクリーンリーダーというのは、視覚に障害があるかたが、キーボード入力、音声合成、点字ディスプレイでコンピューターを操作するための支援技術です。
NVDA はオーストラリアの開発者2人が中心になって2006年から開発しており、近年、世界でユーザーが増加しています。
2012年5月のWebAIMの調査では NVDA を”commonly used”と答えた割合が43パーセントに達しています。

日本でも2008年頃から「NVDA日本語化プロジェクト」が進められ、NVDAの日本語化が行われました。
しかし、NVDAが標準で使用しているeSpeak音声エンジンが日本語に対応していない、日本語のカナ漢字変換を読み上げできない、日本語の点字出力に対応できない、といった課題がありました。
これらの開発を行うために私(最初は東京在住)や @hoozukiyama さん(もともと広島県三次市在住)がNVDA日本語化プロジェクトに参加しました。

NVDAユーザ会広島

私が2011年春に地元の広島に帰ったので、NVDA日本語版の開発者2人が広島に揃いました。
NVDAユーザ会広島は、名前はユーザ会ですが、最初は NVDA 本家版のリリースごとに日本語版の開発を行う、開発者の団体でした。
しかし、いずれはユーザーが集まる場にしたい、と思ったので、あえて「ユーザ会」という名前をつけました。
ちなみに現在、日本で「NVDAユーザ会」と名乗っている団体は、私の知る限り、広島にしかありません。

NVDAユーザ会広島は地元のイベント、オープンソースカンファレンス Hiroshima に参加しています。
NVDAのイメージキャラクター「でめきん」のぬいぐるみは、オープンソースカンファレンスのために作りました。

また nvda.jp というドメインもNVDAユーザ会広島の活動として取得しました。

OSC広島2011のブースの様子

OSC広島2012のブースの様子

勉強会

2012年に入ってからは、定期的に例会(勉強会)を行ってきました。
あいかわらず少人数ですが、アクセシビリティやソフトウェア開発に興味をお持ちのかたが集まったので、Python による自然言語処理(NLTK)の勉強会もしました。本を読みながらソースを打ち込んで実行する、というスタイルで行いました。時間の制約もあり、テキストの全部はカバーできませんでしたが、NVDA の開発に使われているプログラミング言語 Python の実践的な勉強になりました。
音声合成や点訳エンジンのために機械学習を使おうと考えて、このテーマを選んだのですが、結果的に NVDA とはあまり関係ない勉強会になってしまいました。

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NVDA日本語チーム

2012年5月に「NVDA日本語化プロジェクト」は「NVDA日本語チーム」になり、私が代表になりました。
2012年6月にNVDA日本語版 2012.2.1jp をリリースしました。このバージョンは2012年12月1日までに4420回ダウンロードされました。
それまでのバージョンでは(ポータブル版とインストーラー版をあわせても)2000回程度であったので、この半年で利用者が大幅に増加したと考えられます。
たぶん今日中に新しいバージョンの安定版をリリースしますので、よろしければ nvda.jp のサイトをご確認ください。

現在、NVDAは40以上の言語で使われていますが、ローカライズ版を独自にリリースしているのは日本、香港、韓国などわずかな国しかありません。
本家版には新しいバージョンがリリースされたら自動的に更新される機能がありますが、この機能は日本語版では無効にしています。
ローカライズ版に独自に追加してきた機能が、本家版に統合されていくことが理想です。
NVDA 2012.2 から導入された「アドオン」という機能を使うと、本家版に日本語音声エンジンを追加することが容易になります。
すでに NVDA 日本語チームは NVDA 本家版用の日本語音声アドオンをリリースしています。
このアドオンというしくみが、「世界で一つのNVDA」を実現するために、これから重要になってきます。

NVDA日本語チームという名前は、本家版NVDAの日本語対応と、NVDA日本語版の開発を、同じメンバーで進めていく、という体制を示すために選ばれました。

NVDA日本語版の開発に全国からユーザーや開発者が参加してくださるようになったため、NVDA日本語チームは毎週の定例Skype会議で議論しながら進めるようになりました。
NVDA本家版 2012.3 の「東アジア言語の文字入力」には、日本語チームが行ってきた実装が一部利用されました。
2012年9月にはオーストラリアから NVDA の主要な開発者のお一人である Michael Curran さんを東京に招いてワークショップを開催しました。
現在は、NVDA本家版 2012.3 でもいちおう日本語の文字入力の読み上げができるようになっています。また、日本語に起因するバグを本家で修正してもらえるように活動しており、例えば「ユーザー名が日本語の特定の文字を含んでいるときにNVDAがインストールできない」問題が解決されました。

現在のNVDA日本語チームの最大の課題は、日本語点訳エンジンの改良です。一度は機械学習ベースでゼロから作ろうと考えたのですが、現在は liblouis という多言語対応のオープンソース点訳エンジンの調査研究も行なっています。
日本語だけ独自の技術を開発しても、それがユニバーサルな実装にならなくては結果的に長続きしない、ということが起こるからです。
音声エンジンについても Open JTalk に基づく独自実装から、多言語音声合成エンジンに発展させていくことが、日本語対応をグローバルに展開する道筋だと思い始めています。海外で話をしてみると HMM 音声合成はあちこちで研究開発されているので、ハードルはそれほど高くないように感じます。

NVDAユーザ会広島のこれから

NVDAユーザ会広島という活動を立ち上げた自分が、今はこの広島地域コミュニティをうまく活用できていないのです。ごめんなさい。
ただ、何か協力できないか、といろいろなかたから声を掛けていただいていることを、本当にありがたく思います。
関係者が集まったときには NVDA だけではなく iPhone, iPad や Android のスクリーンリーダー、電子書籍の音声読みあげなどについても情報交換しています。
広島でアクセシビリティとソフトウェア開発に興味がある人が集まって face-to-face で活動できる場として、発展させていければよいと思っています。

次の人

明日は @wizard_paso さんです。

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WEB TOUCH MEETINGで喋りました

3月24日に「第45回 WEB TOUCH MEETING」で、広島の皆様に、NVDAとアクセシビリティについてお話をする機会を(やっと)いただきました。

雰囲気はATND(参加者リスト)とかTogetterまとめとかeielh さんのブログとかご覧下さい。
終了後もいろいろな方に声をかけていただき、Facebook にリクエストをいただくなど、感謝しています。

前日NVDA日本語版開発スナップショット jpdev120323 の作業をしていて、24日は昼間 NVDA ユーザ会広島の勉強会(Python&自然言語処理)でした。3月24日のツイート一覧。長い一日でした。コーヒーばかり飲んでいたので、帰宅しても眠れず。。

準備したスライドをほとんど使わないで、アドリブで喋ってしまいました。
録音も録画もないのですが、思い出せる範囲で書きとめておきます。

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NVDA日本語版ダウンロード i.nvda.jp の開始

オープンソースの Windows 用スクリーンリーダー NVDA とその日本語版の普及を通じて視覚障害者の福祉向上を目指す非営利活動グループ NVDAユーザ会広島nvda.jp ドメインを取得し、2011年12月11日より i.nvda.jp というアドレスで NVDA日本語版 をダウンロードできるサービスを開始しました。これにより、日本のスクリーンリーダーの利用者は、より簡単にNVDAを入手できるようになります。

オープンソースの高機能Windows用スクリーンリーダーNVDA日本語化プロジェクト でめきんのイラスト

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こぎん刺しと宮島

11月3日にNHK Eテレ「すてきにハンドメイド」で「津軽こぎん刺しのバッグ」が取り上げられた。
和の伝統を楽しむ、という3回シリーズの第1弾として登場し、テレビテキスト11月号の表紙を飾った。

番組の中で製作されたバッグは、こぎん刺しを知っている人から見ればオーソドックスな色とデザインだったが、「東北の手仕事」として歴史や背景も掘り下げて紹介された。藍染めの麻布に白い糸で刺された菱形の幾何学模様が、綿花の栽培が困難で華美を禁じられた江戸時代の苦肉の選択であったことが説明された。そして、厳しい寒さと貧しさの中で、美しい模様を生み出した津軽の女性の心の豊かさを感じて欲しい、と番組は語っていた。
100年以上前のボロボロの労働着にほどこされた幾何学模様の「刺し子」はテキストにも大きな写真で紹介されている。

東北新幹線の新青森駅開業といったイベントに合わせて、東京エリアでも青森の文化が紹介されるようになったが、それでも全国レベルでのこぎん刺しの知名度は低い。
柳宗悦が民藝運動として評価したことによって価値が見直されたこぎん刺しは、今年春の日本民藝館(目黒区駒場)の「開館75周年記念名品展」で1点だけ展示されたとのことだ。

一方で、青森で生まれ育った人にとって、こぎん刺しは「あまりにも身近にありすぎた民芸品」だ。学校の授業やクラブで作ったことがある、という人も多い。「根気のいる作業」であることも知られているので「こぎん刺しをやっている」といえば一目置かれるのだという。

しかし、およそ若者が興味を持たない色や柄だったこぎん刺しを、変えようとする動きも、目新しいものではない。
色鮮やかな刺繍糸を使うカラフルな作品という試みは、世界から注目された。

はじめてのこぎん刺し
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ここ数年、トートバッグや洋裁で活躍しているグループによって「こぎん刺し」は再発見され始めている。伝統的なこぎん刺しの技法を生かしつつ、バランス、センス、配色など、現代の生活に合わせた作風が登場した。そして「大人になってこぎん刺しの模様の良さを再認識した」という人も増えた。

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こぎん刺しは決して難しいものではない。手芸に興味を持つ人が増えたこともあり、手芸用品メーカーや通信販売会社のキットで「こぎん刺し」は身近になっている。規則正しく1列ずつ針を動かしていくと、次第に大きな模様が出来上がっていく、そんな面白さがある。
だが、続けていくのは難しい。キットを買ってはみたものの完成できない人も多いようだ。

続けていくうちに「型」が身につく。その「型」が「オリジナル」を生み出す土台になるのだという。

2010年10月に kikurako.com での活動を始めたこぎん刺し作家 kikurako は「作りたいものを作る。いま作品展に向けて作っているのは、ふだん使えそうなバッグや小物雑貨。年齢や性別は意識していない。欲しい、使いたいと思う人の手に渡れば嬉しい」と言いつつ、制作作業の最後の追い込みを続けている。


kikurako 作品展
は今月24日から27日までの4日間。入場は無料。作品は展示販売される。

場所は世界遺産の厳島(宮島)。この夏に宮島水族館がリニューアルされ、来年のNHK大河ドラマ「平清盛」の舞台として注目されている。だが、修学旅行や観光旅行で何度も宮島を訪れた方でも、賑やかな土産物屋の並ぶ表参道商店街から一本奥に入った「町家通り」に足を運んだことのない方は多いのではなかろうか?
「ぎゃらりぃ宮郷」があり、先日は「第一回宮島ブックトレイル」が開催されるなど、古民家を活用した個性的な町おこしに積極的なエリアだ。

会場の北之町 厳妹屋さんは、明治後期頃に建てられ、数年前までは華道と茶道の先生が生活しておられたという宮島の伝統的な町家。

会期中は紅葉の一番の見頃と予想される。ぜひ足をお運びいただきたい。

期間:2011年11月24日(木)〜27日(日)
11:30〜17:00(初日12:00より)

会場:宮島 北之町 厳妹屋(いつもや)
〒739-0588 広島県廿日市市宮島町580
宮島桟橋から徒歩2分(町家通り)
(広島駅から宮島口駅までJRで約30分、宮島口から宮島までフェリーで約5分)

kikurako こぎん刺し 作品展 2011

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オノ・ヨーコ展と比治山・段原

広島市現代美術館で「第8回ヒロシマ賞受賞記念 オノ・ヨーコ展 希望の路 YOKO ONO 2011」を見た。

ヒロシマ賞の説明はこちら

広島市現代美術館は広島の中心から外れた比治山という小さな山の上にある。
私の母方の祖父は公務員で、疎開させた公文書と共にこの比治山で被爆したと聞いた。私はその祖父のことは伝聞でしか知らないのだが、一度だけ、母の代理で、8月5日に開催される市役所の戦没者慰霊式に出席したことがある。

私の幼い頃住んだ家は、この比治山の影になって原爆の被害を逃れた段原という町にあった。細い迷路のような路地は、子供用の自転車で走りまわる格好の遊び場だった。広島駅と宇品港を結ぶ国鉄の貨物列車が走っていて、深夜や早朝、かすかに汽車の音が聞こえたことを覚えている。

私が広島を離れていた20年の間に、この比治山から見下ろすことができた古い町並みは、区画整理されて、大きな道路が東西南北を貫いた。早々と完成した新しい街には高層マンションが立ち並んだ。そして広島カープの試合がある夜には、猿猴川を挟んですぐ近くにあるマツダスタジアムの照明が、段原の空を照らしている。
いまも残された工区の再開発が進んでいる。先日通りかかったら、新築一戸建ての売家の看板、そして売地の看板が並んでいた。カッパ祭りとかレンコン祭りとか、聞いたことのないイベントの看板があった。

「公立では全国初の現代美術を専門に扱う美術館」の歩みは、かつて骨董品の街と言われた場所の「歴史の喪失」と、二人三脚であったに違いない。それを目撃できなかったことが、今となっては残念に思える。

オノ・ヨーコ展は美術展としては珍しく、一定の条件で撮影が許可され、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで使用許諾されている(関連記事)。なので私も下記に写真を掲載します。