全盲の写真家と信楽の仙人

先日、NHK教育テレビ「きらっといきる」という番組で全盲の写真家・ 大平啓朗さんの旅の様子が取り上げられました。
そして、私が京都で一緒に活動をしていた(最近また連絡を取り合っている)為公史さんが、大平さんに一夜の宿を提供した様子が描かれていました。

たまたま放映の数日前に為さんから電話がかかって教えられたので、初めて「きらっといきる」という番組を見ました。
見ながらつぶやいたことは後述しますが、最近「大家族に密着するドキュメント番組の当事者の告白」が話題になっているので、気になって為さんに電話をしました。
私も去年の秋にあの山の中の茶室で一夜を過ごしたばかりなので、直感的に「為さんの雰囲気がよく出ている」と思ったのですが。。
「仙人のような隠遁生活」をしている為さんは、やはり放送を見ていなかったのですが、取材と編集にあたった方から、何度も内容や表現の確認の電話を受けたのだそうです。障害を持つ人を取り上げる番組だったからでしょうか、非常に丁寧に制作されていたようです。
私にとって為さんは「信楽の仙人」になる前からのお付き合いです。京都でのアートイベントの運営に、一緒にボランティアとして関わりました。
為さんは裏千家の青年部で活躍したのち、独立(隠遁)して茶人から陶芸まで、大工から農業まで、幅広く活動中。出会った頃私が聞いた話には「指のない子供のためのお点前を、その子と一緒に考えて作った」といった独創的な活動が盛りだくさんです。
私も茶道の手ほどきをほんの少し受けたのですが、私は具体的なお点前の手順は、何一つまともに覚えることができませんでした。
ですが「同じことを何度でも繰り返すから、無理して覚えなくてもいい」と言ってくれました。
(だから今「同じことを繰り返し説明する苦痛に耐えるのが教育に携わる人間の義務だ」と私は考えることにしています。。)
そのかわり私の「なぜこうするの?なぜこうなってるの?」という質問には、丁寧に答えていただきました。
勉強するならこの一冊、と言われた「茶道の歴史」を買って読んだりしました。
「一座建立(いちざこんりゅう)」は茶道に限らず、どんな場面にも通じる精神だと思って、私はいま心の中でお茶を点てています。。

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4 人物に即した茶道史

私は為さんの「自分の原則を貫く生き方」から、いろいろな影響を受けていると思います。なかなか言葉では語れませんが。。
そのもどかしさが、何か映像でかたちにできないか、と考えたきっかけでした。
とはいえ撮りためた映像を編集する時間もなく時間ばかりが過ぎていく私の生活。
「大平さんの関係者」として、今回NHK教育テレビで為さんの様子が取り上げられたのは、何かとても「為さんに合っている」と私は感じました。
為さんは大平さんとの出会いが嬉しかったそうです。
為さん曰く「『障害を自分の人生のプラスにする人』と出会えることを期待していた。その通りの人だった。彼は自称エスパーだと行っていた。視覚の曖昧さに囚われて見えなくなる真実もある。いわば『視覚による障害』だ。彼は視覚に囚われないで真実を見ている。自分自身を使って、障害が新しい世界へのチャレンジであることを伝え続けている」。。
そして為さんと大平さんの写真についても語りました。独特なアングルの持ち主です。見ていないから斬新なアングルになる、というのとは違います。
音や光やにおいといった感覚でシャッターを切る、というのです。ちゃんと人の顔や木漏れ日が狙ったように映っています。
それも確かにすごいことなのですが、もっと違うレベルの「超能力」の持ち主です。
写真家の仕事はシャッターを切ることではなく、心を開くことなのです。。
そんな大平さんにたまたまお茶を振る舞った為さんは、今年4月15日~21日に大阪で陶芸家としての個展を予定しています。
まだ「土を作っている」段階だそうですが、きっと会期が近づくと追い込みに入るのでしょう。。
私もこのブログやProject Slowlyのページでお知らせしたいと思っています。
以下、Twitterのつぶやき記録です:

  • NHK教育テレビ「きらっといきる」全盲の写真家・ 大平啓朗さん、を見てます posted at 20:03:34
  • ETV「きらっといきる」全盲の大平氏が旅を続けながら、普通の人に頼んで自宅に泊めてもらい、一緒に過ごした人の写真を撮る。メタノールを誤飲して失明。 posted at 20:07:51
  • 大平さん「太陽の出ている温度を感じてシャッターを切る。泊めてくれた人に寄せ書きを書いてもらう」これから信楽の山で仙人のような暮らしをしている人登場。。 posted at 20:12:37
  • ETV「きらっといきる」為さん登場。あの茶室、あの茶碗だ。。 posted at 20:15:47
  • 見えなくても、声のする方向にシャッターを切るって、意外に的確なんだなあ。。写真を撮る人にとって大事なのは「会話」か。。 posted at 20:20:26
  • ETV「きらっといきる」耳を澄まして目の前の光景をイメージ。親子の笑い声を聞きながらシャッターを押す。親子は真ん中に映ってなくてもかまわない。 posted at 20:27:37
  • NHK教育テレビ「きらっといきる」全盲の写真家・ 大平啓朗さん、終了。こういう感じで毎回やってる番組なんですね。 posted at 20:32:43
  • 音の方向だけじゃなくて太陽の光が皮膚に当たる感覚なども利用。見えなくても世界を感じてシャッターを押すことができる。。 QT @ikkn: @nishimotz 音源定位してカメラを向けるような感じだろうか。 posted at 21:26:04

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